3
「失礼致します、コルヴォ様朝食をお持ち致しました」
「…」
部屋に入ればコルヴォ様は煙草を吸いながら、テレビを点け仕事机に資料を広げ新聞を読んでいた…情報収集は1つずつと何回言えばわかるのだろう?というかちゃんと頭に入ってるんですか?
『8時のニュースです、本日は9月1日夏休みが終わり訓練所や学校では始業式が行われ、今日からまた子供達が訓練所に通う姿が―――』
「コルヴォ様、どちらに置きましょうか?」
「ん?…ああ、ここに置いといてくれ」
声をかけようやく気付いたコルヴォ様は、広げていた資料を纏めスペースを作る、私は朝食の乗ったお盆を開いた場所に置いた。
『―――次のニュースです、ここ数日10件以上もの飲食店で起きている連続無銭飲食事件の犯人は、マフィアであるナイヤファミリーのボスである事が判明致しました、現在も逃走中であるため飲食店には注意を呼び掛け、警察では情報提供を…』
「なに?生きてたのか…」
「え?ナイヤファミリーは壊滅したのでは?」
テレビから流れるニュースに私は耳を疑った、ナイヤファミリーは一週間前にコルヴォ様自ら抗争に参加した相手だったからだ。
「…超能力並みの悪運の強い奴だったんだな」
「え?能力者じゃなかったのですか?」
「いや確かに能力者だった。しかし逃走には関係ない能力だった…組織を潰した後逃走した奴を追跡し、町外れまで追い掛け崖に追い詰める事が出来た。しかしトドメをさす直前に崖が崩れてな…あの高さでは助からんと思っていたがまさか生きてたとは…」
ナイヤファミリー
狙った獲物は必ず仕留め、その組織に睨まれた相手は恐ろしさ故、蛙の様に身動きが取れなくなる我らは蛇<ナイヤ>を名乗る集団。
…実際は戦争すれば必ず負ける程とことん弱く、マフィア界の中で最弱の部類に入る弱小ファミリーだ。
しかし幾度潰すが数日経てば直ぐ再建され、自分達を壊滅に追い込んだファミリーに報復しようと、何度蹴散らそうが卑怯な手を使いながらも挑んでくる。
余りのしつこさにノイローゼになり負けを認めた組織も少なくない、しつこさだけで相手に勝った功績から“しつこさだけは蛇の様だ”と称される様になった。
つまりは弱いが敵に回したくない相手である。
「めんどくさい相手を敵に回したもんですねぇ」
「逃がしてしまった以上、ヤツは再び力を付け報復すべくしつこく狙って来るだろう…紅菊、外出時には一応警戒する様に」
「かしこまりました」
「それから…様子はどうだ?」
「?…なんのですか?」
「ほら…あの子の怪我の具合はどうだ?」
「え?…ああ」
コタロー君の事を言ってるのだと気付く、というか何故そこまで聞きにくそうなのか?
「コタロー君の肩の傷ならだいぶ塞がり包帯が取れ、ガーゼを軽く当てる程度まで回復しました、もう動き回っても大丈夫でしょう」
「そうか」
「それでコタロー君に何させるんですか?」
「…なに?」
「いやだから、この組織で働かせる為に連れて来たんでしょ?具体的には何をさせるんですか?」
「…お前に任せる」
「え?」
黙り込んだかと思えばまさかの言葉、本当に何の為に連れてきたんですかと問い詰めたい。
「紅菊に懐いているみたいだしな…暫くはお前に任せる事にする」
「まぁ確かにコルヴォ様の事を異様に怖がっている様ですし、それが良いかもしれませんね」
「………私の姿はそんなに恐ろしいのか?」
「え?何を今更な事を言うんですか?」
「…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます