第105話 神を倒す方法

「…効いていない…。」


「なんで…。もう一回!」


テオスに全くダメージが通っていないことに驚く蒼汰と奏。

奏はすぐに演奏を開始しようとするが…。


「何度やっても同じだよ、さっきも言った通り格が足りないよ。それと、まだ僕は話足りなくてね。少し黙っていてくれるかな?」


テオスは左腕を前に出した。

蒼汰と奏に何かをすると思ったイリスとソフィアはマジックウォールとブラッディシールドを展開し、二人を守る。


信之とモルはテオスに攻撃を行っていた。

しかし、どちらの攻撃もテオスの肌で止まってしまっており、全くダメージが通らなかった。


「おや、みんなも参戦するのかい?」


「弟と妹が何かされそうになったんだ。当然防ぐだろう。」


どう戦うべきかのアイディアが全く浮かんでこない信之は、冷や汗を浮かべながらテオスに返答する。


「あぁ、蒼汰君と奏君がやられてしまうと思ったのかい?そんなことはしないよ。話を聞いてほしかったから少し動けないようにしようと思っただけさ。これ以上何もしないというのなら僕は何もしないが、どうする?」


「…蒼汰、奏。」


テオスは蒼汰と奏の両親が殺された元凶の一人といっても過言ではない。

本当であれば蒼汰と奏の思うようにさせたいが、現状全く歯が立たず勝てる見込みがない。


信之はどうするべきか瞬刻悩んだが、二人を止めることにした。

このまま戦って下手にテオスを刺激した場合、二人に危険が及ぶ可能性があると考えたためだ。


「…わかり、ました…。」


「信にぃ…。」


両親の仇を取れなかったことは不本意ではあったが、攻撃が全く通らないことに対して打開策が見出せていなかったことと、信之が自分たちを心配して止めていることが伝わってきたため、蒼汰と奏は渋々ながら攻撃を止める。


「うんうん。聞き分けが良い子は好感が持てるよ。だから僕から君たちにとても為になるtipsを授けようじゃないか。」


とても上機嫌そうなトーンでテオスは信之たちに話す。


「tips?ヒントや助言か?」


「そうだよ。内容は…僕のような神に至る存在をどうやって倒すか、さ。」


「…は?」


信之はテオスの言った内容が理解できず、呆けた顔となる。

自分を倒そうとしている者に対して、倒し方を教えようとしているのだから信之がそうなってしまうのも無理もない。


「あはは!良い顔してるね!せっかくイケメンになったのにその顔は笑えるよ。」


「お前正気か?それを教えて何のメリットがある?」


「…さぁ?何のメリットがあるのだろうね…?」


質問を質問で返してくるテオスにわずかに苛立ちを覚える信之。

どうやらテオスはこの件について教える気はないようだ。


「ふふ、僕のメリット云々はどうでもいいじゃないか。君たちはヒントを聞いてその通りにすれば僕を倒せるのだから。」


「(…もしかして神様はドMなのかしら?)」


「ソフィア君、その考えはやめてほしいなぁ!?」


「あ、心が読めるのよね、ごめんなさいね。」


ソフィアの心の言葉にすかさずツッコミを入れるテオス。

ソフィアの心が読めない一同は首を傾げる。


「さて、僕を倒す方法だが、実は先ほどから言っているんだよ。」


「…格が足りない、ですか?」


「蒼汰君、流石だね。その通り…格だ。格というのは君たちが見れるステータスで言うと種族だ。すなわち進化が足りていないという事だね。」


「なら進化していけば、いずれはテオスを倒せるということか?」


「そうなるね。僕や他の神格を帯びているものを倒すことが可能となるよ。」


「…他の神格を帯びているもの…お前のようなものが他にもいるのか?」


「まぁとにかく、進化が必要となるわけさ。さて、進化をする方法だけど、僕がもともと管理している世界、ヴェルスヒルントムンドに進化をする方法があるよ。」


信之はテオスの言葉が気になったが、テオスは信之の疑問には答えずに話を続けた。


「えっと、ヴェル…ムンド?」


「ヴェルスヒルントムンド!なんかこのやり取りつい最近した覚えがあるなぁ!?」


イリスにツッコミを入れるテオスはデジャヴを感じた。


「テオスが管理している世界はどのようにして行けばいい?それにどのような世界なんだ?」


「これを使ってね。」


テオスが指を鳴らすと、信之たちの右手の小指が光る。

光がやむと指輪が装着されていた。

因みにモルは右前足に装着されている。


「この時空の指輪を使えば行けるよ。さらにいつでも地球にも戻れる。あ、ちなみにそれ、外せないからね!ぷぷ…。」


「外せない?」


信之は指輪を外そうとすると、何か聞いたことのある音楽が頭の中に鳴る。


ーーーーーーー

時空の指輪は呪われていて外せない!

ーーーーーーー


システム音まで鳴るようだ。


信之が外そうとする度に、セーブデータが消えたような音楽と、呪われていて外せないシステム音が鳴る。


「おい!!外そうとする度にこの音楽とシステム音やめろ!ゲーマーにとってはトラウマな音楽だぞ!」


「そうなのかい?うーん傑作だと思ったのになぁ。じゃあ、音楽と呪われていて外せないという言葉が出るのはやめておくよ。あ、外せないのは変わらないからね。」


不満そうに音楽とシステム音を解除するテオス。

トラウマになる音楽から解放された信之は、時空の指輪の概要を確認するために鑑定を使用する。


ーーーーーーー

(名)

時空の指輪


(概要)

超絶偉大なる崇高なる半端じゃない神であるルスティヒテオスが管理するヴェルスヒルントムンドに行くことが可能となる指輪


指輪をつけていないものには見るも感知することも出来ない。


あと外せないからね。てへぺろ

ーーーーーーー


「…やっぱり…お前が概要を作ってたのかぁああああっ!」


「ビグザムッ!!」


信之に殴られたテオスは断末魔を叫びながら飛んで行った。

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