第12話 カルルス霊園
カルルス霊園
半径1キロに及ぶその霊園は創立5年と、歴史は浅いが建築から創立までの経緯により、近隣住民から愛されている霊園である。
その霊園の管理者は一般人であり、その地の村長の名前が記されているが“本当の管理者”であるカルロ氏の名前を捩りカルルス霊園と名付けられた。
過去に日ノ本軍はカルルス霊園を建てたのがマフィアである事から、一度取り壊し新たに霊園を建てようと計画されるも、その霊園の管理者である村長を筆頭に、周辺住民の反対運動により取り壊しは中止される事になる。
その後日ノ本軍は軍人とその家族を、マフィアが建てたカルルス霊園に骨を納める事を固く禁じたのである。
「禁止されてるのになーんで弟君の奥さんの遺骨が、この霊園で眠ってるんだろうねー?」
巡査部長はパトカーを停車させながらそう呟いた。ワシは窓から顔を出し遠くにある霊園を眺める、坂の上にあるその駐車場は丁度霊園を見下ろせる位置にあり、創立5年の真新しいその霊園に立ち並ぶ墓石は汚れが少ないのか、太陽を反射した光に目が眩む。
「推理の天才はどの様に推理しますか?」
「んー?1つここに骨を入れた人は戸籍が母子家庭って事になってて父親が軍人だと知らなかったー。2つ弟さんが死亡したのは10年も前の事だからにほん軍は甥君達の事を忘れていたー。3つ覚えていたとしても流行り病のせいで他の霊園がいっぱいで遺骨を移そうにも移せなかったといった所かなー?」
「そう考えるのが妥当でしょうね」
後ろで兄と巡査部長の会話を聞いておると、ワシは霊園の隣に広い土地に車が数台しか停まっておらん駐車場を発見する。
「巡査部長、あそこにも駐車場があるが何でこんな離れた所に駐車するんじゃ?」
「あーその事何だけどー。実は一週間前の抗争の件で、僕ら警察はこの霊園に近付けないんだー」
「「は?」」
「抗争が起こった時に大怪我した管理人を、重要参考人として署に連行したんだけどー。その管理人が抗争の事は知らぬ存ぜぬで一切口を割らなかったんだよねー」
「重要参考人なら尚更口を割らせるべきでしょ?」
「あっわかった!頑として口を割らん管理人に乱暴な事をしたんじゃろ!」
「あったりー。それで周辺の住人が“何も知らない怪我人に乱暴な事したー”って、騒いで管理人を庇って住人達総出で、僕達警察を近付けまいとしてるんだよー」
そう言いながら巡査部長はパトカーから降りると上着を脱ぎ、パトカーを借りる際に、後部席に詰め込んでおった巡査部長が常に持ち歩いとるという鞄から、パーカーを取り出し上から羽織り一般人を装った。
「だから僕は君達の家族として甥の捜索に参加するつもりだから、鷹さん鷲さんよろしくねー」
「…ん?鷲さん?」
「家族何だから階級で呼んだら不自然でしょー?だから2人も僕の事は藍ちゃんって呼んでねー♪」
「…ちゃん付けはねーだろ」
巡査部長…いや藍ちゃんの言葉にしかめっ面で答える兄に少し変に思いながらもワシ等はパトカーを降り、カルルス霊園に足を運んだ。
カルルス霊園の正面門から少し歩いた所にある、管理小屋に訪れたワシ等は管理人に話を聞くべく扉をノックした。中から年配の男性の返事と共に、杖を突きながら何かを引きずる様な音が聞こえ暫くすると扉が開いた。
「はい、どちら様で?」
扉の向こうにいた管理人は案の定杖を突いておった、更に藍ちゃんに聞いた通り管理人の顔面に治りかけの青痣がついており、左腕を包帯で巻かれた痛々しい姿じゃった。
「すいませーん、実は僕達行方不明になった家族を探している者何ですけどー、協力して頂けませんでしょうかー?」
「は?」
「ちょっ藍ちゃんストレート過ぎやしないかの?」
「周りくどい事言って警戒されても困るでしょー?」
「そりゃそうじゃが…」
「ひのした光太郎君という少年がこの霊園に足を運んだのを最後に消息不明になったんですー、あっこちらその少年の顔写真何ですけど見覚えありませんかー?」
困惑した表情をした管理人に藍ちゃんは兄が渡した写真を渡す、すると管理人は驚いた表情で甥の写真を見た。
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