第78話レア採掘ガチャ2

 その後も小銀貨の山が全て無くなるまでガチャは空っぽになることなく回すことができた。小銀貨二枚とはいえ、全部で五百回もやるとさすがに腕も疲れる。お酒を程々にしておいてよかったかも。


 ガチャは誰かが代わりに回してくれるわけではない。この機械を視認できているのは僕とルリカラだけ。ルリカラに説明してもその柔らかい肉球でガチャのハンドルを回すことは難しいだろう。


「あー、もっと小銀貨を用意しておけばよかった。ニールさん、もう一日採掘しませんか?」


 残念そうにしているのはカルメロさん。やはりミストマウンテンにおいて、魔法のスクロールは需要が高いのだろう。もちろん、聖水も人気商品のはずだ。


「レア採掘ガチャをやるにはアダマンタイトが必要なんです。いまわかってる他の鉱脈はないですよね?」


「く、くやしい」


 ただの採掘ガチャでもスクロールは出るんだけど、レア採掘ガチャを見たあとではやる気も起きないだろう。


 今回はまさに神引きと言っていいレアガチャだった。たまたまとはいえ、大量の小銀貨を用意してもらったことも含めてこのガチャは奇跡といっていい。


 その、結果はこの通り。


 ●マハリトのスクロール×百本

 ●清浄のスクロール×百本

 ●光玉のスクロール×百本

 ●聖水×百本

 ●スケルトン必中の石×百個


 さすがレアというべきなのか、出たアイテムの割合はすべて一緒だった。もっと石だらけになると思っていたのだけど、割合は全部一緒。とんでもない数のスクロールを入手してしまった。


 まず、マハリトのスクロール五十本をカルメロさんに売ることになり、銀貨百枚と交換。


 はい、この時点でもうプラス収支が確定しました。


 続いて、清浄と光玉のスクロールに聖水を八十セット二百四十分を銀貨四十枚と交換したので、この分がまるまる利益になってしまった。


 ただでガチャを回して四十万もらえるとか意味がわからないよね。


 しかも、こちらもかなりのスクロールを手にいれているのだ。現在、インベントリにはこんな感じで表示されている。


 ●スクロール

 →マハリトのスクロール×五十本

 →清浄のスクロール×二十本

 →光玉のスクロール×二十本

 ●聖水×二十本

 ●スケルトン必中の石×百個


 清浄のスクロールは現状アルベロ頼りなので、スクロールで何本か持っておくのはありだ。何気にこれはうれしい。いらないのは必中の石か。


「スケルトン必中の石はいらないんですか? スケルトンが近くにいる時に投げると必ずヒットしますよ」


「えーっと、それはいいや」


 カルメロさんにも全く響かない。


「よーく見ると、石の表面に薄くドクロマークが描かれているんですけど、ビビアンさん、これ何かのアクセサリーとして活用できませんか?」


「うーん、できないかしら」


 やはり、商売人の夫婦だけあり、お金を生むかそうでないかの判断は早い。


「……そうですよね」


 あとで捨てよう。必中とはいえ、ほぼノーダメージだから意味がない。頭の良い人ならこの石の活用方法とか思い浮かぶのかもしれないけど、僕にはどうすればいいかわからない。


「それじゃー、飲み直そうかー」


「そうね。簡単なおつまみとお酒を用意してちょうだい」


 ルイーズのその声に反応するようにビビアンさんがお手伝いさんたちに指示を出していく。給仕係をしているアンナさんも、いそいそと食事やお酒を運んでくる。


 ガチャが終わるまではお酒を控えていた面々も、終わったなら再び飲もうと。しかも実りあるガチャだったのだから宴会だよねとでも言わんばかりに浮かれている。


 でもたまには羽目を外すのもいいかなと思う。こちらは異世界にきてから大変なことの連続だった。ここらで少しぐらい楽しんでもいいだろう。


 安全な場所で周りを気にせずに酔っぱらっていいなんてなかなか出来ることではない。やっぱり犯罪とか争いごとが多い世界だし、街の外に出ようものなら魔物に襲われるのだから。


 ということで、飲みすぎた僕たちは翌朝の馬車の時間に間に合わず、もう一泊してから帰ることになった。アンナさんは喜んで健気にキャットアイのお世話に勤しんでいた。


「いやー、今回もあんまり働かなかった気がするけど一件落着だねー」


 次の日の場所の時間には無事に間に合って、王都までの三日間の旅路となる。帰り道は下り坂が多くなるので、お馬さんも行きよりは楽だといいね。


「まあ、役割分担ってのはあるもの」


 シーデーモンとの戦いやアダマンタイトの採掘で活躍できなかったルイーズだけど、ちゃんとスケルトンやグール退治を頑張ってくれたし、気にすることでもないと思うんだ。


「僕が討伐チームだったらあんまり活躍できなかっただろうし」


 狭い坑道では盾や短槍は活躍しづらい。結局一度も使うことなく、まだ新品のままなのである。可能なら帰り道に魔物と戦う機会でもあればいいなと思っている。


 しかしながら街道沿いは魔物も避けるようで行きの旅では遠くにワイルドファングの小さな群れが見えたぐらいだった。


 おそらく魔物が襲いかかってくるような事態にはならないだろう。きっと魔物だって狩りをするなら少数の人を相手に安全に行いたいだろうしね。

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