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中訓練所裏校門前
「…あっついのぉ〜、やっぱ兄者と一緒にクーラー効いた職員室にいた方が良かったかの」
夏休みが終わったとは言っても気候はまだまだ暑い日差しが降り注ぎ、額から汗が溢れ出しいくら拭っても止まる事がなかった。任務先の気候は年中凍える様な寒さで、真逆の気候に慣れた体には辛いもんがあった。
今からでも職員室に向かおうかと思い、今吸っている煙草を肺一杯に吸い込み吸い殻を靴の底で地面にすり潰す、訓練所に入ろうと職員玄関の方を見れば、兄が資料を片手に出てきた所じゃった。
「ん?おう兄者、もう始業式終わったんか?」
「いえ、まだ式の最中ですよ」
「ありゃ甥っ子は?連れて帰るんじゃなかったのか?」
「…今日訓練所に来てないそうです」
「え?何でじゃ?」
「それを確認する為にあなたの家に連絡を入れる所ですよ、ほら早く家に電話しなさい」
「おっ…おお」
ワシは兄に促され、近くの公衆電話に小銭を入れ自宅の番号を押した。
「鷲三携帯持つ気ないんですか?伍長以上からは軍から50%引きで配布されますよ?」
「あ?どーも携帯はドデカくてかさばる癖にボタンが小さくてのぉ、まぁ電話するしか使い道ないんじゃから、公衆電話で事足りるって………おおワシじゃ、今さっき帰ったわい…今?実は兄者と訓練所に甥っ子を迎えに来た所なんじゃが来とらんかった、どうした?熱でもあるんか?………何知らんじゃと!?」
「!?」
「どういう事じゃ!ちゃんと世話頼んだじゃろ?!………なに面倒見切れんかったから兄貴の家に置いて様子見していた?1年程度なぜ見れん「鷲三ちょっと変わりなさい」
「えっ!?」
甥を預かっている筈の家内からの、まさかの所在がわからないとの回答にワシは思わず声を荒げる。そんなワシの様子を見ていた兄が受話器を引ったくった。
「もしもしお電話変わりました鷹一です…ええお久しぶりです、実は私の養子になる筈だった子供を、私が戦争を終わらせ迎えに行くまで1年くらい面倒見て欲しいと、鷲三から連絡があった筈何ですがどういう事何でしょう?………え?聞いてない?てっきりウチで引き取るもんだと思ってた?」
「?!っ」
「すみませんこちらの伝達ミスです、なら子供は今どちらに?…そうですかあの家にいるんですか…という事は両親を亡くした仔供が唯一の頼れる親族に拒絶され、たった1人で寂しく住んでいるという事ですか…いえいえ別に奥さんを責めている訳ではありませんよ。それではそちらにあたってみます………鷲三?あなたまた大事な事を伝え忘れてましたね?」
あっヤバい、あれは本気で怒っとる時の目だ。
「さ…さ〜甥っ子が心配じゃぁ…兄貴の家に急ごう!」
「報告は細かく説明しろって何回言えばわかるんだ!!自分だけ理解してても、相手に伝わらなかったら意味ねぇだろぉ!!待ちやがれぇぇえええ!!」
「すまんかった!本気ですまんかった!!わかった説教大人しく受けるから、取り敢えずその刀閉まっとくれぇぇえええっ!!」
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