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「しかし明日から大事な任務…どうしても抜けられませんね」
「…あの子の事ならワシのかみさんに言って、少しの間世話する様に言っておくわい、なに1年くらいだし今更子供が1人増えた所で大丈夫じゃろう」
「それならお願いします」
本当は今すぐにでも甥を迎えに行きたかったが、今回の任務を大成させれば今度こそアレを手に入れられるかもしれないと思うと、どうしても任務を抜けられないと悩んでいたが、鷲三からの申し出に甘える事にした、第三者に任せるのは少し不安だったがこの場合しょうがない。
「鷹一軍曹!こっちの準備手伝ってくれ!」
「わかりました隊長、では連絡お願い致します」
「了解………ワシじゃ、そっちに帰るまでちょっと頼まれてくれんかの?実は兄貴の倅が訳あって両親が亡くなってしまっての、じゃから引き取って欲しいんじゃ………なに嫌じゃと?少しの間面倒見るだけじゃ辛抱せぇ、えーっと確か兄貴の倅の名は…何じゃったかの?」
隊長に声をかけられ甥の事を全て鷲三に任せてしまった、しかし弟の性格と悪癖を良く知る私にとっては痛恨のミスであり、結果その不安は見事的中するものとなったのだった。
×××
現在 テネブラファミリーのアジト20階の廊下
あれから早くも一週間が経過しました。
『おはようございます』
「…おはようございます」
私が部屋から出るとハタキを持った熊さんに鉢合わせ、朝の挨拶をするのが日課になっていた。なぜ熊さんが廊下を掃除しているのかというと、コタロー君が隣の部屋に来てから次の日にこんな事を言い出したからだ。
『ねぇ紅菊お姉さん、なにかお手伝いする事ある?』
『え?何故ですか?』
『だって僕仕事する為に連れて来られたのに、ずっと寝たきりでお世話して貰って色々良くして貰ってるのに、何もしないなんて悪いかな〜って思って』
『…一週間は絶対安静でベッドで寝てなくちゃならないから、どの道お手伝い出来ませんよ』
『あっそうか』
『あなたに何をさせるかは今後考えるとして、とにかく今は怪我を治す事に専念しなさい』
『うん…あっじゃあ熊さんを手伝わせてよ!それなら良いでしょ?』
『え?熊さんをですか?』
『良いよね熊さん、紅菊お姉さんのお手伝いしてくれるよね?』
『はい、マスターの御命令ならば』
『…まぁ良いでしょう』
とは言ってもぬいぐるみである熊さんに食器洗いや洗濯等の家事仕事はさせられず、ましてや事務的な事は任せられない、色々考え取り敢えず気になっていたが時間が無く、なかなか出来なかった廊下の掃除を任せる事にした。
熊さんに掃除をするのは20階だけでハタキをかけ、上の埃を床に落としてから掃除機をかける様に伝えた所、熊さんはちゃんと学習をし、私の言った手順で廊下の隅々まで掃除をこなしてくれました。
初日は半年分の溜まりに溜まった埃を被ってしまい「うわー熊さん真っ黒け!」とコタロー君に驚かれてしまった。先代の時は毎日下っ端に廊下掃除をやらせてたが、コルヴォ様がボスになってからというもの、10階以上の一切の立ち入りを禁止したのだからしょうがない。
「コタロー君、入りますよー」
取り敢えずドアをノックしてドアの隙間の影から部屋に入る、一応合い鍵は持ってはいますがこっちの方が楽だから荷物が無いときは基本的にドアは使わない。
寝室に入れば、コタロー君は毛布を頭まで被った状態で眠っていた…毎回毎回息苦しくないのか?
「起きてますかー?」
「………」
返事がない、まだ寝ている様です。
一応脱走してないか確認する為に、毛布を捲り中を覗いて見れば体を丸め寝ているコタロー君がいた。
「…」
口元に手を置けばちゃんと息している…窒息していないみたいですね、私は再び毛布を被せ頭上の電気を消し、カーテンを開ける。
時計を見れば7時過ぎ、本来なら子供はとうに起きている時間ですが…起こす理由も無いしこのまま寝かせておいて、朝食でも作りに行きましょうか。
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