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『あれ?』

『よう、馬鹿』


その子が僕の設計図を見ながら僕の席の隣に座ってたんだ。


『お前荷物そのままで席離れるなよ、狙われてたぞ?』

『え?財布入ってないのに?』

『財布入ってるか入ってないかわかる訳ないだろ…取り敢えず盗んどいて、人気ない場所でじっくり物色すんだよ』

『あっそうか』

『それともこの鞄と中身捨てられても良かったのか?』

『ううん、そんな事ないよ…鞄守ってくれたの?』

『別にー…たまたまこの席に座っただけだ』

『ありがとー』


お礼を言って席に座ったんだ、今度は逃げないで僕の設計図見ながら座ってたの。


『…なぁ、なんでお前I組みにいるの?』

『え?』

『最初なに落書きしてんのかと思ったら…こんなの平均点数40点以下の馬鹿に書ける訳ねぇだろ』

『…うん、半年前の僕だったら無理だったね』

『はぁ?』

『僕ね、1年前の流行り病で熱が出てから頭良くなったの』

『はぁあ?お前1年前のって言ったら脳みそ溶けるヤツだろ?何で頭良くなるんだよ』

『さぁ?僕にもわかんない』

『なんでもう馬鹿じゃないのに、馬鹿って言われて怒らねーんだよ』

『今まで馬鹿って言われてもしょうがなかったからねー、慣れちゃった』

『…バーカ、なぁまじで親いねーの?』

『うん、いないよ』

『ふーん…あっそ、じゃあな』


そう言ってその子は図書館を出て行っちゃったの、それで次の日の下校時間にその子が、中訓練所の校門前に立ってたんだ。


『あれ?君…』

『やっと来たか、ホレ』


その子に近付いたら突然ランドセル渡してきて、どんどん歩きだしちゃったんだ。


『え?これなに?』

『俺んちまで持って来い』

『…うん、わかった』


しばらくその子のランドセル持って、隣に並んで歩いていたら話かけてきたの。


『…なぁ、何でお前怒んねーの?』

『え?』

『普通突然ランドセル渡されて持てって言ったら怒るだろ』

『子共は甘えるのがお仕事なんだって、だからコタローも沢山我が儘言って良いのよーってお母さんが言ってたんだ』

『ふーん…お前は甘えなかったの?』

『僕ねぇ、お父さんが死んじゃって泣いちゃったお母さん見て、しっかりしなきゃって甘えられなくなったんだよね、死んじゃう前にもっと甘えとけば良かったなー』

『…両親死んだのに何でそんなヘラヘラしてんの?やっぱりバカなの?』

『ん?んー…お母さんがね、泣くのは甘えられる人がいる時だけにしなさいって、誰も助けてくれない1人の時は我慢して頑張って、甘えられる時に溜めてた分沢山泣きなさいって言ってたの』

『ふーん…俺の親とは大違いだ』

『え?』

『着いたぞ』


話をしている内にその子の家に着いちゃって、ランドセルをその子に返そうとしたら


『部屋まで持ってくんだよ、良いか?部屋に着くまで絶対喋るんじゃねーぞ?』

『え?』

『ただいまー』

『あら才雅ちゃん、お帰りなさぁい』


その子のお母さんが玄関まで小走りで走ってきたんだ、そのお母さん顔にすっごくお化粧つけて唇が紫色で顔真っ白で、魔女みたいな顔で離れてたのに凄くラベンダーの匂いがしたんだ。


『さいがちゃん?』

『俺の名前、良いから黙ってろ』

『あらぁ才雅ちゃん?後ろの子はだあれ?』

『こいつひのした光太郎、中訓練所のS組みの奴なんだ』

『え?』

『あらあらあらぁ!S組みの子!?中訓練所の仔がなんてまた!』

『図書館で勉強してたら俺の将来の有望さに惚れて、一緒に勉強する事になったんだ』

『あらまぁそうなの!ありがとうねぇ光太郎ちゃん!』

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