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「コルヴォ様、何時にコタロー君を送り出すのか聞いていませんで…『だかラとおくカラ!ひとメだけでモイいから、ミニいこうヨ!』

「い、いや駄目だ!」

『ドウしてさァ!こルヴォだっテ、アイたいデショ!?こっソリみるだけデモいいから…』

「兄さんは隠れん坊でいつも私を見付けるのが上手かったから、直ぐ見つかるに決まってる!だからあの子を送り出す役目は他の人に任せる!」

『コるヴォのごうじョウっパリ!』

「クロウの我が儘っ子!」


部屋に入るとコルヴォ様と、嗄れた子供の様な声が言い争う声が聞こえてきた。


「コルヴォ様!?一体何事ですか!」

「『!?』」


私がただ事では無いと思い部屋に飛び込む。しかしそこにいるのはコルヴォ様1人だけで、そこに第三者の姿は見当たらなかった。


「べ、紅菊か…どうした?」

「コルヴォ様の方こそどうしたんですか?」

「別に…どうもしないが?」

「いや今明らかに言い争う声がしたじゃないですか、一体誰と会話してたんです?」

「いやその…誰もいないが?」

「嘘おっしゃい!」

「…」


流石にあんだけ大声で喚かれたら無視出来る訳が無い。そう思いコルヴォ様に詰め寄ると彼は何を思ったのか机の横にあった紙袋を手に取り、左手で中を探る。


「実は…ちょっと腹話術の練習を…」

「はぁ?」


突然何を言い出すんだこの人は、呆気に取られているとコルヴォ様は紙袋の中から、茶色い鳥のぬいぐるみを取り出した。


「ほらクロウ、ご挨拶は?」

『こ、こんニチハ!ぼくクロう!キクちゃんナカヨくしてネ!』

「…」


コルヴォ様が鳥のぬいぐるみを私に向かってお辞儀させる、すると先程聞こえた嗄れた子供の声がぬいぐるみの方から聞こえてきた。


「…意外と上手ですね」

「だ、だろ?」

「裏声はちょっと不気味ですけど」

「…ごほん!ところで紅菊、何しに来たんだ?」

「…光太郎君を何時に伯父のもとに連れていくのか、聞きに来たんです」

「そうか…準備が出来次第送ろうと思う。それであの子を送る役目だが私はちょっと忙しくてな…紅菊、あの子の見送りを任せて良いか?」

「下手な腹話術の練習するのに忙しいんですか?」

「…」

「わかりました、コタロー君の準備が整い次第駐車場に連れて行きます」

「…頼んだ」


…私は本当に今後コルヴォ様に仕えて大丈夫何だろうかとちょっと不安に思いつつ、私はコルヴォ様の部屋を後にした。




「…」

『…こるヴォ』

「何だ?」

『ワガままいっタリ…ハズカしい、オもいさセてゴメンね?』

「いや、良いんだ…私もちょっと言い過ぎた」

『…セッカくコウたろうくンニ、かっテアゲたぬいぐルミ、わたシそこねチャッたね』

「…」


先日仕事先でこの雀のぬいぐるみを見掛けた時に、熊のぬいぐるみを従えるあの子はきっと柔らかいぬいぐるみが好きだろうと思って買って来た。


だが私が手渡ししたら怖がって受け取らないだろうと思って、寝ている時にこっそり枕元に置こうと思ってもあの子はここに来てから毎夜泣いていて、泣き疲れて眠った後も涙でぐしゃぐしゃになっているだろう寝顔を見れなくて、あの子の寝室には入れずに渡しそびれてしまった。


「…クロウ、このぬいぐるみはお前にやる」

『…うん、ありガトうコルヴォ』


私の心情を察したクロウは寂しそうに、雀のぬいぐるみを抱きしめる。


私の血肉とクロウの闇が混ざり合って、構成された左半身はしっかりと私にも、そのぬいぐるみの柔らかさを伝えてきた。

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