ヤマタ作戦
★帝歴2501年10月4日 早朝 後方陣地 ティア
朝です、ティアです、皆さんお早うございます。
どうやら私の待っていた朝がやってまいりました。興奮したわたくしは超早起きをしております。
朝ですよ朝……まだ暗いけど。
ベック少年が近くにいたら意味も無いのに引っ叩いてるかもしれないぐらい、ハイテンション。
なぜなら、容体が思わしくないと言われていたお父さんの状態は、回復をしてきていて、自分が指揮を執ると騒ぎ出しているぐらい元気になってきているのを、昨日の夜聞かされたのと……
私、多分勝っちゃたから。
だからハイテンション。フハハハ小僧、近くにいないで助かったな。
天幕の中に置かれた簡易ベッドから飛び起きて、トットトコって外の天幕にいるムンドーじいじのところまで走っていきます。
天幕を開いてまだ寝ているじいじを叩き起こします。
ガバッ!
「じいじ、ちょっ、ちょっと起きて、じいじ」
「ぬっ、姫様敵襲ですか」
さすがじいじ、素早く飛び起きて枕元に置いていた剣を握っている。
でも、敵襲じゃないから安心して欲しい。
「違う違う、じいじ、ちょっとお願いあるのよ、聞いて、あのね、多分ね、私達勝ったと思うの。敵にいっぱいお酒飲ませたからそれを確かめるために斥候出す……いや、私が直接行く、そしてちょっと皆でホラの軍を襲いに行ってもいいかな?」
……
「えっ?」
「えっ?」
「 って、いや、ホラの軍勢がいるカタの村を襲いに行こうって言ってるの、じいじ聞いてる? まだ起きてないの?」
「姫様、もう少し分かるように説明してください。姫様は、時々そうやって説明をすっ飛ばす癖がおありになります、治してください」
……怒られた、うん、確かに理系の悪い癖だね、相手も分かってるつもりで話す癖、文系だった元の世界の上司にも怒られた事ある。
それにしても、600歳の賢者なんだから察してくれたらいいじゃない。
「あのね、実は、私の
ムンドーじいじが呆れた顔をして私を見る。
「姫様よろしいですかな、ワインの酒精程度では、翌日に戦闘ができなくなる程二日酔いにはなりにくいです。それに二日酔いなら時間が経てば自然と治ります。敵が時間稼ぎをして体制を立て治したら、私達が逆襲されて倒されてしまいます」
「うーん、だーかーらー、その酒精を
「姫様、だからと言ってかならず思った通り、敵がそのワインを大量に飲んで悪酔いしてるいるとは限りません」
……んもう、じいじの石頭。
「だから、敵のところに行って確認するんでしょ。これはね、私が元いた世界で、勇者がヤマタのオロチと言う首が八本ある竜種を倒した作戦なの、お酒をいっぱい飲ませて酔っ払わせてね、ヒヒイロカネって金属の剣で首を全部はね落として倒した策略なの、昔カードゲームって書物で読んだから間違いないわ。これがヤマタ作戦の裏テーマね」
「……ふう、その首が8本あるヤマタのオロチとやらは、ヒュドラのような竜種ですな。姫様を危険な場所に連れて行く訳にはまいりません。私一人でまいります」
「うんもう、それじゃダメなの、ダメなの……えっと、だったらこうしましょ、馬は何頭使えるの? すぐ逃げ出せる馬で襲って一撃離脱すれば安心でしょ。威力偵察なんだから、もし私の策略が失敗していて、相手を怒らせてもさっさと逃げてきちゃえばいいんだから。馬を使いましょ馬を」
「姫様……」
じいじの呆れ顔から困り顔になってきている。
「じゃあさ、こうしましょ、兵の中から、弓の特別上手い兵士を選んで、馬の後ろに乗せて連れて行けば、じっと、止まった馬の上からでなら射撃できるんじゃないの? 騎馬射撃で一撃離脱戦法。これなら安全。ね、そうしましょ」
