第13話 嘘つき少年
テストが返された日の給食、僕のお盆にだけプリンが乗っていた。
先生はまたテストで良い点を取ったら、毎日食べられる様になれるって言っていた。
皆が僕を羨ましがっていて、その日から誰も一緒に給食を食べてくれなくなった。
そのプリンを一口食べて…僕は嘘吐きになろうと思った。
×××
「何だか納得出来ないよねー」
「全くです」
「何がじゃ?2人共」
管理人から話を聞き終えたワシ等は、甥っ子の行方は手掛かりが残されてはいないかと、甥っ子の母親の墓のもとへと向かう道中で、2人が納得いかんといった表情で呟いた。
「管理人の話ですよ、どうにも腑に落ちません」
「へ?何処が?」
兄の言葉にワシは管理人の話の内容を思い返す。
1年前、この霊園を建てたカルロは友人の見舞いで立ち寄った先の病院で、友人と同じ病室に母親の遺体が横たわるベッドの横で、椅子に座りながらずっと泣いている子供がおった。その子供が甥っ子の光太郎じゃった。
甥っ子の事が気にかかりカルロは友人に話を聞くと、甥っ子には身寄りが無く母親の葬儀を行える大人がおらず、病院側は母親の遺体を解剖に使わせて貰えるなら、こちらで全て処理してあげようと子供に申し出ても子供はそれを拒否。そりゃ自分の母親が死して尚、切り刻まれるなんて嫌がるなんて決まってとる…しかし子供1人ではどうする事も出来ず途方に暮れて、ああして泣く事しか出来ないのだという。
それを聞いたカルロは甥っ子を可哀相に思い、母親を自分が創立したカルルス霊園に埋葬してあげたのじゃった。管理人は実はカルロの元部下で、足の怪我を理由に裏社会から足を洗う際に、再就職先として霊園の管理人を任されて、新しい仕事先を用意してくれたカルロを今なお敬愛し、ボス自らが面倒を見た子供だから坊ちゃんと呼び、可愛がっておったのだ。
「ワシ等の変わりに葬儀をしてくれたカルロって人に、一言礼を言いたかったもんじゃのう。半年前に亡くなっただなんて実に残念じゃ」
「私としては何故墓の面倒だけ見て、甥を孤児院に入れる事もせずほったらかしにしたのか、問い詰めたい所ですよ」
「へ?そりゃ兄者が引き取る事が決まっとったからじゃろ?」
「カルロさんはその事を知らない筈だよー?その証拠に葬儀の事で鷹さんと鷲さんの所に連絡が行かなかった上に、何より軍人の家族をカルルス霊園に埋葬してる時点で、父親が軍人だった事も知らないと見えるねー」
「私の所に甥の事で連絡が来たのは母親が死亡してから一週間後、もし直ぐに連絡が来ていたら甥を迎えに行けたんですがねぇ」
「あー…ちょうど戦地に行った所で電話が来たんじゃったな」
「…僕としては本当に光太郎君があの家で、1人で暮らしてたのかが疑問なんだよねー。誰か光太郎君の保護者的存在がいたなら、しっくりするんだけどねー」
「…やっぱり貴方もそう思いますか」
「えっ何でじゃ?」
「え!?」
「…」
ワシが疑問の声を上げたら、藍ちゃんに逆に驚かれ、兄から呆れた表情でこっち見られた…え?ワシ何か変な事言った?
「鷲さーん…中学1〜2年の男の子がたった1年とはいえ、1人で暮らせる訳ないでしょー?強盗にとっちゃ良物件だし、訓練所で保護者のサインが必要な事がある筈だよー?」
「むっそれはそうか…」
「鷹さんは光太郎君の家の中を見たんだよねー?誰かもう1人住んでいる形跡とか見られなかったー?」
「私が家の中を見たのは数分間でしたからね…まずは甥の行方を知るのを先決していたので、同居人の痕跡は見落としがあったかもしれません」
「むー…光太郎君が消息を経った後の捜索願いが出されていない所から、やっぱり抗争相手が謎を解く鍵を握ってるねー。でも管理人は鷹さんと鷲さんがいる前では、絶対に口を割らないと思うなー」
「え?何でじゃ?」
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