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「(…失敗した)」
俺は玄関のドアに寄りかかりながら座り込む、兎には通信機が内蔵してあって遠く離れていても、俺と連絡が取れる様になっていた。
でも充電の減りが早くなるから普段は通信を切っていた、気が動転していたとはいえ通信機の電源を入れ忘れたまま兎を中訓練所に向かわせてしまった…これでは兎が戻ってくるまでコタローがいるかどうかわからないじゃないかと、自分の愚かを呪う。
俺は立ち上がり居間がある窓の所へと移動する、中を覗き込みカーテンレースごしに時計を見れば、時刻は8時を少し過ぎていた。
「…(もう始業式始まってるんだろうなぁ、いや始業式なんてただ先生達の薄っぺらい話聞いて、夏休みの宿題提出するだけで授業ねーから別に良いけど。つーか元々訓練所なんて天才の俺には必要ねぇけどな)」
確かコタローの家から中訓練所まで15分で往復で30分、コタローの家から兎を送り出したのは…今からちょうど30分前だからそろそろ戻ってくる頃だな。
そんな事を考えながら俺は玄関に戻って座り込む。
「…(何で一週間もシーツ干しっぱなしなんだよ…いくら馬鹿でも雨降ったら洗濯物取り込むよな?つー事はやっぱりコタローは家に戻って来てないって事か、一週間も帰れないって事はやっぱり交通事故…あーもう!どこ行ったんだよあの馬鹿は!)」
最悪の展開が思い浮かび、俺は必死にその考えを振り払う、すると橋の方から複数人の足音が聞こえてきた。見れば数人の黒いスーツを着た、大人達がこっちに向かって来ていた。
「…な、何だアイツら」
近くにあった物置の後ろへと隠れながら、男達を見る。大人達は全員スーツを身につけ手には斧やナイフ、中には銃火器を所持している者がいた。
「(もしかしてマフィアか?マフィアって確か俺達訓練所の子供を攫って、拷問するのが好きな集団だっけ?)」
ビデオの内容を思い出して爪先が痛くなった気がして、握り拳を作って爪先を手の平に隠した。
「(でも何だってマフィアが、こんな所にいるんだ?もしかして空き巣…?)」
パリーーーン!
「?!」
男の1人が窓ガラスを斧で叩き割る、どうやら玄関のドアが開かないと判断した奴が、ベランダから侵入しようと割れた箇所から、窓の鍵を開けたようとしたようだ。
鍵を開ける事に成功し、鍵を開け中に入った奴に続き次々とマフィア達が家の中に入っていった。
×××
「無駄な抵抗は止めろぉ!怪我したくなかったら、大人しくしやが…あれ?家の中誰もいねぇぞ?」
ベランダの窓硝子を割り勢い良く中に入る。しかし家の中に住人が居ないのか返事が返ってくる事はなかった。
「え?何お前誰もいないのに怒鳴り声上げてたの?だっせぇ!」
「うるせぇ!…でも何で誰も家にいねーんだ?」
「ん?…なぁ俺は思うんだが」
「あ?どーしたよ?」
「確か今日って9月1日で、世間じゃ夏休みって終わってるよな?」
「それがどうかし…あっそっか!」
「あぁん?どうした?」
「いや昨日で夏休み終わって、今日から二学期じゃん?ガキは今学校で始業式に出てるんじゃねーの?」
「…あっ」
「えーじゃあどうすんだよ、肝心のガキいないんじゃぁ何しにここに来たんだよ」
「どーするって…ガキ帰ってくるまで、ここで待機するしかねーんじゃねぇの?」
「いや窓ガラス割って派手な音立てちゃったから、周辺の住人が通報しちゃうんじゃねーか?」
「ならさっさと退散するしかねーじゃん」
「でもこのまま引き下がったら、親分の機嫌悪くっちまうんじゃないんすかね、せめて金目のもん掻っ攫っていかねーと…」
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