私の粘りに粘った交渉でじいじは、渋々そうに馬を10頭と騎手。この騎手はヒューパの街に住む冒険者達や、馬車の持ち主を起こして連れてくれる事になった。
今回の襲撃には、最大戦力の騎士のトートさんが威力偵察メンバーに入れない。
重量級の騎士装備をしたトートさんを乗せられる馬がいないから。
実践を重ねて強力なプラーナ防御壁をも出せる騎士用馬は、前回の戦闘でいなくなった。今回は、徒歩での戦闘を指揮してもらわないといけない。
馬を選ぶと次は、弓兵の中から9人を選んで馬に乗せる。
……あれ? 1人足らないね。
「じいじ、弓兵が1人足らないよ?」
「姫様、私は、騎乗したまま弓を撃てます。なので大丈夫です」
「なら私がじいじの前に乗ります、これは、指揮官代理としての命令です」
「却下」
「やだやだ、乗せてってばー、じいじのバカー」
……
ゴネてみるものだ、乗せて行ってくれる事になった。
大騒ぎしていたら他の兵士達も起き出してきたので、作戦を説明していつでも合図があれば、後方陣地から出てカタの村を襲えるようにする。
もちろん、私の策略が失敗していた場合は、ここで迎え撃たなければならない。
私達斥候兼、威力偵察部隊からの報告次第だ。
「それじゃ、いってきまーす」
私達は、皆に手を降って出ていった。
★帝歴2501年10月4日朝 カタ ティア
小一時間ほどかけ、太陽が登り明るくなってきた頃、カタの村が見える丘の上までたどり着く。私達はこの場所から一度、カタの村の様子を見ることにした。
豆粒のような兵士が街の周りにいるが、例の貧弱な装備をした兵士達だ。
何か騒いでいる。
離れた場所からも分かるぐらい様子がおかしい。
敵の兵士たちは、村の周囲を警戒しているのではなく、100人以上の数が一箇所に集まって騒いでいるようだ。
……あら? この兵士達は元気そうだな。この盾と短槍を持っただけの兵士にはワインは当たらなかったのかな? かなり多めに持ってきていたはずだから、ほぼ全員に行き渡っていたはずなのに?
ちょっと自分の思っていた予想よりも多い人数が元気にしている。
ただし、その兵士達以外の、主力になっていたはずの傭兵たちが、1人も目に入る範囲にはいない。
これはやっぱり違和感がある、他の敵の状況はどうなっているのだろうか? 目に見えてる部分だけでは分からない、やはり一度攻撃を加えて反応を見てみないと。
「じいじ、このまま一度あの集団に仕掛けてみましょう、彼ら盾と短槍だけの兵士にはボウガンは無かったはず、飛び道具がないので、私達でも余裕でしょ?」
「分かりました姫様、では、一度私の馬から降りて、他の馬に乗ってこの場でお待ち下さい。じいじが敵の反応を確認に行きます。ここから見ていれば十分ですよね? 危なくなったら急いで後方陣地まで届けさせます」
あら、私降ろされちゃった。
そのままじいじ達は、丘を降りてカタの村へと馬を進めていく。
私は、丘の上で四つん這いになって、ホラの軍勢の動きの機微を見逃さないよう目を皿のようにして観察した。
じいじ達は、敵の兵士達に弓の射程距離まで近づくと、その周囲を何度か回って、敵の反応を確かめているようだ。
敵の集団は、じいじが近づくと魚の群れのように、近づかれた距離分だけ引っ込んだり出っ張ったりと、集団が揺れる。
……指揮官が居ない。
集団を突いても、人の流れがほとんど生まれない、一部精力的に動く集団はあったけど、他は全く動かない。
指揮官がいれば、人の意志はその中心へと向かう、顔の向きだったり動きの伝達だったり、その場所に人間の意志が往復して指揮系統の糸が産まれるはずなのに、それが見えない。
