第7話 訓練所

「あらじゃあ本当に坊や13歳だったの?」

「うん、身体測定じゃ他のは全滅だったけど身長だけ平均より高いって褒められたよ」


あれから検査したらさっさと帰ると言っていたエムエムが、全く検査する素振りも見せず、寧ろ回復したコタロー君と和気あいあいと話をしている。


私は早く帰ってくれる様にコタロー君に冷たい麦茶を出し、エムエムには熱いお茶を出すが全く効果がない模様、誰か彼を帰らせる方法を教えて欲しい。


「コルヴォ様の事信じて調合して良かったわぁ…危うくバリバリ副作用のある薬を調合する所だった」

「年齢だけでそんなに違うんですか?」

「勿論よ、成長期って骨とか伸びるじゃない?成長期が終わった後なら激痛だけなんだけどね〜、気をつけないと激痛だけじゃなくて骨に影響が出て、成長が止まったり逆に骨が脆くなって直ぐ折れやすくなるわよ」

「そんな危険な薬を投与したんですか!?」

「だって全治1ヶ月の怪我を1日で治す薬なのよ?しかもコタロー君の肩は銃弾が貫通してたんだから、普通に治療してたら完治するまで半年以上かかってたわよ」


ねー?とコタロー君の怪我をしていた右肩を撫でる、副作用があるとは聞いていたが一歩間違えば今後の人生に大いに影響が出るまでとは知らなかった。


「そんな酷い怪我を簡単に治しちゃうなんて、エムエムさん凄いお医者さんなんだね!」

「コタロー君副作用ある薬を投与されて、褒めてる場合じゃありません!」

「ふふふ、訓練所では常にS組み在籍で、卒業した時は主席として選ばれた私にはその程度なんて訳ないわよ♡」

「えっ!?エムエムさん訓練所にいたの?しかもS組みにいたんだ!」

「普段の行いから主席に選ばれるとは思えないのですが」

「まぁちょっとズルしちゃったけどね、でも第3訓練所卒業生100人の代表として軍の入団式で大勢の前で、階級章を貰うのは気持ち良かったわぁ」

「第3訓練所?」

「にほん軍人養成訓練所は全部で10校あるわ、だから例外を除いて毎年1000人が軍に加わる事になるわね…あっ流行り病で人口減っちゃったから今年から600人ぐらいだったかしら」

「…本当に少ないですね」


先日コタロー君から訓練所の話を聞いて驚いた、だって私が通っていた学校は多くても1クラス50人程度だったからだ。


国を守る戦士を育成する訓練所は少なく、1クラス100人以上のすし詰め状態だというのに、軍とは無縁の子共達が通う学校は腐る程ある…軍でも一般人でもどちらの立場でもないマフィアから見たら何て滑稽な話だろう。


「(最も私は後者だった生徒で、全くの第三者とは言えませんがね)」

「第3訓練所なら僕の先輩だね!僕も第3訓練所だったよ!」

「え?坊やも第3訓練所?ならあのあだ名先生知ってる?良く生徒に変なあだ名つける体育教師の…」

「あっ知ってる!!左目の下に泣きボクロのある先生でしょ!僕もその先生に“壊滅君”ってあだ名付けられちゃったよ」

「あら変なあだ名、何で壊滅君なんて呼ばれちゃったの?」


どうやら2人は同じ母校だったらしく、教師の話題で盛り上がり始めた。


「手榴弾投げる実習で安全ピン外したおもちゃの手榴弾を足元に落っことしたり、模擬銃撃戦で遠くの敵チームに全然当たらなくて、味方の後頭部にばっかり当たっちゃったから『はいコタロー君のせいで部隊は壊滅、我々は死にましたー』って怒られちゃったんだ。だから体育の度にそのあだ名で呼ばれちゃって、クラスメートにもからかわれちゃったよ」

「…(コタロー君には間違っても銃を渡さない様にしよう)」

「あらら如何にもあだ名先生がつけそうなあだ名ね」

「エムエムさんは先生に何て呼ばれてたの?」

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