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「そ…それで?」
「勝敗は紅菊様の勝ち、相手側は全員手首を切り裂かれ戦闘不能になったが、紅菊様は全くの無傷だった…そしてそんな紅菊様をこの組織に連れて来たのが現在のボスだ。先代のボスの時に紅菊様が、テネブラファミリーのテリトリーを荒らしていた所を、同じ能力者であるコルヴォ様に捕獲に向かわせたらしい」
「つー事はボスの方がその紅菊より強いの?」
「お前もボスが戦ってる所見ればわかる、ボスには“闇鴉”って裏名があるがありゃ鴉というより死に神だ…この組織の頂点には闇の者が2人いる、並大抵の組織じゃ相手にならねぇよ」
闇の者は人外だから手を出すな
男は自分達が所属するテネブラファミリーがアジトとして使用する。高く聳え立つ廃墟となった西洋風ホテルを見上げた。
『そのボスは何階の部屋にいるにゃんか?』
「ボスなら20階にいる、もっとも下っ端は10階より上は立ち入りを禁じられているから、どこにボスの部屋があるのかわからねぇけどな」
「…なぁ、今の誰の声だ?」
「あ?お前じゃねえの?」
聞こえる筈の無い第三者の声、辺りを見渡すがやはり誰もおらず1人は警戒心を強め、もう1人は顔を真っ青にさせる。
「で…で…で…っ?!」
「おい、もしかしたらナイヤファミリーの奴が潜り込んで「出たぁぁあああ!やっぱりこの曰く付き廃虚ホテルには怨霊がいたんだーーーっ!!」
「おい!持ち場離れてどこ行く気だコラ!!」
絶叫を上げながら逃げ去る新人を、怒号を飛ばしながら男は追った…そこの中庭に命が宿るモノはは誰もいなくなった。
『マス…ター………』
×××
「……?…(何かいる?)」
何かが20階に入り込んだ事を察知した私は目を覚ました。枕元にある時計のスイッチを押せば時計版が薄明るく光り、その針は午前3時前を差していた。
「(こんな時間に何なんでしょうねぇ…)」
例え相手が敵対ファミリーからの刺客だとしても、今守るべきコルヴォ様はいないし、自分が目当てだとしてもどうせこの暗闇の中触れる事さえ出来やしない。私の部屋に入ってきたら返り討ちにすればいいだけ…私は再び瞼を閉じ眠りにつこうとするが、今コルヴォ様の寝室で子供が眠っている事を思い出した。
「(…コルヴォ様と間違われて、殺されてしまってはたまりませんね、一応探ってみますか)」
ここで私の能力について説明しよう
私の能力は闇と同化する能力であり、同化中は闇の者以外は私の体に触れる事が出来ず、更に一体化している闇の中を探知出来る事が出来る(まぁぼんやりと輪郭がわかる程度で細部まではわからないが)
最上階から10階の電気は警備の為に私達が使用する部屋を除き、全て蛍光灯自体を外し完全なる闇となっており、私が溶け込んだ闇は全て私のテリトリーとなる。
上体を起こし、私は意識を闇に溶け込ました。
20階の階段付近の廊下に、動く物体を察知する。
「(…?…なにこれ…小さい?人の半分…いやそれ以下…もしや動物?)」
10階に侵入した生き物(?)は特に決まった場所に向かおうとせず蛇行歩行している、しかもゆっくりと…馬鹿馬鹿しい
「(恐らく犬か猫がアジトに紛れ込んだだけ、特に害は無さそうなので放っておきましょう)」
私は意識を闇の中から戻し、小さく欠伸をすると布団に深く潜り込んだ。
その時の私は夜中の3時に起こされた事と、起き抜けの思考で冷静な判断が出来ずに就寝してしまった。それが命持たぬ物だったという事に気付かずに。
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