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「落ちた際に全身打撲の上に肋骨にヒビが入ってしまい、住人が通報した警察が駆け付けるまでそこを動けず。坊ちゃんがあの後どこに行ったのかは本当に知らないんですよ」
「…何故その事を警察に言わなかったんですかー?」
「へ?」
「警察が駆け付け貴方に事情聴取をした時に、抗争の時に一般人が巻き込まれた事を話してませんでしたよねー?何故黙っていたんですかー?」
「えっ…何故それを?」
「ニュースで取り上げられてなかったからですー。マフィアの抗争のせいで一般人の子供が行方不明になったんですよー?普通顔写真とか公開して情報提供を呼び掛けるじゃないですかー」
「(おお自分が警察である事を上手い具合にごまかした!流石藍ちゃんは天才なだけあって賢いのう!)」
「それは…その…」
「それと何故、貴方は光太郎君を“坊ちゃん”と親しみを込めて呼ぶんですかー?」
藍ちゃんの言葉に管理人が目を見開く。そんな管理人の表情を見た藍ちゃんは立ち上がると口元を軽く人差し指で叩きながら、管理人に近付いて行く。
「まるで貴方と光太郎君は親しい間柄の様ではないですかー。もしかして貴方は光太郎君のお母さんの葬儀に立ち会ったのでは無いでしょうかー?」
「な…何故そう思われたのですか?」
「貴方今自分で光太郎君を見たのは1年ぶりだって言ったじゃないですかー?それに光太郎君のお母さんが死んだのは1年前で、つまり母親が死亡した数日間で光太郎君を坊ちゃんと呼ぶ様な関係になったとしたら、貴方は葬儀に立ち会いその過程で親しくなったと考えるのが妥当じゃないですかねー?」
「…」
「葬儀に立ち会ったと言うなら、この霊園に一体誰が光太郎のお母さんの埋葬したのかー…管理人さん、そこの所を是非お聞かせ願えませんでしょうかー?」
藍ちゃんは管理人の側に寄ると、優しい口調で語りかけながら自分の唇を触れていた人差し指で管理人を指差した。
「(…何だかテレビの探偵物を生で見ている気分じゃ、ワクワクするのう)」
「………わかりました、お話しましょう」
藍ちゃんの追い込みに管理人が観念した様に口を開いた。
「…坊ちゃんのお母様を埋葬したのはこのカルルス霊園の創立者、曾てのテネブラファミリーのボス・カルロ様です」
×××
「全くエムエムを制裁するのは構いませんがもう少し散らかさずにやって下さいよ、血痕なんか着けちゃって落とすのが大変じゃないですか」
「…すまん」
私が床の血痕をモップで拭きながら愚痴を零すと、後ろで壁の血痕を洗剤付きブラシで落としているコルヴォ様から、小さな声で謝罪の言葉が聞こえてきた。
何故マフィアのボス自ら掃除をしているのかと言うと、コタロー君に家事を任せさぁ掃除をしようと部屋を訪れた際に、コルヴォ様が汚したのは自分だからと手伝いを申し出たからだ。
本来なら組織のボスが掃除だなんて恐れ多いと断るべきなのだが、生憎私はせっかくの好意を断る方が失礼であると考える性分なので、コルヴォ様の好意を有り難く受け取り1番厄介な壁の血痕をお願いした。
私が担当した床は高級ホテルなだけあって上質なフローリングで、力を込めてモップで擦ればどんどん落ちて行く…絨毯の上じゃなくて本当に良かった、大分落ちたのを見てそろそろ雑巾で乾拭きして床の掃除は終わりですかねと、モップをバケツの中に突っ込み水が跳ねない程度の力で濯ぐ。
「それにしても今日はどうしたんですか?いつもなら黒羽の弾丸一発で終わるのに、今日はあちこち叩き付けてご丁寧に血痕まで付着させて…あっブラシで擦るだけじゃ汚れも擦り付けてる様なものですので、泡が汚くなったら一度濡れ雑巾で泡を拭き取って下さい」
「…あの子を性の対象にしたのが許せなくてな、ついカッとなってしまった」
「は?」
思わぬ返答に私は掃除の手を止めコルヴォ様を見る。
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