じいじは、さらに行動を一歩進め、接近を試みてから何度か射手に矢を撃たせて反応を見ようとする。だが、敵の兵士達は反撃をするでもなく、怯えたように盾を構えるだけだった。
これだけ村の外で大騒ぎをしているのだから、中から騎士や傭兵が出てきてもおかしくはないのに、それも無い。
……これは、上手く行った。やったかも。
「勝った……って、あれ?」
私が離れた丘の上から喜んでいたら、村の中から騎士が1人と、派手な神父服の男が馬に乗って出てきて、見えている兵士の集団の中心に立ち、じいじ達を睨みつけている。
ムンドーじいじ達は騎士が現れたので、急いで距離を取り、様子を少し見てから戻ってきた。
「姫様、敵の騎士…どうやらホラ男爵のようです。姫様の言う二日酔いになるまで大量に飲んでいない騎士がいるようですね。いくら騎士の軍馬が遅いとは言え、さすがに痩せ馬に二人乗りで逃げ切るのは危険です。それに、あの騎士を倒せる兵数をここに呼び寄せている間に時間が経てば、他の兵士や騎士達も二日酔いから立ち直って、防御陣地もない場所で騎士の突撃攻撃を受けてしまいます。残念ながら姫様の策略は、空振りの様子です、すぐに後方陣地へと引き上げ、敵を迎え撃つのが上策かと」
じいじの説明を聞きながら考える。
……うーん、あのホラ男爵は、
私は、少し考えをまとめてみる。
この騎士以外の傭兵や、騎士達が出てこないのを見ると、私の
だけど、今見えているホラ男爵と派手な神父は少なくとも、動くことができているので、今の私達の兵力で十分脅威になる。
トートさんが軍馬に乗っているのなら、あのホラ男爵と戦ってもらうのだけれど、軍馬を失った騎士の戦力は半減すると言ってもいいだろう、騎士は馬に乗る事で恐るべき戦場の花形になる。
このまま正面から戦いを挑むと、今のうちの戦力では、ちょっと辛いかなあ。
丘の上から敵の状態を見ると、ホラ男爵を中心にしてちゃんと固まっている。貧相な兵士でも、逃げ場がない状況で襲われたら死に物狂いで反撃してくるだろう。
うーん……
しかし、まさか敵の総大将が、私の策略に引っかかってくれてなかったとは。
襲撃をしようと言っていた私の思惑はハズレたのだろうか?
いや、まだだ。
少なくとも、今見えている以外の敵兵は、今後全く使い物にならないだろう……覚めない二日酔いを味わうはずだからね。うふふふ。
なら答えは、簡単だ。
「じいじ、一度戻るのは却下します。この場で待機を命じます。焦る必要はありません、このまま様子を見ることにしましょう」
じいじは少し不満気だったが、折れてくれて、敵からも丸見えになっている丘の上から敵を見張ることにした。
しばらく丘の上から見張っていて少しずつ分かってきたのは、敵兵の真ん中に立つホラ男爵の調子もあまり良くはない様子で、ふらふらしている。
なんだ、効いてるじゃない。
なら難しく考える必要なんかなかったわ、考えて損しちゃった。
「じいじ、もう少し待ったら、敵が動きます。それに合わせて攻撃しましょう。伝令を1人出して後方陣地からすぐに兵をここに寄こしてください」
「姫様?」
「大丈夫ですよ、じいじ。敵は動きます、一度動き出したらもう止まりません」
伝令の馬が後方陣地へ急ぎ走っていく。私はその様子を見ながら、下手をすると間に合わないかなと思いながら、中々思い通りに物事は進まないと諦めていた。
★帝歴2501年10月4日 昼 カタ村の見える丘の上 ティア
お昼ごろまで丘の上から見張っていると、敵の動きが急に慌ただしくなる。
1人で踏ん張っていたホラ男爵を中心にして、盾と短槍を持った兵士達が集まり、村からホラの方向へと移動を始めた。兵士達はまとまりのない歩き方で移動している。
ホラ男爵の横にいる派手な神父服の男が、指揮を執っているようだ。
