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同時刻、日ノ本軍軍人養成中訓練所


「ふぁ〜あ…徹夜明けの帰還は辛いのぉ」


一年もの任務を終え、私は隊長に一声かけ帰省と共に甥を迎えに現在通っている中訓練所へと足を運んだ。その際鷲三も甥の顔が見たいと私の後を着いて来た。


「しかし兄者、なぜ迎えに行くのに訓練所寄る必要が?」

「何言ってるんですか、今日は二学期始業式ですよ?訓練所に来ているに決まっているでしょ、始業式が終わったらそのまま連れて帰るつもりです」

「あっなるほどのぅ…しかし懐かしいのぉ、昔とちっとも変わらんわい(キョロキョロ)」


私達の母校でもあるその訓練所を懐かしむ様に、鷲三は辺りを見渡した。


ゴスッ!!


次の瞬間、キチンと宿題を提出する私達と違い、良く宿題を忘れ教師に罰掃除をさせられていた裏庭に注意を逸らしていた鷲三は、額を勢い良く職員玄関のドアの縁へと強打した。


「!!っ〜いっつぁぁぁあああ!!?」

「あなたは職員室玄関の縁に顔面ぶつけられるくらい、馬鹿デカくなりましたけどね、カッカッカッカッ!!」

「くぅ〜っ…一気に目が冴えたわい!」


鷲三はぶつけた顔を抑えうずくまり涙を堪える、勢い良くぶつけた額はほんのり朱色に染まっていた。


「さて高笑いはこの辺にして、私は式が終わるまでの時間潰しとして、あの子の資料を貰いに行きますがあなたはどうしますか?」

「資料?」

「これから養子…つまり私の子供にする子の成績が気になりますからね。そしてもしおつむが足りない様なら、私独自の育成プログラムでも組んで立派に育てます…で?鷲三もついて来るんですか?」

「(なんか甥っ子が段々哀れに思えてきたのぉ)…ワシは外で煙草吸っとるわい、校門におるから終わったら呼んどくれい」

「わかりました」


私は鷲三を置いて、職員玄関に備え付けられているスリッパを借り職員室へと向かった。




「まったく、ドアの高さはもうちょっと高く作って欲しいもんじゃ…あっワシ等がデカ過ぎるのか…(そういや10年前に兄貴が死んでから、初めて嫁さんと甥っ子の事を知って会いに行った時はビビられて泣かれたもんじゃわい。昔はちびっ子じゃったが今じゃ背ぇ伸びて悩んどるんかいのぉ?)」


ワシは痛む額を抑えながら、初めて甥に会った時の事を思い出しながら校門へと向かう。




×××




朝食をとった後コタロー君の部屋に食器を取りに行く、部屋に入ればすでに食べ終えたのかコタロー君はじっと窓の外を眺めていた。


「コタロー君」

「!、紅菊お姉さん」


私に気付いたのかコタロー君は、こちらに振り向きテーブルの上から食器を持ってくる。


「ご馳走様でした」

「お粗末様でした、味はいかがでしたか?」

「ん?…うん美味しかったよ」

「?、余り美味しくなかったのですか?」

「ううん!すっごく美味しかったよ!」

「?」


明らかに微妙な反応をしていたコタロー君…もしかして苦手な物でも入っていたのでしょうか?


「好き嫌いがあったら言って下さい、わからない様に切り刻んで混ぜますので」

「…どうしても入れるの?」

「当たり前です、それで何が苦手何ですか?(やっぱり好き嫌いがあっただけか)」

「えーと…牛乳」

「え?牛乳ですか?」

「うん…何か変な味だから飲みにくいんだよね」

「訓練所では給食の時どうしてたんですか?」

「え?訓練所じゃ脱脂粉乳が配られてお椀に入れて飲んでたんだよ?脱脂粉乳も苦手だったけど栄養が高いから1日1杯必ず飲む様にって、残したら怒られるから我慢して一気飲みしてたよ」

「脱脂粉乳ですか…わかりました、次から牛乳にココアでも入れてきます」

「ここあ?あっあの脱脂粉乳の変わりにたまに出てくる茶色くて甘いやつ?」

「そうです」


牛乳に入れたらどんな味になるんだろー?と首を傾げるコタロー君…改めて華族と庶民の生活レベルの違いがよくわかる。


「(やはり私も元華族の娘だったのだと思い知りますねぇ)…それでは食器を下げてきますので、その間にそこに用意した着替えに着替えてなさい」

「うん!」

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