第34話ルリカラとの意思疎通
その後、冒険者ギルドへ行き無事にテイマー登録とルリカラの登録が完了し、専用のタグを付けてあげたところ、思いの外に嬉しそうで自慢気にしていた。
冒険者ギルドの受付嬢さんは登録されたタグを見て一瞬眉を潜めていたものの、すぐに何事もなかっかのように対応してくれた。聖獣ホワイトドラゴン(幼生体)、そりゃ驚くだろう。
「あらぁー、お似合いなんでしゅねぇー」
胸を張るルリカラの胸をルイーズが撫でてあげると、撫でられたルリカラも満更でもなさそうにしている。どこにいった人見知りよ。
まあ、仲が良いにこしたことはないのだけどね。
ちなみに冒険者ギルドにルリカラを連れて入った時の印象はというと、若干ざわざわしていている感じと表現したらいいだろうか。
テイムされている魔物自体はそこまで珍しくないものの、この生き物は一体何なのだろうかという興味が先にくるのだと思う。おそらくサイズ的にこれがドラゴンだとは結びつかないと思われるけど、ではいったいこのもふもふは何なのだと。
パッと見では白いもふもふした未確認生物。ルリカラも人に見られるのは苦手なのか、注目を浴びていると感じると抱っこをせがんで顔はお腹にぐりぐりとめりこませてくる。
きっと、白い狼とか大きな鳥ぐらいの印象だろうか。珍しいとは感じるものの、だからといって質問されるほどの感じではなかった。
冒険者というのは強い魔物なら興味を持つのだろうけど、あきらかに戦闘能力のなさそうなもふもふにしか見えないのも聞かれなかった要因だと思う。
ということで、今は屋台で食料を購入して宿屋でゆっくり打ち合わせをしながら食べようかということになった。
「何を買おっかー?」
茹でたカニはさっき食べているので、ルイーズの狙いは殻ごと網焼きにしたもの、身をほぐして豪快に乗せたトマトクリームパスタに目がいっている。
「ん? どうしたの、ルリカラ」
顔を隠していたルリカラが鼻をスンスンとさせながら、興味を示したのはカニや貝を殻ごと煮込んだスープだった。具材には野菜や魚も入っているっぽい。
「ピュイ、ピュイ!」
やはり魚好きなドラゴンなのだろうか。
「ルリカラは、あれが食べたいのね」
様子を見ていたアルベロがすぐに三人分のスープを購入してくれた。それを見たルリカラがすぐに食べたそうにしていたけど、僕が「あとでみんなと一緒に食べるんだよ」と心の中で伝えたら、理解したのか大人しくなって再び顔を隠してしまった。
さて、ルリカラとどのぐらい会話が出来るのだろうか。
屋台で購入したのは、スープと網焼きにパスタ。まだしばらくは滞在する予定なので、他のメニューは明日以降にいただくことにした。
僕たちはすぐに宿屋に戻って、アルベロとルイーズが泊まる部屋にて食事、兼打ち合わせをすることに。
「明日は船を借りてソードフィッシュ討伐ね」
アルベロの言う通り、バブルラグーンにはステータスの成長を求めてやってきたので、すばやいソードフィッシュ討伐で俊敏性を高めたいと思っている。
アルベロとルイーズも新しい武器を試すのにソードフィッシュはちょうどいいと判断しているらしい。
「それで、どのぐらい意思疎通がとれるの?」
アルベロが気にしているのはルリカラのことだ。この赤ちゃんドラゴンに戦える力があるのか。戦えない場合にどうすべきか。宿屋に置いておくわけにもいかないだろう。
本人は魚介のスープにご満悦で舌を伸ばしては器用に飲んでいる。たまにカニや貝の殻ごとバリバリ噛み砕きながら食べているワイルドな食べ方だ。掃除するのがとても大変である。
「ルリカラ、君はどのぐらい戦えるの?」
そう聞いてみると、スープの器はを離さずに耳は僕の方に向けてピコピコと動かしている。しばらくすると、ルリカラの気持ちが僕に伝わってきた。
空を自由に飛べる。獰猛な牙と爪で魔物を切り裂く。偉大な聖なるブレスで魔物を撃ち倒す。
なるほどね。翼があるから空を飛べるというのは理解できるけど、本当に飛べるのだろうか。翼の大きさと比べて体の比重が高いので何とも言えない。そもそも飛んでいるところを見ていないからね。
とりあえず二人にも伝えたところ、軽く笑われてしまっている。
「獰猛な牙と爪でしゅかー。ふにゃふにゃでしゅねー」
赤ちゃん言葉のルイーズがそう言ってルリカラの肉球をぷにぷにしている。ルリカラは意味もわからずに、うむ、マッサージするといい的な表情をしている。
赤ちゃんなので、牙も爪も獰猛さのかけらもない。爪は細く何ならちょっと柔らかいまでもある。牙は……貝殻とかバリバリ食べているので、それなりには力強いかもしれない。
柔かい爪を獰猛と言っちゃうあたりに判断が難しいものの、ドラゴンブレスともなると、獰猛な爪よりも攻撃力は高そうだ。一応聞くだけ聞いてみようか。
「ブレスってドラゴンだし、やっぱりすごいのかな?」
再び僕の考えを読み取っているルリカラの耳は細かく動いている。
しばらくして伝わってきたのは、ブレスのイメージだ。それは僕がルリカラの目線になって感じる映像のようなもの。
激しく鼓動を上下させ、突き上げるように溢れるエネルギーを吐き出す。イメージの中では複数の魔物の群れが一網打尽にされている。
これは信じても大丈夫なやつだろうか。言葉ではなく説得力のある映像なだけに信ぴょう性は高い。あとで二人にも話しておこう。
「ルリカラ、他に何か聞きたいこととか、話しておきたいことはあるかな?」
睡眠時間はいっぱい必要。この匂いのきついスープは味がしみて美味しい。魚もいいけど、このくさいスープも好き。おかわりが欲しい。
どうやら料理はお気に召したようで安心した。
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