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『マスター、ギュウニュウヲ、オモチイタシマシタ』
「…」
俺は兎から牛乳を受け取って、コップに入れて一気飲みする。
あの後の事は実は良く覚えてない、頭に血が上って感情の赴くがまま怒鳴り散らして、コタローを傷付ける様な事を言ったんだと思う。
『…うん、わかった』
じゃなかったらあんなに泣きそうなのに、無理して笑いながら俺の前から姿を消したりしない、あれから8日間コタローは俺の家に来る事はなかった。
『マスター、アサゴハンヲタベナイト、ノウノハタラキニ、エイキョウガデマスヨ』
「…おう」
兎はコタローが俺の旧パソコンに残していった、プログラムをもとに作成したA・Iだ、そのまんま使うのは俺のプライドが許さなかったから、俺の技術を駆使して改良させた。
…兎の言葉が片言なのは昨日完成させたばかりで、まだ喋り方とか学習させてないからだ、決して改悪な訳では…無い。
あれから毎朝ニュースをチェックして、中訓練所の生徒が自宅で餓死したとか、何か事故に巻き込まれたという報道は無いから大丈夫な筈だ、傷付けた手前電話何て出来なかったから、コタローの生存確認をする手段はそれしなか無―――。
『続いてのニュースです、第A級部隊が昨夜任務を終え帰還、任務は大成功とのです!専門家からの指摘によりますと、来週辺りから食物の物価が下がるとの見通し―――』
「ん!?」
『?、マスタードウカイタシマシタカ?』
「あ…いや、何でもない」
ビックリした…A級部隊の顔写真が映った瞬間コタローが映ったのかと思った。でも良く見たら違ったし何より2人いる。
「(他人の空似か?顔立ちは良く似ているけど相手はおっさんだし、何より目元が全然違う…あの馬鹿帽子で目元隠したって、目線が俺みたいな低い相手だったら丸見えだって、事気付いてねーんだろうな)」
『A級部隊には紅蓮の先導者である隊長を初めとし、双子の英雄である鷹の目兄弟が―――』
「(双子?…ああだからこのおっさん達、顔が似てるのか)」
「あら才雅ちゃんご飯食べ終わったの?そろそろコタローちゃんが迎えに来る時間じゃないかしら?」
「えっ…ああ、うんそうだね」
「そういえばコタローちゃん、夏風邪ひいてるんですって?大丈夫なの?」
母さんにはコタローが家に来ないのは、風邪をひいてるからって事にしてある。
「…うん、昨日電話したら今日学校行けるってさ、でも俺に迎えに来て欲しいって言ってたから俺もう行くね」
「あらそう、でも才雅ちゃんに移ったら大変だから、暫く会いに行かない方が良いんじゃないの?」
「…だっ大丈夫だよ!電話越しだったけど元気そうだったし、それに俺お母さんの栄養満点料理食べてるから、夏風邪何て移る訳ないよ!」
「それもそうね」
母さんは納得した顔で、俺の頭を撫でて再び身支度をし始め、俺も身支度を済ませた。
「お母さん今日用事あるから、お昼ご飯はレンジでチンして食べてね?帰りケーキ買って帰るからお利口にしてるのよ?」
「うんわかった!あっケーキはコタローと一緒に食べるから2人分ね?」
「わかったわ!いってらっしゃい我が家の大天才ちゃん!」
『先週カルロス霊園が荒らされた事件、新しく入った情報によりますと霊園でマフィアの抗争が起こったものであると判明致しました。抗争を起こした主格犯の組織は連日無銭飲食事件の容疑者である、ナイヤファミリーのボスである事が判明、抗争相手は未だに不明ですが引き続き調査を―――』
リモコンでテレビの電源を切り、俺は兎を連れ外に飛び出した。
「いってきまーす!ほら行くぞ兎!」
『カシコマリマシタ』
今日、コタローに謝ろう。
謝ったら俺を苛立たせた罰に一発蹴りを入れてランドセル持たせて、帰りもランドセル持たせてケーキを食わせてやれば、単純なアイツは俺を許してくれる筈だ。
前みたいに一緒に遊べて、全部元通りになる筈だ。
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