第2話 島津家久(忠恒)の憂鬱
とつぜん、からっと雨が上がった。
朗らかな南国の空は、澄明な
人間界の浅ましい
やわらかな木漏れ日を投げかける高い梢では、
お涼が偵察に赴いた本丸には、異様な気が漲っていた。
行き交うだれも目を伏せ息をひそめ、白刃を踏むような緊張に立ち竦んでいる。
人間ばかりか、平素はやんちゃな犬や猫どもまで、むぐっと口をすぼめていた。
地獄に引き摺り込まれそうな陰鬱をよそに、独り意気軒昂なのは城主の家久で、手長猿のような
*
わしの顔さえ見れば、ああだのこうだのと、説教を垂れずにはいられなかった。
仕置きにおいても私生活においても、ことごとに兄者と比べて責め立てられた。
そんなに亡き兄者が慕わしいなら、はやばやと未亡人になった娘を引き連れて、さっさと彼岸に渡っちまえばよかったのに、おめおめと生き延びやがって……。
いったいぜんたい、おのれを何様だと思っていやがる!
尊大ぶった目の底に棲まわせていた
ああ、思い返すだに、この
しかし、もう二度と金輪際、醜い老残の辛辣を目の当たりにせずに済むのだ!
わが耳朶の底の底までを汚辱する、あのおぞましい
ああ、あらゆる人間に等しく訪れる死とは、なんと荘厳なる事実であろうか。
信心には疎遠なわしだが、ここはひとつ八百万の神に感謝せねばなるまい……。
*
おのれの
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