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巡査部長を置いて兄の家から離れ暫く歩いていると、ワシは沈黙に耐え切れなくなり兄に話し掛けようと試みる。
「…兄さん、甥の行方はわかったのか?」
「…カレンダーに『カルルス霊園にお母さんの墓参りの日』と書かれていました、足取りを探る為にそこに行こうと思います」
「カルルス霊園?兄さんカルルス霊園といえば確か…「鷲三、その呼び方は子供っぽいから嫌い何じゃなかったんですか?」!っ…兄者」
「…」
「…あっ兄者!兄者!あそこにあるの駄菓子屋じゃないかの!?」
ワシは歩く先に見慣れた駄菓子屋を発見し思わず駆け付ける、そこには10年前と何ら変わり無い品揃えで駄菓子屋さんをやっておった。
「おー懐かしいのう!まさかまだやっとるとは…」
「あなたねぇ、先を急いでるって「兄者見とくれ!鳥の羽バッチがまだ売っとる!」
ワシは紙箱に入っとる鳥の羽型バッチを手に取り眺める…一個500円の100種類の鳥の羽がデザインの小さいながらもしっかりした作りのそのバッチは、ワシ等の名前の鳥の羽が全員分あるからと誕生日に父親にせがんで買って貰ったもんじゃ。
…弟のバッチはワシ等が金を出し合って、残り1つを買って揃えたんじゃったな、懐かしいのう。
「おんやぁお客さんかい?」
不意に店の奥からお婆ちゃんの声が聞こえてくる、見ればワシ等が軍に行ってから変わっとらん姿の駄菓子屋の婆ちゃんが出てきた。
「婆ちゃん!まだ生きておったのか!」
「ふぇっふぇっふぇっ、子供達がお菓子を買いに来る限りわしはまだまだ元気でよぉ…大きくなったのう鷲ちゃん」
「いやー10年経っても変わらんのう…というか子供の時から変わらんが、婆ちゃんいくつ何じゃ?」
「ふぇっふぇっふぇっ、女子の歳は聞くもんじゃないでーよ…おやそこにおるのは鷹ちゃんかい?」
「…どうも」
「ありゃまあ鷹ちゃんたらかっこよくなって…軍人さんなるとみーんな顔付き変わるもんじゃが、鷲ちゃんは昔のままじゃのうええ事じゃ、そういやあわしの孫何か軍に行ったきり手紙も寄越さんと今頃何をやっとるのかねぇ?」
「は?婆さんのお孫さんはとっくの昔に戦「そーじゃ婆ちゃん!アイスくれアイス!」
「おうおう好きなだけ買って行きな」
ワシは余計な事を言おうとした兄を軽くどつきながら、アイス売り場に行き蓋を開けて中を覗き込む、アイスの品揃えも変わらんくて懐かしい気持ちでいっぱいになる。
手前の方に見慣れた水色のパッケージを発見し、ワシは思わずそれを手に取った。
「おおこりゃ縦割りアイスのソーダ味!婆ちゃんこれ一個貰うわい!」
「あいよう…おや、このチョコアイスはいらんのかい?いっつもそれと一緒に買っとるじゃろ?」
「「…」」
「いっつもその2つ買ってジャンケンしてどれ食べるか決めてたじゃろ」
『あー!綺麗に割れんかった!兄さんの分が多くなってもーたぁ!』
『下手くそ』
『兄さーん、兄さんのアイス一口食べちゃいかんかのー?』
『駄目に決まってんだろ』
『けちん坊ー』
『うっせぇ綺麗に割らん方が悪いんだろ、良いからさっさと寄越せ溶けちまう』
『鷲三、僕のアイス一口食べる?』
『えっほんまか!』
『おい鷲三を甘やかすな、昨日は一人勝ちでチョコアイスだったんだからこれで良ーんだよ…さっさと食わねーと俺が全部食っちまうぞ!』
『『…はーい兄さん』』
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