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「午前中の内にタイムカード押したいからね〜、ここから軍まで私の愛車で片道30分だから、もう少ししたら出ないといけないわ」

「え?ここって日ノ本軍から30分で着くの?」

「んー私の愛車は科学者の愛人からプレゼントされた最新型の最速バイクで30分だから実際は車で1時間位かかるんじゃない?」

「車で1時間…」

「さっ検査始めるから上着脱いでくれる?何ならお姉さんが脱がせてあげましょうか?」

「ううん、僕1人で脱げるよ」

「あらら残念♡」

「…」

「そんな目で見ないで紅菊ちゃん、勃っちゃうわ」

「へし折りますよ?」

「ぜひお願い♡」

「………(コイツ何回殺せば死ぬのかしら?)」

「?…んん〜?」


湧き上がる苛立ちを心の奥に押し込めていると再び変な声が聞こえてくる、見てみればコタロー君が私を見ながら目を擦っていた。


「どうしたんですか?」

「んー…何かね、ナナシお姉さんから黒い靄が出てる様に見えたの」

「靄?」

「さっきもモヤモヤ〜って出てたけど…あれ消えちゃった」

「あらら擦っちゃ駄目よ?ちょっと見せて頂戴」


エムエムはコタロー君の両頬に、手を添え上を向かせ覗き込んだ。


「見た所異常は無い様だけど…いつから?」

「今日からだよ」

「痛みとか違和感は?」

「全然」

「ん〜…あんまり薬使うと自然治癒力が弱まるから、暫く様子を見て異常があったら目薬出すわね」

「はーい」

「それよりちょっとクマ酷いわよ?ちゃんと夜眠れてる?」

「うん、いつもぐっすりだよ」

「…ん〜〜〜っ♡」

「!?っ」


ゴスッ!!


私はコタロー君に口付け様としたエムエムの脳天を、力の限り鉄扇でぶん殴った。


「一体何をやってるんですか」

「美味しそうな顔だったから…つい♡」

「さっさと検査終わらせて帰って下さい、ほらコタロー君も早く上着脱いで」

「はーい」

「あらこれちょっと凹んじゃったかも…2kgの鉄棒で殴られたんだから、もしかしたら頭蓋骨陥没したんじゃないかしら」

「どうせすぐ治るんでしょ?」

「まぁねん♡」

「脱げたよー」

「じゃあ検査始めるわよ、背中見せて座って頂戴」

「はーい」


上着を脱いだコタロー君に呼ばれ、ようやくエムエムは診察を始めた。


「んー傷の経過は良好ね、ちょっとヒビ入っていた箇所を押してみるから、痛かったら言ってねー…痛い?」


そう言ってエムエムは、コタロー君の骨にヒビのあった箇所を指圧する。


「ううん、大丈夫だよ」

「なら肩以外はほぼ完治ね〜、次は一番酷い肩を見るわよ…ん〜見た目は良好ね♡これならもうガーゼいらないわ」


私も後ろからエムエムがガーゼを剥がした右肩の傷を眺める。あれだけ酷かった怪我が一週間でもうほぼ完治している…本当に腕だけは確かですね。


「ちょっと動かすわ。銃弾が貫通してたんだから痛かったら無理せずに言ってね?」


エムエムはコタロー君の右手を持ち、肩を上げたり回したりする。


「痛い?」

「んー、ちょっと痛むけど大丈夫だよ」

「…せっせっせーのよいよいよい♪」

「!」

「アーループースー一万しゃーくーこーやーりーのうーえでー♪」

「アールーペーンおーどーりーをーさぁ踊り・ま・しょ♪」


突然2人はアルプス一万尺をやり始めた。


「…何をやってるんですか?」

「ん?我慢して診察を誤魔化してないかの子供用肩の動作性チェックよ、特に痛がってる様子も無いし本当に大丈夫みたいね」

「え?僕が嘘ついてると思ったの?」

「軍で多いのよ、本当は辛いのに隠しちゃう子供…知ってる?子供の内から軍に勤める子は必ずと言って良いほど、体調不良を起こしちゃうのよ」

「え?何で?」

「理由は様々あるわね、まず子供がたった1人で大人に囲まれ生活するのはかなりのストレスになるわ、只でさえそんな状態なのに夜遅くまで仕事しなきゃならないし、軍に同年代の子なんてそうそういないから休憩時間も1人でいる事が多いから、子供のストレス発散法である“遊ぶ”がなかなか出来なくて、ストレスが蓄積されてく一方なのよ」

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