巨大な軍馬に何人かの騎士を乗せ、兵士に引かせながら村から連れだして来たようだが、私達の見ている前で落馬をする騎士もいる。やはり二日酔いが酷いらしい。
「じいじ、あれを見てどう思いますか?」
「姫様のおっしゃる通り、まだ酷い二日酔いが続いているようですな……どんな毒を用いたのですか?」
「ウフフフ、彼らには未知の物ですよ、どうやらホラ男爵の体調もイマイチの様子ですね。あのまま彼らをホラの街まで帰してしまうと、ホラにはまだ傭兵100と、騎士3人が残っています。その兵力を再編して攻めこまれたら、今度こそヒューパは滅亡しますよ。じいじなら、ここでどうするべきですか?」
私は、あえてじいじに答えを聞く。
じいじは苦虫を噛み潰したような顔で笑いながら答えた。
「後方陣地からの兵は間に合いませんが、今この瞬間、この人数ででも攻めこむ時ですな。元気そうに見える敵兵も一度ホラ自身の騎士に踏み潰されていたので、味方を信じてはいないでしょう。ここで攻めればバラバラになります」
「分かりました、それでは行きましょう」
「はい、ではちょっと、失礼」
またそのまま馬から降ろされた。
えー、またー、一番良い所なのにー。
私は、またここでお留守番だ。
じいじ達は、9騎の馬で、100人を超える敵へと猛然と襲撃を開始する。
二人乗りの馬から18人の奇声が、秩序があるかのように歩いていた敵を激しく動揺させる。
怯えた顔で後ろを振り返る敵兵へと、弓の射程距離まで近づいたじいじ達が、次々と矢を打ち込むと、あっさりホラの軍勢は崩壊した。
集団の後方から喰らい突かれたホラの軍勢は、見せかけの秩序を一瞬で崩壊させ、武器と盾を投げ捨てると、悲鳴をあげながらバラバラに走りだして逃げていく。
派手な服装の神父が大声で静止しようとするが、一度恐怖にかられて勢いがついた集団を止める方法などあるわけはなく、あっという間に集団は崩壊してしまう。
さっきまで軍馬にかろうじて乗っていた他の騎士達は、落馬して置き去りだ。
派手な服を着た神父は、ホラ男爵の馬を引いて急いで逃げていった。
私は、ムンドーじいじ達の方を見るが、すでに敵を追って遠く小さな点になっていた。
「あの分だと、逃しちゃうかも……まずいなあ」
今回は勝ったけれど、ホラ男爵を逃がすのはちょっと不味いよねえ、ホラの城にはまだ敵戦力が残っている
しばらく待つと、後方陣地から駆け足でヒューパ軍がやってきた
急げと指示を出した以上しょうがないのかもしれないが、あれだけバラバラに来ているのを見ると、軍としてはあまり良い物ではなさそうだ。この世界の兵士は集団としての秩序を保ちにくいのかもしれない。
私の元へと伝令が帰ってきたので、無抵抗の兵士は殺さずに捕まえて置くように指示を出す。
傭兵を鉱山等で強制労働にするにも、素手にひん剥いたとしても近距離でなら精霊魔法を使った攻撃をしてこられる可能性があり、あまり歓迎はされないが今回は違う。
私が使った
私がワインからエチルアルコール=酒精を抜き取った作業をした後、残った液に酒精の代わりのあるものを詰め込んだのだ。
そう、メチルアルコール。
木炭製造の過程で作られたメチルアルコールを、お酒本来の酒精=エチルアルコールと入れ替えた物を用意して、ホラの軍勢に飲ませた。
ヤマタのオロチは、毒酒精を浴びるほど飲んで倒された。
私は、ほんの一手間加えて、酒精を利用させてもらったんだ。
メチルアルコールは、エチルアルコールとまったく同じように、飲むと酔っ払う物質だ。
普通に酔っぱらえるので、酒が不足した地方で工業用の安いメチルアルコールを飲む話しがある。
普通に酔っぱらえるので、飲んだ直後半日ぐらいは普通に良い気分で酔っ払える。
