第9話 忍び寄る蛇
闇の者は人外だから手を出すな
一体どこの馬鹿がほざいた言葉か知らねーが、能力者とは違う?…どう違うってんだ、ただ単に能力が血だとか骨だとか呪いだとか使うのが気持ち悪くて、同類と思われたくないから能力者達が分けたんだろ?
そう思って俺様はナイヤファミリーの名を上げる為、今マフィア界で名を轟かせている闇の者である〝闇鴉〟に手を出した。
その結果が…この様だ。
「くそっ…」
「…お前に逃げ場は無い、観念するんだな」
一体どうしてこうなった?
ナイヤファミリーとテネブラファミリーの抗争、最初は俺様達が優位だった筈だった。
俺様達がアジトにしている廃墟ビルの前、俺様は正面入り口の真ん前に縦横2メートルの落とし穴を作っていた…いや相手を罠に嵌める為の落とし穴じゃねぇ、俺様が隠れる為の穴だ。
裏門には厳重な見張りを置き正面入り口には落とし穴、それもわかりやすい様にビニールシートで蓋をしたお粗末な落とし穴だ…奴らはどっちから入ると思う?勿論表からだろ?現に「これって罠のつもりか?」と話し声が聞こえ、落とし穴を避けてアジトに入っていった。
正面入り口から入った場合、玄関ホールから他部屋には行けない様にドアノブを針金でグルグル巻きにしたりソファーで通せん坊して奴らを袋の鼠にしてやったよ、穴の中でテネブラファミリーの奴らがアジトに入ったのを確認し、俺様は勢い良く穴から飛び出してやった!
奴らの驚いた顔は本当に滑稽だったぜ…まさか落とし穴の中に大将が隠れてる何て、思ってもみなかっただろうからな!そして俺様は敵陣のど真ん中で俺様の能力を発動!一気に大人数を薙ぎ倒せる無敵の能力さ!!
俺様に近い奴からテネブラファミリーの奴が将棋倒しの様に倒れていって、あれは爽快だったなぁ…能力を発動させた後、手筈通りに裏門で待機していた部下達が一斉に正面入り口に攻め込み、奴らを一網打尽!…出来る筈だった。
「黒羽の弾丸」
ヒュッ…ババババババババババッ!!
一瞬の出来事だった、何が起こったのか今でも良くわからねぇ…突然ソフトボール位の黒い球体が弾丸の様に飛んで来て、裏口から駆け付けた部下が全員吹き飛ばされたからだ。
「柄蛇よ、それがお前の戦略か?」
声をする方を見りゃ、テネブラファミリーの奴らが乗ってきただろう車の前で、闇鴉が左腕をこっちに掲げながら立っていた。
「なるほど、敢えて幼稚な罠を使い油断を誘ったか…実に卑怯者が考えそうな戦略だな」
「くっ来るんじゃねぇ闇鴉!おい!おめぇら倒れたテネブラファミリーの奴に、銃を向けろぉ!人質にするんだぁ!」
俺様が指示を出すと2階で待機していた部下が、頭上から倒れているテネブラファミリーの奴らに銃を構えた…が
ガシャガシャ!ガラッガラガラガシャン!
次の瞬間、闇鴉がまた黒い球体で2階にいる奴らを吹き飛ばし、上から銃が雨の様に降り注いできた。
「近付くな?…私の方こそ、お前の能力の射程距離に近付くつもりは無い」
そこからはテネブラファミリー…いや闇鴉が圧倒し形勢逆転された。俺と闇鴉の能力の相性が悪かったのもある。
だが…それ以上に………っ
「威力も連射速度も操作性も桁違いってどういう事だぁぁあああ?!有り得ねぇだろぉぉおおお!!」
俺様の自慢の部下は全員倒され、逃走経路に張り巡らせた罠も、全て薙ぎ倒された…圧倒的の一言に尽きた。
そして俺様は今崖っぷちに追い詰められ、窮地に立たされていた。
「くそっ…」
「…お前に逃げ場は無い、観念するんだな」
「てめぇこの野郎!何なんだその強さは!幾ら何でも能力者との差がありすぎんだろ!!それともあれか?人間から産まれちゃいるが妖怪か悪魔か何かなのか?!え?!!」
「…私は憎しみを力に変える能力を持つ、普段は抗争の際に生ずる他者の憎しみを使う…だが今の私達は貴様を心底憎み、その憎しみを力としている」
そう言うと闇鴉は、体中から黒い湯気みたいなものを立ち上らせ纏わせる…あの黒い靄が、力にした憎しみって奴なのか?
「な…何だ、そんなに暗殺されそうになったのが気に入らなかったっつーのか?」
「…お前は私の愛する者が眠る霊園を荒らし、あの子を傷付けた。私とクロウは決して貴様を許しはしない」
「誰だよクロウって…(だが墓場荒らしただけでこんなに強くなるもんなのか?)」
「貴様のせいだ…私は『ボクは』貴様『オマえ』を絶対に許サない」
「?!」
闇鴉の声が何か別の声と混ざって聞こえた、幼い子供の声を嗄れさせた様な…背筋が寒くなる気味の悪い声だった。
「な…何だお前…くっ来るな!寄るんじゃねぇ!!」
『…おマえなんかシんじャエ』
「うわぁぁああああああ!」
闇鴉を纏っていた靄が球体となって、マシンガンの様に俺様の身に降り注ぐ、当たったらただじゃ済まないと必死に避けている内に、崖から嫌な音が響き渡り…崖が崩れた。
「しっ死んでも悪霊としててめぇを呪い殺してやるぅぅぅううううう!!」
崖から転落した俺様は木々がクッションとなり、奇跡的に生還した…散らばった仲間を集め、着々と闇鴉に復讐する計画を練った。
その計画の一つとして霊園にいたというガキを、自分と関わったせいで殺されたのだと、闇鴉の目の前で八つ裂きにする案が採用され…ガキの家を突き止めた。
「…本当にここか?」
「へい!この住所で間違いありやせん!」
「何だってこんな住宅街から離れた所で暮らしてんだ?しかも地図を見る限りかなり広い土地に住んでやがる」
「もしかしたら、金持ちのお坊ちゃまだったのかもしれやせんよ?」
「なるほどな…なら俺達の計画を邪魔した迷惑料として、ガキの誘拐に加え金目のもんも全て掻っ攫うか!」
「了解しやした!」
「なら早速出ど「いや親分は怪我人何すからここで待機しててください!俺達だけで行ってきやす!」
「ん?そうか?ならとっとと行け!!」
「行くぞ野郎共ー!」
「「「「おー!」」」」
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