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「もしかしたらあなたは“遅咲き”の者だったのかもしれないですね」
「遅咲き?」
「ある文献で読んだ事があるんですよ、才能を持つ者がソレを開花するのは早熟・早咲き・遅咲きの3種類あると言われています。最初の早熟は成長が早いだけの者、早咲きは幼少期の時から咲く者、遅咲きはある程度成長してから才能が咲く者…あなたは才能が眠っていた遅咲きだったから、勉強も運動も駄目な子だと思われてたんでしょう」
「そうなの?…早熟と早咲きの違いってなぁに?」
「早咲きは産まれた時から才能があった者、早熟は先ほど言った様に成長が早いだけで才能はない者の事です。簡単に言えば“子供の内は天才、大人になればただの人”って事で実際に成績が他の子より優れていて天才だと思われた子のほとんどが、単なる早熟児だったという事は多いそうですからね」
「そうなんだ…(才雅君は早熟とは違うよね?)」
なにやら考え込むコタロー君に構わず私は説明を続ける。
「コタロー君の話で去年あのお喋りが言っていた事を思い出しました。その病で沢山の能力者が能力を開花したと言っていましたね」
「能力者?」
「超能力や霊力の存在をご存知ですか?」
「うん、むかしクラスメートで手を使わないでスプーンを曲げられた子がいたよ!!凄かったな〜僕も真似してみたけど出来なかったよ(そういえばその子その後軍に連れて行かれちゃったけど…今なにしてんのかな?)」
「その能力者も才能と同様、稀に能力を眠らせたまま産まれてくる者がいて、あの病がきっかけとなり沢山の能力者が目覚めた様です」
「そうなの!?」
「但し、能力が目覚めたとしても脳にダメージが与えられた事に変わりありませんから、能力の変わりに知能が低下する形になった感じですがね」
「え?」
「最初は軍側も喜んでいたのですが、知能が無い故能力を暴走させる者が殆どで、ある程度躾れば言うこと聞くけれど余りに酷い場合は、戦死と偽り処分されたそうです」
これは世間には非公開の情報なんですが…そんな機密情報を、簡単に漏らすエムエムを野放しにする、にほん軍上層部の思想はわかりませんね。
「ちょっと違う様な気がしますが、コタロー君があの病で知能を手に入れたとしたら、彼らと同じ遅咲きだったとしか考えられませんね…違う所はあなたは“知能が上がる”才能だったから、何も失わず手に入れられた形になります」
「…違うよ」
「何が違うのです?この病にかかり死者はにほん人口の5分の1、死亡率の高い病から生き残りこの病で能力が咲いた者は100人近く、しかしそれら全ては知能と引き換えに…あなたは何も失わず才能だけを手に入れる事が出来た幸せ者ですよ。もっとも脳に傷を負うだけで何も得られなかった方はその10倍近くいるのですがね」
「幸せ者なんかじゃないよ…だって………お母さんその病気で死んじゃったから…」
コタロー君は小さく呟く。最後の方は悲しみで潰れそうな声だった。
『そうです、一昨日はマスターのお母様の墓参りの日だったんですニャン』
「…そういえばさっき帽子は、霊園で落としたと言ってましたね」
「友達も離れていっちゃったし…お母さん死んじゃう位なら脳みそ溶けちゃった方が良かった」
『マスターそんな事言わないでくださいニャン』
「友達が離れていったって…天才になって突然ですか?」
「ううん、最初の内はみんな大変だったね、とかお母さん死んじゃって悲しかったねって慰めてくれてたの。僕の他にも親が死んじゃった子とかいて、そんな子達とは特に仲良くしてたんだ」
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