尻叩きの刑
★帝歴2501年10月26日夕刻 ヒューパ ティア
「ただいまー」
私たちは、夕方に城へと帰ってきた。
城へ帰る途中、冒険者
雪オオカミの毛皮は、冒険者
報酬のお金を持って、織物業
お城の門から敷地に入ると、私の可愛い家来達が夕飯の準備に追われている。私達遠征組が持って帰ってきたお肉を早く渡して、皆で食べてもらおう。
「みんなーお肉獲ってきたよー、今夜はご馳走だよ、ウフフフ。おーいゲネス、皆のためにお肉を調理してあげてね」
ん? 皆何だか浮かない顔をしている、どうしたんだろう? お肉はご馳走でしょう。
「姫様お帰りなさーい」
ベック少年が出てくる。
今日一日私の代わりに仕事をしてくれてたから、彼にもご褒美でお肉を食べてもらおう。
「ベック、今日は私の代わりに頑張ってくれたね、ご褒美にお肉食べて行っていいよ」
「うわーお肉だー、ありがとうございます姫様、あ、姫様の事を男爵様が探してましたよ」
……
黙って魔獣討伐に出かけたからねえ……
「お父さん怒ってた?」
「……カンカンです、僕もこっぴどく怒られました」
スマン……な。
「じゃあ、ゲネス後やっといてね、ちょと行ってきます」
私はいそいそとその場から離れて、お城の中に入っていくと、玄関ホールにお父さんが仁王立ち。
やだ、お父さんカッコいい……じゃない、うううう。
「た、ただいま戻りました」
「ティア、ちょっとここ来なさい」
う、お父さん無表情ですよ、憤怒の表情ですらないですよねこれ。
「……はい」
「どこに行っていたのか正直に話しなさい」
「はい、ハカミ村の避難キャンプまで行ってました」
「そこで何をやっていたのだ」
「私の家来を食べさせるための財源作りです」
「お父さんが、前に一度ティアに言ったよな、危ないことはするなと。で、ティアはハカミの村でどんな財源作りをしていたのか、お父さんに言ってみなさい」
「……魔獣討伐っヒャッ!」
私が魔獣って言った瞬間、お父さんの手が私の首根っこに伸びてきて釣り上げられる。
お父さんは、そのまま後ろに置いてた椅子に座って、私をうつ伏せにヒザの上に乗せた。
「お父さんの言いつけが守れない娘は……」
ズルッ!「 ヒャッ!」 プリンッ!
ヒザの上で、私のズボンとかぼちゃパンツを下までズリ下ろしたお父さんの右手が上に振り上げられ、次の瞬間思いっきり振り下ろされた。
パーン
「あいたっー」
パンッパンッパンッ
「あれ程危ないことはするなと言っただろう、言いつけを守れない娘は、こうだっ」
「はわわわわわあ、痛いっ痛いっ、だって女の子達を食べさせるためのお金が欲しかったんだもん、ワタシがーワタシが稼がないとあの娘達がーアイダダダダダ」
パンッパンッパンッ
「まだ口答えするかっ! あの娘達はもうホラの教会に預けなさい、お前一人じゃ絶対に無理だ」
「やだー、あたたたた、絶対やだ、あの娘達はワタシが絶対に守る、やだダダアイダダーー」
ピタッ
私の可愛いお尻を激しく打っていた手が突然止まる。
「突然居なくなって、お父さんやお母さん、それに他の皆がどれだけ心配したと思っているんだ、このアンポンタン」
「……ごめんなさい」
それは……本当ごめんなさい。
「危ないことは禁止、魔獣討伐は今後禁止。そしてゲネス達をティアと一緒にさせていたらまた危ない事を始めるから、しばらくは領内の復興に使う。明日から他の場所に行ってもらうからな」
「そんなっ、アレは私の家来です」
「自分で食べさせることもできないのに、家来など養える訳がなかろうが。何を言っている、しばらくはヒューパの城預かりだ」
……ぐぬぬっ、私の大事な手駒が使えなくなる……いや、現状を考えれば、生活のための初期経費を城が賄ってもらえると考えよう、最初の内は収入よりも出て行く方がずっと多いし。
私の中で回転する高速計算機が、お父さんの話しを強引に飲み込ませた。
それよりこれを使って、上手く交渉に繋げなくちゃ。
「ではお父さん、あの者達は私の大事な家来です、そんな彼らを私から取り上げるのなら、何か代わりの財源になる物をいただけるのでしょうか?」
「お前には白ワインの権利を与えたではないか。とにかく危険な冒険業で稼ぐの禁止。もしあの娘達を食べさせられなっくなったと言うなら、ホラの街の教会に連れて行くからな」
!
