2

「その反応は見覚えある様ですねー」

「あ…貴方達は一体?」

「その子の親族ですよー。ほら写真とこの2人を見比べて見ると良く似てるでしょー?」


藍ちゃんの言葉に管理人は、写真とワシと兄の顔を見比べた。


「一週間前に写真の男の子が、この霊園にお母さんの墓参りに来た筈何ですー、何か知りませんかー?」

「っ…」


〝一週間前〟の単語を聞いた管理人は顔をしかめ、ワシは何か知っとる顔じゃと直感する。


「爺さん、ワシ等は甥っ子の行方が知りたいだけで、一週間前の抗争何てこれっぽっちも興味無いんじゃ。知ってるか知ってないかだけはっきりしてくれんかのう?」

「…そうですか、貴方達が坊ちゃんの」


管理人は何か納得した様な表情をしながら藍ちゃんに写真を返し、扉を大きく開けた。


「立ち話も何でしょう、どうぞこちらに」


そう言って管理人は小屋の奥へと足を引きずりながら入っていく、どうやら話をしてくれるらしいとワシ等は管理人の後に続いた。




「そちらに座ってお待ち下さい。今お茶をお入れします」


管理人はワシ等を応接室に案内すると、隣の給水所に向かおうとする。


「おいおい爺さん、足引きずっとるのに大丈夫か?手ぇ貸すぞ」

「いやいやお客さん達の手を患わせる訳にはいきません、どうぞお座り下さい」

「爺さん若い者は扱き使うもんじゃ。それに職場の上司の無茶振りに比べりゃ茶の一つや二つ屁でもないわい、急須はコレかの?」

「お若いのに感心ですなぁ、湯呑みはこちらをお使い下さい」


ワシは管理人に言われた湯呑み4つにポットのお湯を入れ、茶っ葉を入れた急須に湯呑みのお湯を移す。


「鷲さんって面倒見良いよねー、末っ子なのに兄貴肌って感じがするよー」

「祖父の周囲の住人から慕われていた所を見ると、祖父によってそう躾られたんでしょうね。お陰で趣味も喋り方も私より爺臭い感じがしますよ」

「って事は幼少時代は弟達は、お爺ちゃんに面倒見て貰ってたのー?」

「いえ面倒見て貰っていたのは鷲三だけです。母の話では母乳も2人分しか出ず祖父の家で1人たっぷり粉ミルクを飲んで育っていて、前に授乳期の写真を見た時は鷲三だけ私達より一回りデカかったですね」

「ふーん、鷲さんのお兄ちゃんっ子な所はそこから来てるのかなー?」

「…否定出来ません」


茶の旨味が湯に溶け込む間に隣の応接室での兄と藍ちゃんの話し声が聞こえてくる。


兄が会って数時間の人間相手にここまで話をする何て本当に珍しいのう。藍ちゃんとは甥っ子捜索が終わった後も兄と仲良くして欲しいもんじゃ…そんな事を思いながら湯呑みに茶を注いでおると、茶菓子を用意していた管理人がワシに話かけてきた。


「あの〜…失礼ですがあの小さい方とはどういった関係なのでしょう?」

「へっ!?」

「いや貴方ともう1人の方は坊ちゃんと、親族だと一目でわかりますよ?しかしもう1人の方はどう見ても親族には見えないと言うか…」


『あーその事何だけどー、実は一週間前の抗争の件で僕ら警察はこの霊園に近付けないんだー』


『だから僕は君達の家族として、甥の捜索に参加するつもりだから鷹さん鷲さんよろしくねー』


「えっえーっと、その…っ」


まさかの突然の質問に、ワシは足りない脳みそを必死に振り絞る…必死に捻った脳みそに名案が浮かぶ!


「藍ちゃんは兄者の嫁さん何じゃ!」

「へっ?嫁さん!?」


嫁って事なら血筋は無くとも親族ってなるからのう!ワシって賢い!


「そうそう、兄者と藍ちゃん夫婦が甥っ子を引き取って養子にする予定での、藍ちゃんは自分の子供になる筈だった甥っ子が心配でワシ等に着いて来たんじゃよ!」

「え?えーっとあの方は女性だったんですか?ボーイッシュな格好してましたが…確かに言われてみれば、愛らしい顔立ちでした…ね?」


管理人は少し考え込んだ後、最終的に納得した表情をする。…我ながら名案が浮かんだもんじゃと、自画自賛しながらワシは茶と茶菓子が乗ったお盆を持ち隣の応接室へと足を運ぶ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る