第1話 闇の者
私の名は紅菊。
産まれた時に命名された名前は、実の父親に捨てられました。
紅菊とは名無しの権兵衛となり、野良猫の様に日々を生きていた私を救ってくれた、恩人が付けてくれた名前です。
突然ですが恩人に拾われ、私が裏社会に足を踏み入れ、テネブラファミリーに入団してから2年経った時。私の所属する組織のボスが死にました。
そんな彼の死後、組織の後継者はボスに子孫がいなかった為、ボスがもっとも信頼を寄せていた側近である、コルヴォ様がボスに就任いたしました。
コルヴォ・ドゥーエニッビオ。
私の恩人の名前です。
本来なら同じ側近である私にも継承権があるのですが、私は数年しかマフィアにいないし、ボスの座に興味は無い為辞退。組織は後継者問題も起こらず、何の問題も無くコルヴォ様が引き継ぎました。
継承式の夜、彼は私にいくつか質問をした。
「紅菊、お前はボスの座に興味はなかったのか?」
「私がボスの器に見えますか?」
「私がボスとなる事に不満は無いのか?」
「不満も何も、組織に入った時から私がお仕えする方は、コルヴォ様お一人でしたからね」
「…私が継承する事が決まった時、お前から“憎しみ”を感じなかった所から、その言葉は本当の様だな」
「あなたの能力は心を読む事も出来るのですか?」
「気味が悪いか?嫌なら他のマフィアに移っても構わん、去る者は追わんぞ」
「この組織に入団させた本人が何を言っているんです、それに…」
“闇の者”を受け入れたがる所が限られているのは、あなたが一番理解しているでしょう?
その言葉に彼はこれ以上何も言わず、黙って私を側に置いた。彼は寡黙で人と馴れ合うのを苦手とし、自ら他人と距離を置いていました。
そんな彼が私を側に置いてくれるのは、同じ“闇の者”からくる仲間意識か、それとも同情か…私が入団する前から組織にいた彼が、何故マフィアになったのかその経緯は不明、知りたくも無いし知ろうともしなかった。
そんな彼は顔面から左手首に掛けて左半身の素肌が黒く、黒いファーの付いた漆黒のコートを着て素肌を隠し。普段から金属製の烏を模したアイマスクを付けており、素顔を見た事は1度も無い。
思考も過去も本当の顔さえも、謎に包まれた彼の考えている事はわからないが、私は彼から言い渡された仕事をこなすだけ。それが彼に対する恩返しであり生きがいなのです。
そう…彼は私の恩人、稀に意味不明な行動を起こしますが、私はそれに従うまでです。
コルヴォ様は月に一度花屋で(女性店員は、全身黒ずくめの巨漢に怯え涙目で接客し)菊の花束を買い。コルヴォ様自らファミリーが経営する銀行で、どこかへお金を振り込みに行き(何も知らない一般人の銀行員に、凄く怪しまれ警察を呼ばれそうになった)そして次の日にどう考えても必要のない(女性に贈るにしては、縁起の悪い)菊の花束を持って「煙草を買いに行ってくる」と3時間位出掛ける。理解不能な行動を起こしますがその他は至って普通…
最初の2つはコルヴォ様に「そのくらい私がやりますよ」「いや、問題ない」「いえ、コルヴォ様の外見じゃあ目立ち過ぎてその内問題起こします」と説得の末に、今では私の仕事の1つとなりました。
しかし菊の花束も意味不明ですが、20万は一体どこに振り込んでるのでしょう…まぁ不思議に思いますが、興味は持ちませんがね。
コルヴォ様に拾って頂き彼に仕え初めてから、2年が経ちある程度の事は慣れました。そうある程度の事は………しかし。
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