ただし、その後に地獄がやってくる。
本物のお酒に入っているエチルアルコールは、飲むと身体の中の分解酵素でアセトアルデヒドに分解され、さらに無害の酢酸になる。
ところが、メチルアルコールは、同じ分解酵素が有害なホルムアルデヒドを作り出し、さらに分解され有害な蟻酸を作り出す。
この蟻酸がメチルアルコールを飲んだ被害者の体内で、翌日から最悪の二日酔いを開始する。
激しい頭痛や嘔吐を伴い、目眩を起こす。そして目の神経を激しく破壊する。
酷い場合は、失明を起こし、大量に摂取した場合は死亡することもある。
このメチルアルコールの害から逃れるには、一応方法がある。私が化学プラント勤務時代にレクチャーを受けた事がある方法だ。
体の分解酵素がメチルアルコールから蟻酸を作り出す前に、本物の酒を多く飲み、分解酵素に全力で酢酸を作らせる事で、蟻酸を作る暇を与えずに体外に排出する方法だ。
多分、ホラ男爵が動けたのは、普通の酒を飲んでいたからだろう。
結局捕らえた傭兵の内、数日で約半数が失明をして、残りが死亡した。まともに生き残ったのは少数だがやはり目に障害が残って視力が極端に落ちていた……全員めちゃくちゃ飲んだのね。さすがに自業自得ですよ。
追撃戦の方は、やはり軍を出すのが遅れたため、肝心な敵を取り逃した。
ホラ男爵と派手な神父はそのままホラへと逃亡されてしまい、禍根が残る。
一番逃がしてはいけない相手だったが、派手なだけだと思っていた神父が予想以上の反撃を見せ、じいじ達の追撃を振り切った。
一方、道に置き去りにされた騎士は、倒れたまま抵抗をしようとしたので、
普通、騎士や貴族の捕虜は、生きたまま捕らえて、身代金をもらうのが流儀らしいのだが、ヒューパ軍の兵士達は、普段近隣の村に住む普通の住人で、今までホラの騎士達によって
騎士達が乗っていた軍馬や甲冑は、私達ヒューパ軍の物になり損出の補填になる。
また、ホラ男爵の荷物もそのまま残されており、少量の金貨と、近年のホラ領内の税務書類等の重要書類が手に入った。
中世ヨーロッパの時代、重要書類は領主と共に移動していたと言われるが、この世界でもその常識は適用されるようだ。
この後、近隣の村々へと伝令を出しに行くと、逃げ遅れた村もあったようで、敵の斥候兵によって村を焼かれ犠牲者を出した所も出ていた。
私は、その報告を受け、犠牲者の数に、自分の無力さを呪った。
後方担当は、私なのに上手く機能していなかったせいで、犠牲を出してしまった……
戦争前、あれほど準備をしてきたのに、実際に行ってみると全く機能してなかった事になる。
更に痛いことに、その村はヒューパ最大の白ワイン用ぶどうの産地だったので、今後ワイン作りに大打撃がでることになる。
その後は、森を焼いた時残してきたお爺ちゃん達や、農民兵の遺骨も回収した。
戦争に勝ったが、犠牲の多さに目がくらむ。
以前ムンドーじいじに言われた、私が殺す仲間の意味が、嫌と言うほど私を苛む。
これが今回のヤマタ作戦の戦果だ。
戦地の後始末は、ムンドーじいじ達大人に任せて、私は構築途中だった後方陣地へ戻った。
出番の無かったベック少年達を呼び返すと、もう1個用意していた仕掛けを回収させ、自分の荷物にしまい込む。
「さて、一度お家帰りますかね」
★帝歴2501年10月8日 ヒューパ城 ティア
お父さんのいるヒューパの城に一度帰ると、怪我をしてまだ動けないお父さんに、私は一つの提案をする。
「今からホラを滅ぼしに行きます」
ヤマタ作戦は、まだ終わっていなかった。
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