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藍ちゃんの声に兄を見れば、管理小屋を見てなにやら真剣な表情をして、何かブツブツ呟いておった。
「…何処が足を洗ったんでしょうねぇ」
「?」
「堅気のする表情じゃないですよ本当」
「兄者?どうしたんじゃ?」
「管理人が望遠鏡を使い私達を観察しながら、何処かに電話しようとしてるんですよ」
「「!?」」
「鷲三、藍雨と向き合い話し込むフリをし、私の視線を隠す死角になりなさい」
そう言って兄はワシを使って、管理小屋から隠れながら、管理小屋を覗き込んだ。
「何するのー?」
「読唇術ですよ、唇を読んで管理人が何を話しているのか探ります」
「あーあれか、あのもにょもにょ動く唇を見て何言っとるのか探る奴じゃろ?ワシ全然わからんのに、兄者凄いの「話し掛けないで下さい」おっおう…えーっと、藍ちゃんは好きなお花はなんじゃ?」
ワシがぎこちなく藍ちゃんに話し掛けると、くすくす笑われながら「向日葵だよー」と答えられた。
「ねー鷹さん、管理人が何言ってるか教えてくれたら嬉しいなー」
「勿論です…『もしもしボス、坊ちゃんの親族を名乗る軍人達が坊ちゃんを捜索しております…容姿ですか?2人共2メートル近くの大男で、茶色い髪をしていました』」
「読唇術ってそこまでわかるんだねー凄いなー…」
「兄者は暗殺兵のエキスパートだからの…ん?」
ふと視界の端に茶色い何かが動いとるのが見える、何だろうとワシはその茶色い物体を目を凝らしてみた。
「『…え?それは本当ですか?今彼等は「兄者、藍ちゃん…あそこに熊がおる」…は?」
「え?」
茶色い物体の正体は熊じゃった、しかも小さいぬいぐるみ。
ぬいぐるみで出来た熊は何かを探すかの様に周囲を見渡し、時に植木の中に入ったりとあちこち動き回っておった。
「えーどこどこー?」
「ほらあそこの赤い花の植木、何か探しとる感じじゃのう」
「あっ本当だー…こんな真っ昼間からお化けかなー?」
「『…そうですか、ならば一応明日も訪れるか尋ねてみます』…藍雨、帰り際に管理人に明日も来る事を教えておいて下さい」
「え?」
「そしてもし、明日この霊園に甥が姿を現す事があればそちらで保護をし、こちらの番号に電話をかけて下さい」
再び管理人の方を見ていた兄者が、懐から名刺を取り出し藍ちゃんに渡した。
「なにコレー?」
「緊急連絡用の私の携帯の番号です、但し甥が姿を現した以外で電話する様なら、叩き斬りますからね」
「有り難いけどおっかないなー」
「…ありゃ?熊は何処に行った?」
2人のやりとりを余所にワシが視線を戻すも、そこに熊のぬいぐるみの姿は無かった…あの甥っ子の友人も動く兎のぬいぐるみを持っておったし、世間では流行っておるのかのう?
×××
部屋の掃除を終えコタロー君に3時のおやつを食べさせた後、肩の傷はまだ完治しているとは言えないので大事を取ってベッドで休ませて(お布団に入ったら数分で眠りに着いてしまった。寝付きが大変よろしい子ですね)コルヴォ様の部屋に食器を取りに行くと、中から何か話し声が聞こえてきた。
『――がきタの?』
「ああ」
『それジャあオワかレ?』
「…そうだな」
『そンなのサみシイ』
「仕方がないだろう、裏社会は危険な所なんだからあの子の幸せを思えば『コルヴォはキョうだイタチにアワないの?』
「…会えない、な…今の私の姿を見て、何故こんな体になったのかを知った時の事を考えてたら、私は会うべきではない」
『…そうだヨネ』
…コルヴォ様は何を小さな声でブツブツ呟いてるんでしょう?
何を言ってるのか全然聞き取れませんし、誰かいるのかとそっと中を覗いて見てもコルヴォ様以外に姿は見えず、彼は窓際に立ち何やら呟いていた、上司が独り言を言う姿を目撃してしまった場合は、どのような態度で接するべきなのでしょうか?
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