第10話 双子の英雄

『マスター!』

「…ん?」


橋の方から兎の呼び声が聞こえてきた。振り返れば兎が俺の方に向かって走ってくる。


「おう、遅かったな」

『マスター、ゴホウコクイタシマス、ヒノシタコウタロウ、トイウジンブツハ、ダイ3チュウクンレンジョ、ニハイマセンデシタ』

「…そうか」

「なんじゃこの兎?、ぬいぐるみかの?」

「こいつは天才である俺がプログラミングしたA・Iを埋め込んだ発明品だよ」

「えーあい?」

「ああ、テストじゃ全教科満点で、この兎の人工知能A・Iのプログラミングをした大天才だ!先生達には中訓練所に入ったらS組に確定だって言われてるけど、この兎を夏休みの課題に提出すりゃ、今すぐにでも日ノ本軍にスカウトされる「本年度の条例で、未成年のスカウトは禁止されましたよ」…は?」


小さい方のおっさんが、俺の事を睨みつけながら近付いて来た。


「2年前に流行った流行り病での人口の激減に加え、最近流行っているのか軍本部のど真ん中で自殺する者が多数存在し、日ノ本軍本部は大混乱。大人でも余りの激務に自ら命を断つ者も多数いる中で、オムツが取れたばかりの子供が耐えられる筈が無いと、能力者以外の子供をスカウト禁止する事が決定されました」

「…嘘…だろ?」

「嘘じゃありませんよ。今年はまぁ諦めるとして例え激務でも自ら命を絶たない様に、根性をたたき直す教育に直す方針で研修を兼ねた授業を取り組み、訓練所のレベルを一気に上げる方針ですので全教科満点で喜んで相手を見下している余裕何て直ぐに無くなりますよ。日ノ本軍の体制が落ち着いたらまたスカウト再開するみたいですが今の様子じゃあ最低でも5年は無理な話ですね…良かったですね、成年訓練所卒業までママのおっぱい吸えますよ」

「…嘘だ」


未成年のスカウト禁止?…嘘だろ、それって…


俺は俺を見下すおっさんのコートを握り締めながら、必死に否定する。


「ふざけた事言ってんじゃねーよ!!それじゃあ俺は…」


俺の頭にはあいつの泣き顔が浮かぶ、そもそも俺があいつを泣かせた理由は軍にスカウトされる為の研究を先に完成されて、俺が怒ったからで…あれ?本当にこのままスカウトされる事無く、訓練所に通い続ける事になったら…俺は…俺は!!


「何の為にあいつ傷付けたんだよ!」

「…」


ファンッファンッファン…


遠くの方からパトカーのサイレンの音が聞こえてくる、しかもサイレンの音が段々と大きくなりパトカーが橋の向こうで停車したのが見えた。


「パトカー…?」

「ガラスが割れる音に銃声音、更にこいつが能力を使用する際に発したでっかい奇声…通報されるのも当然ですね」

「おい坊主、今の内に逃げんと怖〜いお巡りさんに叱られるぞ〜」

「やべっ隠れろ…来い兎!」

『カシコマリマシタ』


俺達は駆け出し、雑木林に身を隠した。

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