5

コンコン


仕事部屋の扉からノック音が響いてきた…あっ部屋に入る時に鍵開けておくの忘れてた。


「コルヴォ様が戻ったみたいですね」

「えっ!?」

「大丈夫です、何かしようとしてきたらすぐ止めますから」

『マスター大丈夫ですニャン!この熊が命に変えてもお守り致しますニャン!』

「…うん」


私はコタロー君を連れて鍵を開けるべく扉の前に立つ、念の為に影を伝いドアの向こうの様子を伺えば2m近くの大男…間違いないコルヴォ様ですね。


「紅菊、いないのか?」

「今開けます」


扉を開けると、そこにはアジトを出る前と変わりないコルヴォ様の姿があった。どうやら圧勝だったみたいですね。


「何故鍵をかけたんだ?」

「鍵をかけたのはコタロー君です。コルヴォ様があの子の説明をしなかったせいで、散々な目に遭いましたよ」

「散々な?」

「コタロー君が発明した熊さんというA・Iを持ったぬいぐるみにワイヤーで縛られた挙げ句、跳び蹴りされました」

「なに?…発明?」

「ええ、彼の発明能力を見込み組織に連れてくる算段を立てていたとしても、私にも一言報告しといて下さいよ」

「…そんな才能があったのか」

「…え?」

「…」

「…違うんですか?」


私の質問に黙り込み、何やら考えこむ仕草をするコルヴォ様…え?もしかして違う?


「違うとしたら何の目的でコタロー君を連れて来たんです?」

「…いや、紅菊の言った通りだ」

「今確実に違うって反応でしたよね!?」

「そんな事よりあの子はどこにいるんだ?」

「重要な話を逸らさないで下さ…あれ?」


後ろを見れば付いて来た筈のコタロー君がいない…どこ行ったんでしょう?


「コタロー君?」


仕事部屋中を探るがコタロー君の姿は無い、もしやと思い寝室を覗いてみれば、ベッドの上に見慣れた膨らみが再び出現した。


「どうしたんですか?」

「っ…だった!」

「え?」

「本当に巨人さんだった!!しかも吸血鬼だ!僕食べても美味しくないよー!!」

「あー…確かにホラー映画に出てきそうな外見ですもんね」

「…」

「コタロー君、確かに見た目は怖くとも別にとって食ったりしませんよ、人を見かけで判断してはいけません」

「…本当?食べない?」

「コルヴォ様にカニバリズムの趣味はありません」


コタロー君は恐る恐る布団から顔を出し、コルヴォ様を見る…完璧に恐ろしいモノを見る様な表情だった。


「…」

「……」

「………」


2人共何か喋って欲しい、私はかける言葉が見つからない。


「…それは先代の帽子か?」

「!?っ…あっ!勝手に使ってごめんなさい!」


コルヴォ様が先代の帽子に気付きボソリと呟く、それに怒られたと勘違いしたコタロー君は謝りだした。


「ごめんなさい!返しますから食べないで!」

「だから食べませんて」

「…いや、欲しいのならやる」


コタロー君は頭から帽子を外しコルヴォ様に差し出す…しかしそれを手にしたコルヴォ様は、その帽子を再びコタロー君の頭に乗せた。


「紅菊、部屋はもう使えるな?」

「ええ勿論」

「部屋に連れて行って休ませてやれ、私はシャワーを浴びて一眠りするから、夕食時までは部屋に来るな」

「…かしこまりました、コタロー君こちらですよ」

「え?…あっうん」


私はコタロー君を連れ、コルヴォ様の部屋を出た。






「ここが今日からコタロー君が生活するお部屋です」

「え?生活?」

「(明らかに違うとは思いますが)コルヴォ様はコタロー君を、ここで働かせる為に連れてきたみたいですからね、住み込みで働いて貰うつもりで、この部屋の掃除をさせていたみたいですし」

「え!?僕帰れないの!」

「恐らく…」

「そんなのヤダ!!洗濯物干しっぱなしなのに!」

「主婦ですか…それにここにいた方が良いのかもしれませんよ?」

「何で?」

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