チャンス到来 !?
白ワインの話へと上手く誘導できた。
「えええーお父さん、そんなあー、白ワインだけで頑張れって言うのおお」
ちょっとワザとらしいが、いけるかな?
「そうだ、ティア、お前には白ワインがある、それで頑張りなさい」
「分かりました、娘として白ワイン製造に全力を注ぎます」
よしっ、言質は取れた、白ワインの製造の大義名分を手に入れたぞ、白ワイン製造のための資材を使える。
「分かったようだな、なら部屋に帰りなさい」
「はいっ」
私は、かぼちゃパンツとズボンを上に持ち上げて、お父さんの元からタッタッタと走って出て行く。
お尻がジンジンするがしょうがないね。
★帝歴2501年10月26日 夕刻 ヒューパ ヒューパ男爵アルベルト
テイアが玄関ホールから出て行った後、妻マリアが顔を出し、私に向かって怖い顔で話しかけてくる。
「さっきの騒ぎ、外まで聞こえていましたわよ」
「しょうがない、あの娘は強情すぎる、いくら叩いても素直にハイと言わない」
「あの娘に力ずくで分からせようとしても無駄よ、貴方の娘なんですもの」
「はは……」
「でも本当に良かったのかしら、あの娘に白ワインの製造許可出して。何だか全力でやるとか言ってたじゃないの、また暴走するわよ」
「いいんだ、どうやらゲネス達は優秀な兵士になりそうだが、あれらを取り除けば、ティアのやれる事は、ほぼ無くなる。それに今年の白ワイン用のブドウは腐って全滅している、ティアが持っているカガクとやらの知識でも魔法でもどうにもならない。これでやっとティアから危険の種を取り除ける」
「本当かしらね、あの娘しぶといわよ」
予想の斜め上を突っ走る娘の手足をもいだのだ、何を心配する必要があろうか……いや、本当に大丈夫か?
★帝歴2501年10月26日夕刻 ヒューパ ティア
「フフン♪フンフン♪ふふふふーん♪」
窓から抜け出し、家来たちの宿泊所へと急ぐ。
ちょうどご飯を皆で食べていた所だったので、ゲネス達に明日の準備を今夜中にやるよう命じた。だって明日からしばらく城預かりで私の手から離れるんだもん、使える今使っておかないと。
その後、皆美味しいはずのご飯を非常に微妙な顔で食べていたので、なぜかを聞いてみた。
「皆どうしたの? 変な顔して、私なら大丈夫だよ、お父さんにチョッピリ怒られただけだしコレからしっかり稼ぐからまかせてっ」
皆、お互いに顔を見合わせて「「いえ、大丈夫ですはい」」とか言っている。
私は、そろそろ部屋に戻らないと、またお尻をペンペンされる。
少々名残惜しいし、引っかかる事もあるが、明日の早朝から全員で仕事をしてもらうので早起きしておくよう言って、その場から立ち去った。
今夜のご飯の席でさっきお父さんから勝ち取った言質を使って、明日一日私の自由を手に入れるぞ。
明日も忙しくなるぞー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます