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「失礼致します、コルヴォ様朝食をお持ち致しました」

「…」


部屋に入ればコルヴォ様は煙草を吸いながら、テレビを点け仕事机に資料を広げ新聞を読んでいた…情報収集は1つずつと何回言えばわかるのだろう?というかちゃんと頭に入ってるんですか?


『8時のニュースです、本日は9月1日夏休みが終わり訓練所や学校では始業式が行われ、今日からまた子供達が訓練所に通う姿が―――』

「コルヴォ様、どちらに置きましょうか?」

「ん?…ああ、ここに置いといてくれ」


声をかけようやく気付いたコルヴォ様は、広げていた資料を纏めスペースを作る、私は朝食の乗ったお盆を開いた場所に置いた。


『―――次のニュースです、ここ数日10件以上もの飲食店で起きている連続無銭飲食事件の犯人は、マフィアであるナイヤファミリーのボスである事が判明致しました、現在も逃走中であるため飲食店には注意を呼び掛け、警察では情報提供を…』

「なに?生きてたのか…」

「え?ナイヤファミリーは壊滅したのでは?」


テレビから流れるニュースに私は耳を疑った、ナイヤファミリーは一週間前にコルヴォ様自ら抗争に参加した相手だったからだ。


「…超能力並みの悪運の強い奴だったんだな」

「え?能力者じゃなかったのですか?」

「いや確かに能力者だった。しかし逃走には関係ない能力だった…組織を潰した後逃走した奴を追跡し、町外れまで追い掛け崖に追い詰める事が出来た。しかしトドメをさす直前に崖が崩れてな…あの高さでは助からんと思っていたがまさか生きてたとは…」


ナイヤファミリー


狙った獲物は必ず仕留め、その組織に睨まれた相手は恐ろしさ故、蛙の様に身動きが取れなくなる我らは蛇<ナイヤ>を名乗る集団。


…実際は戦争すれば必ず負ける程とことん弱く、マフィア界の中で最弱の部類に入る弱小ファミリーだ。


しかし幾度潰すが数日経てば直ぐ再建され、自分達を壊滅に追い込んだファミリーに報復しようと、何度蹴散らそうが卑怯な手を使いながらも挑んでくる。


余りのしつこさにノイローゼになり負けを認めた組織も少なくない、しつこさだけで相手に勝った功績から“しつこさだけは蛇の様だ”と称される様になった。


つまりは弱いが敵に回したくない相手である。


「めんどくさい相手を敵に回したもんですねぇ」

「逃がしてしまった以上、ヤツは再び力を付け報復すべくしつこく狙って来るだろう…紅菊、外出時には一応警戒する様に」

「かしこまりました」

「それから…様子はどうだ?」

「?…なんのですか?」

「ほら…あの子の怪我の具合はどうだ?」

「え?…ああ」


コタロー君の事を言ってるのだと気付く、というか何故そこまで聞きにくそうなのか?


「コタロー君の肩の傷ならだいぶ塞がり包帯が取れ、ガーゼを軽く当てる程度まで回復しました、もう動き回っても大丈夫でしょう」

「そうか」

「それでコタロー君に何させるんですか?」

「…なに?」

「いやだから、この組織で働かせる為に連れて来たんでしょ?具体的には何をさせるんですか?」

「…お前に任せる」

「え?」


黙り込んだかと思えばまさかの言葉、本当に何の為に連れてきたんですかと問い詰めたい。


「紅菊に懐いているみたいだしな…暫くはお前に任せる事にする」

「まぁ確かにコルヴォ様の事を異様に怖がっている様ですし、それが良いかもしれませんね」

「………私の姿はそんなに恐ろしいのか?」

「え?何を今更な事を言うんですか?」

「…」

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