3

いい加減腕が痛くなってきたので私は椅子の影に入り、ワイヤーをすり抜ける。


『!?』

「お姉さんが消えちゃった!」

「私は闇と同化する事が出来ます」

「うわっ!?」


影の中から上半身だけ乗り出すと、消えた私に驚き近付いて来たコタロー君の顔とスレスレになる。


「闇と同化になってる間は私を捕まえる事は出来ません、あなたは自分の影を捕まえた事がありますか?」


首を横に振るコタロー君を横目に、下半身も影から抜け出す。


「能力者である私から見たら“頭が良いだけの天才”何て可愛いもんですよ、コタロー君よりももっと凄い人だっている訳ですし、寧ろ幼い内に挫折を体験出来て良かった事じゃないですか、コタロー君は才雅君を立派な大人になる手助けが出来たんですから、そんなに気に病む必要は無いんです」

「…」

「それにコタロー君に友達が出来なかったのはI組にいたからでしょ?A組やS組にいけば天才なんてゴロゴロいた訳だし、別に天才だから友達が出来ない訳じゃないですか、現に訓練所の外で才雅君に会えたでしょ?そして友達になったんでしょ?」

「!っ…うん」

「今は見える世界は学校の教室だけですが、もっと広い視野で探したら友達何て簡単に見つかりますよ、例えば私と今ここで出会えたのだってそうでしょう?」

「…え?どういう事?」


私の言葉にコタロー君がきょとんとした顔で見てきた、よし良い調子です。


「ええ、友達がいないから泣いてるのでしょう?なら私が友達になってあげます」

「…友達になってくれるの?」

「ええなってあげます、だから泣くのはおよしなさい…それともコタロー君は友達が出来る時は泣くのですか?」

「…ううん、違うよ」


コタロー君は必死に袖で涙を拭きとり始め、次第にえへへと笑い声を零し始めた。


「そっか、お友達か…えへへ!僕嬉しいよ!」


そう言ってコタロー君は、満面の笑みで私の方を見た…よし、大泣き回避成功ですね。


私はコルヴォ様のベッドの側のサイドテーブルの上に常備してある水差しから、コップに水を注ぎ熊さんに友達が出来たと嬉しそうに話し掛けるコタロー君に手渡した。


「とりあえずここに来てからずっと飲食してないから喉渇いたでしょ、これでも飲みなさい」

「うん、ありがとう」


コタロー君はコップを受け取りベッドに腰掛ける。


「お腹空いてませんか?お粥温め直しますのでそれ食べましょうね」

「うん…ところでお姉さん1つ聞いて良い?」

「何ですか?」

「ここどこなの?」

「…」


私が手渡した水を飲みながら、コタロー君は部屋を見渡す…今更それを聞きますか?


「ここはテネブラファミリーのアジト、ついでにこの部屋はボスであるコルヴォ様の寝室です」

「テネブラ…ファミリー?」

「マフィアですよ」

「!っマフィア!?」

「ええ、あなたが連れて来られた理由は、残念ながら私にはわかりません…まぁもう直ぐコルヴォ様が帰ってくれば理由が明らかに「やだーーーっ!!爪剥がさないでーーーっ!!」…は?」


落ち着きを取り戻した筈のコタロー君が、突然取り乱しながらベッドの後ろに隠れてしまった。


「やだやだやだーっ!!痛そうだよーーーっ!怖いよーーーっ!」

「…なに?爪?どうしたんですか一体「マフィアって軍の人を捕まえて拷問するんでしょ!?」

「は?」

「僕知ってるよ!訓練所で習ったんだよ!マフィアの人達は軍人を捕まえて拷問するのが好きなんだって!だから訓練所に通ってる子も捕まったら拷問されるから、絶対マフィアのいる地域には近寄っちゃ駄目って先生にビデオ見せられたよ!」

「ビデオ?」

「うん!道徳の授業でマフィアに捕まった軍人さんのビデオ見せられたの!そんで爪をベリッ!って剥がされてたの!見てるだけで痛かったよ!!」

「………」

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