お父さんの昔 ★ 新教派成立史

★帝暦2450年代 新教派の成立史


・帝暦2454年

 セト教教皇庁、教徒信仰税の制定。


 フェズの民が宗教弾圧を受けるきっかけは、セト教教皇庁が帝暦2454年に教徒信仰税をヘウメス平原諸国で制定、多額の寄付を強制的に集たため大きな反発が起きた。


 この多額の喜捨にも一応の理由はある。セト教教皇庁の直轄国は、海に面しており、この海が問題だった。

 海賊被害である。

 他にも海岸線を持つセト教国家群は、常に南方諸島からやってくる海賊によって、神出鬼没の襲撃を受け、時に内陸地まで攻め込まれる体たらくであった。一部の国では、海賊への税を払うことで一時的に難を逃れて、交易をする国家まで現れ、教皇庁の影響を薄れさせる事になった。

 教皇庁の影響低下を憂慮した教皇グレゴリオス25世は、海賊討伐軍を編成しようと強引に寄付を決めてしまい、苛烈な取り立てを行った。


 海賊討伐は、沿岸諸国の良民のセト教徒にとっても大変ありがたい話しだったのだが、時勢が悪かった。

 海賊被害や、貴族間の権力争いの戦乱によって、庶民の生活は逼迫の度合いを増していたのに対して、教会はどんどん豪華になり、教皇庁の枢機卿達が贅沢三昧を行っている事が火に油を注ぐ。

 教会への反発は、農村部や都市部の貧困層で多くの支持を伸ばし、教会襲撃や地方貴族を巻き込んで大きな宗教改革へと向かおうとしていた。



・帝暦2456年

 セト教最高教皇庁 グレゴリオス25世教皇、宗教改革派への異端宣言を公布する。


 改革派の勢いを恐れた教会の最高教皇庁 グレゴリオス25世教皇により、異端宣言が出され、生贄として亜人や獣人への異端審問(弾圧)が始まる。

 この異端審問(弾圧)は当初人族を避けていたため、亜人獣人と一緒になって教会批判をしていた人族の大多数は、積極的に亜人や獣人を生贄に差し出す事になり、多くの難民が生まれた。

 この難民の群れは、※ガレリオン王国と、比較的宗教色のゆるい神聖ピタゴラ帝国へと流れ込むようになる。

 大量の難民の流入に頭を痛めた神聖ピタゴラ帝国は、自国北西部のフェズへの開拓を難民に行わせた。


 ※ガレリオン王国は、以前より最高教皇庁の所属を巡ってグレゴリオス25世と争い、教皇庁直轄地を独立させてガレリオンセト教国を立て、激しく最高教皇庁グレゴリオス25世と対立していた経緯がある。



・帝暦2457年

 同年3月、パースカール王国とガレリオン王国が開戦

 同年11月、ガレリオン王国敗北、ガレリオン王国は領土の半分をパースカール王国へ割譲と、ガレリオンセト教国の最高教皇庁管理を受諾。


 春の芽吹きの時期、かねてよりの緊張関係だった、ヘウメス平原を二分する大国のパースカール王国と、ガレリオン王国との間で戦争が起きる。

 この時、教皇庁のあるセト教皇国と、難民問題で頭を痛めていた神聖ピタゴラ帝国の参戦で、パースカール王国が大勝。ガレリオン王国は国土の約半分を失い、ガレリオン王国が後援していたガレリオンセト教国は、最高教皇庁管理になる。



・帝暦2459年

 新教派宣言


 フェズに落ち延びた獣人や亜人に混ざって、少数の人族がフェズにやって来ていた。中には、教育を受けた知識階級の神父も混ざっていて、フェズの開拓に大いに役立つ事となる。彼らは、宗派理念に殉じてフェズ建国に手を貸し、国家樹立に尽力した。


 セト教の教典には、セト教徒は全て平等であると書かれている。

 彼らの教義解釈により、同じ知的能力を持つ人型種族の獣人や亜人や、女子供が差別されるのは間違っているとされる。


 全ての種族は助け合わなければならない、贅沢を辞め全ての財産を寄付せよ、教義に反する者を排除せよと唱え、崇高な理念の元、教義を先鋭化させていった。


 新しい教典解釈の派閥、新教派と呼ばれるようになる。



・帝暦2471年1月

 同年1月1日、獣・亜人連合国フェズ建国を宣言


 亜人・獣人の長老会、騎士団、新教派教会代表による賢人会議が設立され、神聖ピタゴラ帝国より独立、獣・亜人連合国フェズとして建国宣言が行われる。


 以後、神聖ピタゴラ帝国との間で小規模の小競り合いが続くが、それが逆にフェズ国内の結束と新教派の信仰心を強める結果になった。


 ……新教派は、自らの教義を隣接する神聖ピタゴラ帝国、他の国にもジワジワとその信仰を広げていた。


・帝暦2490年初冬

 前年から、神聖ピタゴラ帝国カール15世(当時18歳)によって大規模な戦争準備が行われている。


 ダイスの街、武器職人店ジョフベッグスの剣店では、ジョフとベッグスの2人が大量の注文を前に忙しく働いていた。



・帝暦2490年春

 最高教皇庁ユリウス12世教皇より、異端の国 獣・亜人連合国フェズへの聖戦を宣言。


 最高教皇庁ユリウス12世教皇より、異端の国 獣・亜人連合国フェズへの聖戦が宣言され、神聖ピタゴラ帝国カール15世を盟主として、全セト教国軍の招集が速やかに行われる。



その一か月後、獣・亜人連合国フェズへの侵攻が始まった。

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