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「紅菊、今日からお前の仕事にこの子の世話を加える」


本日、コルヴォ様の考えている事が、ますますわからなくなりました。


「………また例の煙草の買い出しに出掛け5時間。今日はやけに時間がかかると思っていましたが、帰宅しての第一声がそれですか?」


彼の突然の言葉に思わず回想に入ってしまいました。そう今日は毎月恒例の菊の花束を持っての、煙草の買い出しの日なのですが…今回は帰宅した彼の腕の中には、彼が普段羽織っているコートで包み込んだ何かが、抱きかかえられていたのです。それも暑い真夏でも脱がなかったスーツを脱ぎ珍しく上半身Yシャツ姿。


しかもその包みは私と同じ位のデカさ、彼は一体何を拾ってきたのでしょう?


「コルヴォ様が犬好きだとは存じませんでした」

「犬ではない」

「えっ犬ではないとしたら何の動物ですか?…ワニ?」

「違う、そもそも動物ではないのだが」

「は?まさか人だなんて言わないですよね?」

「………」

「………」


え?まさか………?


私は恐る恐る手を伸ばし頭の位置にあるコートを剥がす。そこには茶髪の可愛い顔をした子供が眠っていた。


それも頬に血痕がべったり付着し顔色が真っ青…もしかして死んでる?


「………まさかコルヴォ様にネクロフィリアの趣味がありましたとは…」

「おい殺すな」

「生きてるんですか?」

「右肩に一発銃弾を浴びたが絶命はしていない」

「銃弾?」

「車の中で医者を呼んでおいた、とりあえず止血する為のタオルを持ってこい」

「かしこまりました」


銃弾、の言葉に疑問を抱きつつもタオルを取りに行く。


コルヴォ様は銃を使わない、闇の者である彼には必要ないからだ。




「只今お持ち致しました」


部屋に戻ると子供はソファーの上で寝かされ、その傍らでコルヴォ様が出血している場所を布で抑え止血していた。黒く変色した肌を隠す手袋と、少年を包んでいたコートに接していた部分のYシャツは、子供の血でどす黒く染まっている。


「(今日の着ている服は全て捨てなければいけませんね)」


なんて事を考えながら私はコルヴォ様にタオルを手渡し、今まで止血に使われていた布を手渡された…ってコレは…


「コルヴォ様、何もスーツで止血しなくても」

「他に止血に使える物がなかった」

「…数10万のスーツを止血に使うなんて、世界1高級な止血方法ですね」


はたしてその価値がその少年にあるんでしょうか?今にも止まりそうに弱々しく呼吸を乱す子供を見ながら思う。


「しかしこの出血量、早急に対処しませんと失血死しますね」

「ああ、あと5分以内に来る」


そう言ってコルヴォ様は懐中時計を取り出し時刻を見る。


「あと5分て…そんな正確に来る人いますか「コルヴォ様ー♡」…ああエムエムなら来ますね確実に」


廊下から響き渡る声に頭痛がしてきた。


「よりによってアレですか…」

「腕は確かだ、腕は」

「腕以外取り柄ないじゃないですか」

「………」


バーーーン!!


ハイヒールの音が扉の前で止まり、扉が勢いよく開いた。

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