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コォン!コォン!コォン!


「失礼しますコルヴォ様、食器を片付けに参りました」


私はコルヴォ様の独り言を見なかった事にして、一度閉めたドアに存在を主張する為に何時もより強めにノックし部屋に入る。中から何やら慌ただしい物音が聞こえ部屋に入って見れば、コルヴォ様は仕事机に向かい、受話器を片手に持っていた。


「…何やら話し声が聞こえたのですが?」

「あ、ああ…電話中だった」

「…そうですか(先程の独り言は電話中だったとごまかすつもりなのですね?しかしコルヴォ様…受話器が逆さまです)電話中に失礼致しました」


思わず零れそうになった言葉を飲み込んで、私はおやつが乗っていた食器を手に取りコルヴォ様に礼をして、部屋を後にした。




『アぶなかっタネー』

「…」

『キクちゃんにバレチャうとこロダッタね』

「…クロウ」

『なぁに?』

「紅菊には話さないか?クロウの事」

『…ダメ』

「クロウ、彼女なら大丈『またコルヴォがミンなにきらわレチャう。ボクはコルヴォとおはナシできれバ、ソれでいい』

「…そうか」


クロウは優しい子だ。


人は私がクロウと会話している所を見ると決まって気持ち悪がられる。本当は話しをするのが大好きなのにクロウは私が嫌われるのを悲しんで、いつしか人前では話しかけなくなり隠れる様になってしまった。


人の為に悲しめる子の、何処が気持ち悪いというのだろうか?


私はクロウの頬を指で軽く撫でてやりながら、今日のおやつに出してくれたモンブランの話をした。




×××




「結局、なーんも手掛かりみつからなかったねー」


カルルス霊園で甥の手掛かりを探すも、制限時間である3時を迎えてしまったワシ等は捜索を断念し、管理人に明日は藍ちゃんだけで来る事を伝えて霊園を後にする。霊園に来た時同様日ノ本軍までは藍ちゃんにパトカーで送って貰える事になった。


「甥っ子の墓参りから1週間経っとるからのう、血の跡も見当たらんし抗争の後は掃除されたんじゃろうなぁ」

「そうだねー…それにしても、やっぱり軍勤めって大変なのかなー?」

「…」


藍ちゃんの言葉にワシはそっと後ろを覗き込む。日ノ本軍まで1時間くらい掛かるからその間に仮眠を取ると、兄は後部座席で瞼を閉じて寝息を立てて眠っておった。


「今日ノ本軍は流行り病と、白昼堂々の自殺のダブルコンボで軍人が減って大忙しじゃからのう。日ノ本軍に着いたら今回の任務の報告と、今後のワシ等の仕事の説明を受けて欠けた分の仕事をワシ等でやったりと、大忙しじゃから眠れる時に寝た方が良いんじゃよ」

「鷲さんは寝ないのー?」

「ワシは日ノ本に帰還しとる最中に、たっぷり寝たから眠とうない」

「そんなに忙しかったら、明日の報告は辞めとくー?」

「いや明日は任務で成功した褒美として昼で仕事が終わって、ワシ等の小隊で祝杯あげるからワシは体力有り余っとるし、兄は飲み会抜け出して仮眠とるじゃろうし大丈夫じゃ。それに兄弟揃って国に帰れたってお祝いしたいから、明日は必ず飲み屋に行くから、藍ちゃんも来とくれ」

「りょうかーい」

「…ん?」


ふと窓の外を見ると横の列を走っとる車の後ろのナンバープレート辺りに、霊園で見た熊のぬいぐるみが引っ掛かっとるのが見えた。片手はナンバープレートを掴みもう片方の手は紺色の丸い物を抱えておって…その熊のぬいぐるみを引っ掛けた車は、次の信号で左折して見えなくなった。


「どうしたのー?」

「いや…何か変な物が見えた気がしたんじゃ」

「変な物ー?」

「実は…」


ぐーぎゅるるる…


「「…」」

「…そういや昼飯食べとらんのう」

「なら次に何かお店見つけたら何かお昼ご飯食べようかー」

「そうじゃのう…あっあそこにお店ある!」


ワシが指指すと藍ちゃんはその店の駐車場にパトカーを停まらせる、寝とる兄の分もテイクアウトするとしようかのう!

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