幼女は科学の力で世界を復活させる(旧題:復活の女王

アリス&テレス

幼女は生きる

プロローグ

★ 西暦20○○年4月 日本某所 宝樹若葉


 昨晩の花散らしで産まれた桜色の花筵の道。私は大学へと続く桜の坂道を、朝日を浴びながらヒールのある靴でゆっくり踏みしめて登っていく。見上げると、前を歩く自分より大きなランドセル背負った小学生達が、ワイワイお喋りしながら歩いてる。


「ふふ、一年生かな? 可愛いなあ」


 柔らかい笑みが零れる。


 彼女は気が付いて無かったが、すれ違った人が皆、彼女の微笑む姿に見惚れて足を止める。そして何だか幸せな気分になって笑顔になり、我に返ってまた足を動かしだす。


 宝樹若葉29歳、座右の銘は『苦しい時は笑顔を、悲しい時には歌を』そして『人は考える葦である』ぶどう農家だったお爺ちゃんに教えてもらった言葉。


 私は、10年間勤めてた地元財閥系化学工場を退社し、今年はれて大学生になった。昔、図書室に毎日籠って読んだ中世からルネッサンス、近代へとダイナミックに世界が変化する時代、芸術、政治、文化、街並み、残された本から沸き立つ生々しい人々の熱気。

 私は本気で学びたかった。


 子供の頃から勉強は得意で、一人で育ててくれたお母さんの喜ぶ顔が見たくていっぱい勉強してたら、気が付くと県下一番の公立進学校で常に一番の成績を取るようになっていた。

 でも、大学は諦めた……


 あれから10年、小さな頃から、諦めの気持ちを一つ一つ丁寧に小石に変えて、そっと飲み込んできたのに、ついウッカリ安定生活を捨てて大学生になってしまいました。


 いやー、偶然テレビで見たイタリア・トスカーナの空が青過ぎたのがいけない。紺碧の空ってやつだ。



 目の前を歩いてた小学生に追いついた時だった。


「あっ」


 一年生ぐらいの女の子が桜の根に躓いて車道に飛び出した。

 運の悪い事に、坂道の上からトラックが下りてくる。


 危ないっ!


 咄嗟に子供をかばうため私も飛び出す。


 大丈夫、私、小学生の頃から強くなりたくて通ってた空手道場を高校生で辞めた後でも、毎日空手の形だけは続けていたおかげで、体幹バランスには自信がある。


 左足を車道に踏み出し、女の子のランドセルを掴んで女の子ごと歩道に投げる。そして左足を踏ん張り体制立て直しつつ、反動で歩道へ。


 よし、ここまではイメージ通り。うなれ私の左足よ、秘められしパワーを解放するのだ!


 パキッ!


 あれ?

 ヒールが折れ…間に合わ………

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