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「それからね…みんな僕の事を無視する様になったの」
「…」
カンニング不可能な状況で出した高得点。
それは彼が天才である事を証明するものだった。
落ちこぼれ達には羨ましくて、眩しすぎて、妬ましい存在。
「話かけても誰も返事してくれないし、話し掛けてこなくて無視するし…僕独りぼっちになっちゃった」
「ん?一年の中間テストで発覚したんですよね?なのに何故二年でI組みにいるのです?」
「僕軍人にならないから高訓練所に入ったら、一般人コースに入る予定だったから三学期のテストは、両方とも30点しか採らなかったの」
「一般人コース?軍人になるつもりはなかったのですか?」
「うん、僕お父さんが偉い軍人だったからって、訓練所に通ってただけだから。…それに僕鈍臭いから軍人になってもみんなの足引っ張ちゃうと思って、一般人コースに入っておもちゃ屋さんとか洋服屋さんになるつもりだったの。だからF組み以上に行っちゃうと、一般人コースに入れなくなっちゃうし、I組みなら強制的に一般人コースに入れられるから…」
「なるほど…しかし父親や周りは何も言わなかったのですか?偉い軍人という事は周りは軍人になる事に期待し、大抵の父親は自分がひいたレールの上を歩かせたがるものなんですが」
「お父さんは5年前に戦死しちゃったんだ。先生達も最初は僕にも期待してたけどお父さんが死んだ後は『父親と同じ期待外れな子だ』って、僕が一般人コース選んでも何も言ってこなかったんだ」
「つまり父親が死んでから母子家庭だったんですか…ん?母親が死んだ後はどうされたのです?」
「僕1人で生活してた」
「…っはぁ?!」
コタロー君のサラリと放った一言に、思わず変な声を上げてしまった。
「子供1人でどうやって?!」
「軍人を家族に持った人は、その人が軍で戦死した場合は軍から補助金が出るから、お母さんと一緒にそれで生活してたんだ、食べ物がすっごく高くなっちゃったけど贅沢をしなきゃ何とか生活出来る金額だったし…お母さんが死んだ後は、家の事全部僕がやってたんだ」
お母さんのお手伝いいっぱいしてて、良かった〜と明るく話すコタロー君…明るく話せる内容ですかソレ?
「引き取り手はいなかったのですか?」
「うん、あの流行病のせいで孤児院はどこもいっぱいだったし。…あっお母さんが死んで一週間くらいして、初めて叔父さんのお嫁さんが来た事があったけど」
『ごめんなさぁ〜〜〜い、ウチ子沢山で光太郎ちゃんの寝る所ないし、定期的に様子見にくるから今まで通りこの家で生活して貰えるぅ〜?光太郎ちゃんも慣れ親しんだ家から離れるの嫌でしょ〜?』
「って…でもそれ一回きりでおばさんが家に来た事なかったけど」
「ぅわあ…最低ですね」
「でも叔父さん夫婦の所には5人も子供いるからしょうがないと思う」
「良く生きてこられましたね」
「うん…前までの頭悪い僕だったら無理だったね、最初は図書館で色んな本を読んで生活していく為の知識を学んでいったな〜…それで熊さんを作ったきっかけになったのはね、2年の一学期の頃に図書館である男の子と出会ったからなんだ」
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