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小僧と兎のぬいぐるみが雑木林の中に隠れて行くのを見届け、ワシ等は橋の方を見る。橋の向こうでパトカーから警官が2人降りてこっちに向かって駆け出す、2人はワシ等の前に現れると敬礼をした。
「日ノ本軍前派出所の枝岡巡査であります!銃声が聞こえたとの通報を受けました!」
「彼の上司である藍雨巡査部長ですーよろしくお願いしまーす」
「は?巡査部長?」
査部長と名乗った青年の自己紹介にワシは思わず聞き返す。青年は隣に立つ巡査よりも背が低い上に、若く見え警官の恰好はしておっても少年とも呼べる容姿をしておったからだ。
「んーその困惑の表情はいつ見ても面白いねー、日ノ本軍と同じく警察でも天才は重宝されて、早く出世出来るんだよー」
「藍雨巡査部長は幼少期から数々の事件を解決!行方知れずとなった猫の行方から偶然立ち寄った怨み晴らさでおくべきか事件で見事、第一被害者の死は偽装である事を見抜き、犯人の呪詛見せ掛けトリックを暴露!更に警視長である父親の威厳を借り、捜査資料保管室を自由に出入りし、迷宮入りとされた事件を次々と解き明かしていった“推理の天才”なのであります!」
「…天才だからというより、警視長の親の七光で出世したんじゃないんですか?」
「兄者!」
「あははーみんなそう言うよー、でも幾ら親バカでも成人したての青二才に巡査部長の地位は与えられないでしょー?」
「確かにそうですね」
「それで銃撃ったのはお宅等ですかー?」
「違います、この芋虫です」
兄は地面に転がっておるマフィアを蹴飛ばし、警官2人の前に転がす。
「彼はナイヤファミリーのボス猿で逃亡生活をする内に無一文となり、空腹に堪えかねこの家に空き巣に入ろうとしました」
「あ!こっこいつは連続無銭飲食の犯人!犯人逮捕にご協力に感謝致します!」
「しかし捕らえたのはこいつ1人で、残りの部下達には逃げられてしまいました」
「なら捕らえられたボスを取り戻す為に、襲撃にくるかもね〜鷹一軍曹?」
「…何故私の名を?」
「今朝ニュースで見たからさー、それに特徴的な名前だったから良く覚えてるんだー」
「そうですか」
「しかしこの暴行跡は些かやり過ぎの様な気がします!この猿轡何か完全密閉され鼻からしか息が…」
「あっ猿轡は取らないで下さい、そいつ能力者で“声”関連の能力を持ち合わせてます」
「能力者!?」
「おう、そいつの大声を聞くと頭ん中グワングワンしてのう…悪い事は言わんから外さん方が良いぞ」
ワシの言葉を聞いた巡査が、猿轡から手を離し懐から手錠を取り出した。
「ならばせめて手錠に変えましょう!ワイヤーで手首が傷付いているであります!」
「ああすいませんね、そちらのワイヤーは仕事道具なので回収させて頂きます」
「ところでさー、テレビに出る程有名な鷹の目兄弟が、何でこんな所にいるのー?」
「…甥を引き取りに来たんです」
「甥ー?」
「ええ、実は弟の嫁がこの家に住んでいまして弟が亡くなった後も女手一つで育ててきたのですが…そんな彼女も昨年病死し、引き取り手として私が名乗り出たのです」
「あーもしかしてあの流行り病ー?でも何で1年経ってから引き取りに来たのー?」
「それは私達は電話を受けた時はにほんから遠く離れた戦場にいましてね、本当は一年間鷲三の嫁が面倒見る筈でしたが5人子供がいるのに甥の面倒なんか見てる余裕ないと、この家に残して育児放棄やらかしやがったんですよ」
「…本当にすまん、兄者」
「ふ〜ん、それでその甥君は行方不明と言った所かなー?」
「「?!」」
何故その事を?と驚いた顔で見ていると、巡査部長は洗濯物が干ささっとる竿を指差し説明する。
「まずあそこに干してある服、全部夏服でしかも私服だから恐らく夏休みに入ってから、干されたものだしー、一緒に干してあるシーツが下の方泥だらけなのが見えるー?確かこの辺りの地域はこの一週間雨降ってなかったんだよねー、雨が降った時に取り込んでないって事は一ヶ月以内から一週間前位から家に帰ってないって所かなー?」
「流石は推理の天才じゃのー」
「…その通りです、今から警察に連絡を入れて甥の捜索願いと、こいつを警察に突き出すつもりでした」
「あははーマフィアのボスの連行はついでかー、良いよー警察は市民の味方だから責任持って甥君を探し出してみせるよー、それで名前を聞かせてくれるー?」
「名前はひのした光太郎、ひのしたは母方の姓でこちらが甥の顔写真です」
そう言って兄は訓練所で貰った顔写真が乗っとる資料を、巡査部長に手渡した。
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