第15話 サインペン
とある闇の記憶
わたしはだれもいないさみしいところでうまれた
からだをもたないでうまれたわたしはさむさからみをまもることができなくてとてもさむかった
わたしはさむいのはいや、さびしいのはきらい
だからわたしはあたたかいところをさがした
さみしくなくてあたたかいところをさがしているとやさしいこえがきこえてきた
こえがきこえるばしょにいくとそこにはあたたかそうなおなかのなかにいるおんなのことおなかをなでながらやさしいこえをかけるおんなのひとがいた
いいな、いいな、わたしもいれて
わたしはおんなのこにおなかにいれてもらえるようにおねがいした
“いいよ、こっちおいで”
おんなのこはわたしをうけいれてくれて、わたしはおなかのなかにはいった
そこはとってもあたたかくて、おんなのこがずっといっしょにいてくれて、おんなのひとのかけてくれるこえがすっごくやさしくてしあわせだった
おんなのこはおんなのひとはわたしたちの“おかあさん”なんだとおしえてくれた
おかあさんはわたしたちがはいっているおなかをなでてやさしいうたをうたってくれてはやくわたしたちにあいたいってこえをかけてくれた
おかあさん、わたしたちもおかあさんにあいたいな
しばらくおなかのなかにいるとからだのないわたしはとけておんなのこのからだとわたしがまざりあってひとつになった
わたしとおんなのこはわたしたちじゃなくってわたしになった
おかあさんがわたしがはいったおなかをなでてもうすぐあえるねっていっていた
うれしいな、うれしいな、はやくおかあさんにあいたいな
どん!
でもあるひ、おかあさんがたかいところからおとされた
おかあさんはわたしがはいったおなかをかかえておちていった
どすん!!
おかあさんのからだがじめんにうちつけられた
いたい、いたい、くるしいよ、おかあさん…おかあさん?
「だ、大丈夫?私の赤ちゃん…ああ神様…私はこのまま死んでもいいから…せめて、せめてこの子だけは…私の、赤ちゃん」
そういっておかあさんがまぶたをとじるとおなかをなでるてのうごきがとまって、おかあさんのからだはどんどんつめたくなっていった
おかあさん?おかあさん!
どんどんおかあさんのからだがつめたくなっていく、いやだ!いやだ!おかあさん!おかあさん!!
わたしは、おかあさんのからだがこれいじょうつめたくならないようにわたしのからだをとかしておかあさんにとけこませた
つめたくなったからだにわたしをながしこんでおかあさんのからだをあたためることができた
おかあさんにあえなくなったけど、おかあさんがまたあたたかくなってわたしはうれしい
そのおもいをさいごにわたしのいしきもおかあさんのなかにとけてなくなった
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