第33話 俺はここにおりますが…なにか?
「あなたが…イリスちゃんの彼氏君ね。」
次の日、信之はイリスとともに事務所の社長と対談した。
対談している場所は事務所で応接間や個室ではなく、従業員が普通に働いている部屋の一角だ。
そこにはソファーがあり、3人はソファーに座って対談をしている。
近くにはテレビがありニュースが流れている。
(ちゃんとテレビが近くにあって、ニュースが流れてるな。イリス、ナイスだ!)
(うん!信くんの言った通りテレビが近い場所にして、ニュースも流したよ!)
信之には、考えがあるようだ。内容についてはイリスにも話してはいない。
「初めまして、平信之と言います。」
「ええ、初めまして。イケメン君ね。その容姿でうちのイリスちゃんを落としたのかしら。」
イケメンスキルが発動しているようだが、どうやらあまり歓迎はされていないらしい。社長は信之をピエロだと考えているだろうし、何より事務所の稼ぎ頭の足枷となる人間が来たのだから当然といえば当然である。
「しゃ、社長!」
いきなりバチバチの雰囲気になりそうに感じたイリスは焦る。
「歓迎はされませんよね。事務所のトップアイドルが彼氏を作ってその男と対談なんて。」
「わかってるじゃない。」
社長は足を組みながら肯定する。
「でも、俺とイリスは本気です。どんなことがあっても別れることはありません。」
「…!」
威圧感のある信之の目に狼狽える社長。
「はぁ、それも…わかってるわよ。イリスちゃんにも言ったけど、こちらはマスコミに対して恋愛については本人に任せている。という回答をするわ。」
「ありがとうございます。ご迷惑おかけして申し訳ありません。」
頭を下げて謝罪する信之。
「いつかこうなることはあり得るとは思っていたし、仕方ないわよ。イリスちゃんが幸せならそれでいいわ。」
社長は優しい目でイリスを見る。
イリスにはその目がくすぐったそうだ。
優しい目をしていた社長だったが、信之の方を見ると目を鋭くする。
「そういえばイリスちゃんは、ゴブリンに二度襲われていて、そこをピエロに助けられているわ。」
来たか。と思う信之とイリス。
「はい、イリスから聞いています。」
「それだけでなく、蓮見悠助に襲われた時もピエロが突然現れてイリスちゃんを助けたわ。」
「はい、そちらも聞いています。」
「そう…。イリスちゃんはね、今まで男性と仲が良くなるようなことは無かったのよ。」
社長は核心に迫ろうとする。
「ピエロが現れるようになってから、あなたが現れて付き合い始めた。これは…」
その時、テレビで速報が流れる。
「速報が入りました。監視を行っているダンジョン付近にて、ピエロの仮面を付け、大鎌を所持する人物が現れました。その人物は現在とてつもない速さでダンジョン付近にいるモンスターを倒しているとのことです。先日、ゴブリンに襲われた神谷イリスさんを助け出した人物と全く同じ様相で同じ大鎌を所持しているということで、その人物で間違いはないとのことです。」
「「え!?」」
速報のニュースに、声を出して驚く社長。
そして社長よりも驚くイリス。
「今話に出ていたピエロですね。」
信之は素知らぬふりをして発言する。
「え、えぇ。」
流石に動揺を隠せない社長。
「あ、すみません。話の途中でしたね。」
無表情で話を戻そうとする信之。内心は非常に悪い顔をしている。
「え、えっと。何の話だったかしら…忘れてしまったわ。」
「ピエロの…」
「と、兎も角!イリスちゃんと付き合うのであれば彼女を不幸にしないこと!いいわね!」
「もちろんです。」
「そう、ならいいわ。話は終わりよ。」
そう言って、ニュースにくぎ付けとなる社長であった。
事務所からの帰り道。
(作戦成功したな。)
信之は念のために声には出さず、念話でイリスに話しかける。
(なにしたの!?私も社長と一緒にびっくりしちゃった!)
(魔纏士のスキルを使ったんだ。)
魔纏士のスキルの中に纏幻というスキルがある。
ーーーーーーー
(名)
纏幻
(概要)
無属性の魔力で自身のコピーを作成する。
魔力を込めた分ステータスは上昇するが、自身のステータスの1/10が上限であり、それを上回ることは不可。
また、纏幻で作成した自身のコピーを動かすことは可能だが、複雑に動かす場合、並列意思が必須となる。
ーーーーーーー
並列意思は、魔法士の☆6で取得できるスキルであり、信之は既に取得している。
このスキルがあることにより、本人もコピーも意志を持って動かすことができるのだ。
信之はイリスにそれを説明した。
(凄い!これなら絶対に信くんがピエロさんってことバレなそうだね!)
(あぁ、バレないと思う。なので俺に犯罪歴は無しだ。)
(無罪ばんざーい!ばんざーい!)
念話だけで良いのにテンションが上がって体でもバンザイを行うイリス。
すれ違った人は、今まで無言だったのにいきなりバンザイをし始めたイリスに驚く(マスク等しているのでイリスとはバレてはいない。)
自分の行動で驚かせてしまったと気付いたイリスは顔を赤く染め、俯く。
「イリス…。」
「はぅ…。何も言わないで…。」
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