3

「えっと…お姉さん誰?」


コタロー君は部屋の中にまで付いてきたエムエムを、不思議そうに見る。


「ん?あららそういえば会った時は気絶してたんだっけ?私はメリッサ・マゾストレッティ、エムエムって呼んでね♡」

「エムエム?」

「そう、私は坊やの肩を治療したお医者さんよん♡」

「そうなんだ!この説はどーもありがとうございました」

「あら礼儀正しい子♡久しぶりに見たわぁ」


コタロー君は治療をしてくれたエムエムに、しっかりとお辞儀をした…ちゃんと礼儀は知ってるみたいですね、ちょっと泣き虫な所が難点ですが、礼を知ってるかどうかで教育がかなり楽になりますよ。


「お姉さんお医者さんだったんだね、すっごく綺麗だからモデルさんかと思ってたよ」

「あららん更に素直な子♡私坊やみたいな子好きよ♡」

「エムエム…純粋なお子様を騙さないで下さい」


無駄だと知っていても、コタロー君の間違いを正さないエムエムに、私は冷たい視線を向けずにはいられなかった。


「エムエムお姉さんすっごく背高いんだねー、僕より背の高いお姉さん見たの初めてだよ」

「そりゃそうですよ、だってエムエムは 男性 何ですから」

「…え?」

「いやん♡」


私の言葉にコタロー君はキョトンとし、隣でエムエムが恥ずかしがる素振りを見せた…腹立つから腰クネクネさせないで欲しい。


「………えー嘘だぁ!だってエムエムお姉さん胸あるよ!?」

「シリコンとか詰め物入れた偽乳ですよ、こんな馬鹿デカい女性がいてたまりますか」

「あらこれ人工物は使ってないわよ?まぁちょっと固いけどね」


コタロー君は不思議そうに、エムエムの周囲をくるくる周りながら観察する。


「本当に男の人?僕オカマさん見るの初めてだよ」

「ええ本当よ、下はそのままだからベッドで見てみる?」

「ベッド?」

「万年発情期が見境無く子供を汚そうとしないで下さい、コタロー君もあんまり近寄ると食われますよ」

「?」

「冗談よん♡だって見境無く求めるのは自滅を意味からね…私がベッドを共にするのは蜜を舐め過ぎて肥えた雄豚だけよ。それも私利私欲で沢山沢山蜜を溜め込んで私が気持ちいい思いをさせて、ちょっと強請っただけで沢山蜜を舐めさせてくれる、哀れな下僕だけしか相手にしない様にしているわ」

「?」

「………」


日ノ本軍所属.研究員兼軍医…なぜ軍と敵対する裏社会を、自由気ままに出歩けるのか?その理由は彼のバックに沢山の上層部と権力者の愛人がいるからである。


エムエムは快楽と体質、この2つで愛人達を虜にしているのだ。


マゾヒストな自分の性癖と、どんな傷も完治する体質に作り替えたその肉体を利用し、通常ならば嫌悪されるであろう性癖を喜んで受け入れ、その見返りとして蜜を強請っている。その上本来の性別は男だから絶対に妊娠する事はない…蜜さえ舐めさせて貰えば、黙って快楽を与えてくれるエムエムは権力者にとっては、この上ない最高の愛人に適している。


沢山の愛人に沢山の蜜を分けてもらい、今ではエムエムは軍の裏権力者としての権力を手にしており、そんなエムエムを周囲は『軍に巣くう女王蜂だ』と言われる様になった。


「マゾヒストな女王何て聞いた事ないですよ」

「持てる才能を最大限に発揮してるだけよ♡」

「どういう事?」

「子供は知らなくて良い事です」

「でも偶には純粋無垢な子を汚したくなる時があるのよね〜」


そう言ってエムエムは厭らしい視線で、コタロー君を見て首周りに腕を回し抱きしめた。


更にエムエムは質が悪い女王蜂だ。


「でも我慢我慢♡雄豚は因果応報って事になるけど、何もしてない子に手を出したらこっちが一方的な加害者になるから、訴えられたら圧倒的に不利なのよね〜。だから坊や…悪い事する様になったら言ってね?その時はたっぷり可愛がってあげるから」


賢い彼は目先の欲に捕らわれず、自分が不利になる事は絶対にしないからだ。


「?、うんわかった」


エムエムは良くわかってない様子のコタロー君から離れ、満足気に頭を撫でた。


「(私はエムエムを好きになれない、早く帰って欲しい)…エムエム、検査に来たのでしょう?仕事があるんですからさっさと済ませて帰ったらどうです?」

「大丈夫大丈夫、だってたかが1000人程度死んだって特に軍に影響出ないんだし、どうせだからゆっくりして行くわ」

「医師の言葉とは思えませんね(ゆっくりしないで早く帰れば良いものを…)」

「ん?…?」


エムエムの態度に苛立ちが沸き上がっていると、小さく声が聞こえ声の方を見ればコタロー君が目を擦っていた…眠いんでしょうか?


「弱い子にいちいち同情してたらこっちの身が持たないわよ…そ・れ・よ・り・も!私はこの坊やに興味があるのよね〜」

「え?僕?」

「そう!あの私の誘いには全然乗らなかったコルヴォ様が連れてきた寵姫ちゃん!彼の好みを知る為にお話させてちょーだい♡」

「?、ちょーき?」

「エムエム、コルヴォ様にそんな趣味は無い上に、この子を連れてきた理由はそんな事させる為じゃありません」

「え?じゃあ何の為に?」


私はエムエムにコタロー君が連れてこられた経過を話した。




「あの病で天才に?脳が駄目になって能力者になった子は、沢山いたけど何も害も残らず天才になったなんて、聞いた事ないわよ?」

「でもずっとI組だった子が急激に知能が上がった理由が他に思い当たりません」

「ん〜違う様な気がするけど…精密検査してみない事には何とも言えないわね」

「…で?なにさり気なくコタロー君の隣に座って、抱き付いてるんですか?」

「え?そりゃあんなお涙頂戴話を聞いたらねぇ、坊やも触れ合いに飢えてるんじゃないかなーって思ってね♡」

「…」

「コタロー君、嫌なら嫌とはっきり言っておかないと調子に乗りますよ」

「ううん別に嫌じゃないよ、ただちょっと緊張してるだけ」


エムムに抱きつかれてから黙り込んでしまったコタロー君に助け舟を出す、しかしコタロー君は首を横に振った。


「緊張?我慢してるの間違いじゃなくて?」

「酷いわ紅菊ちゃん、もっと罵って♡」

「だって僕落ちこぼれだったからお母さん以外で頭撫でてくれる人いなかったし、誰とも手を繋いでくれなかったし…」

「「…」」

「あとお母さん死んじゃってから、抱き締めてくれる人いなかったから久しぶりに人に触られると、嬉しいけど照れちゃうんだ…ぅぶっ!」


突然エムエムはコタロー君の顔を胸に押し付け、思いっきり抱き締めた。


「本当に人との触れ合いに飢えてたなんて不憫な子!良いわよ良いわよ幾らでも人肌の温もりを提供してあげるわ♡」

「窒息死も提供する気ですか?」

「はぁ〜もう母性愛がドンドン湧いてくるわぁ♡」

「あなたにある訳無いでしょ、というか本当にそろそろ離れなさい」

「あら?焼き餅?」

「そうじゃなくて顔真っ赤にして静かになりましたよ?本当に窒息してるんじゃないんですか?」

「え?…あららちょっとやり過ぎちゃったかしら?」

「〜!!っ〜?!っ〜??!!っ」


コタロー君は色んな意味でオーバーヒートしてしまい、顔面真っ赤にさせ目を回してしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る