第29話バブルラグーンへ
シュリンプパーティーの翌日にはもう旅の準備をして次の日には出発することになった。
一応、遠征することは冒険者ギルドにも伝えなければならないらしく、受付のカルデローネさんからはバブルラグーンに棲息する魔物の情報を教えてもらった。
「気をつけて行ってきてくださいね。バブルラグーンについたら現地の冒険者ギルドにも顔を出してください」
「わかりました」
冒険者の遠征情報というのは冒険者ギルドで共有され、何かあった時にクエストの依頼が入ることもあるのだとか。一番はそのエリア内で問題があった時における戦力の確認なのだろうけどね。
ということで、僕たちは早朝の乗り合い馬車で出発している。冒険者ギルドを出る時に猫人族のキャットアイさんがうらめしそうにこちらを見ていたのが印象的だった。
やはり、猫だけに魚が好きなのだろうか。
彼女は王都でも数少ないAランクの冒険者なのでしばらくの間ラウラの森の調査依頼が入っているらしい。この間のお礼も兼ねて何かお土産でも買ってきてあげようかな。
「気をつけなければならないのはキングマーマンだよねー」
カルデローネさん情報によるとキングマーマンはかなり沖の方に出ないと遭遇することはないだろうとのことだった。一応気にしておくか程度で大丈夫じゃないだろうか。
「普通のマーマンだって複数だと面倒だし、バブルクラブの防御力と攻撃力は十分に厄介よ」
バブルラグーンに行ったことがあるのはアルベロだけでルイーズも初めてとのこと。
マーマンは別名で海のゴブリンとも呼ばれる魔物でランクD、キングマーマンはランクC。バブルクラブはカニの魔物でランクD。
ふむ、カニの魔物か。
「アルベロ、バブルクラブは美味しいのかな?」
「とっても美味しいわよ。バブルラグーンの名物料理だもの」
「へー、それは楽しみだね」
「エビとどっちが美味しいかなー?」
海鮮派のルイーズもバブルクラブが気になるようだ。
「身はエビの方が弾力があっていいけど、バブルクラブは身の量と甘さが特長ね。甲羅ごと焼いてステーキにしても美味しいのよ」
アルベロはエルフだけど、ステーキがお好みなのかもしれない。赤身肉のステーキもお勧めされたもんね。僕としてはカニ味噌が美味しく食べられるのかが気になるところだ。
それから、ちょっとした目標もある。
「僕はソードフィッシュをいっぱい倒したいな」
可能ならソードフィッシュガチャとかも出てほしい。ゴブリンガチャは数が少なかったからなのか出現しなかったからね。
「そうね。私たちも協力するわ」
「私もバブルラグーンを倒すよー」
個人的には、海にいるソードフィッシュというランクEの魔物を多く倒したいと思っている。
これは頭部が剣のように鋭く尖っている魚の魔物。見た目とは違い攻撃力はそこまでなく、ただ俊敏性の高い魔物とのこと。
実は、この魔物を多く倒すことで敏捷ランクが上昇しやすくなるのだそうだ。
倒した魔物から得られる力は倒した魔物の特性によっても変わるらしく、僕が敏捷を伸ばしたいという話をしたところ、このソードフィッシュを倒した方がいいのではとのことだった。
魔物を自分の成長に合わせて倒すというのは、割りと初期ステータスの時に有効らしい。というのも、人によってステータスの成長には限界があるし、得意分野も人それぞれだから。
ということで、僕の敏捷値の潜在能力が高いことを心から祈りたい。
馬車の旅は特に問題が起こることもなく進み、二日目を過ぎる頃には徐々に潮風の香りが漂ってくるようになった。
「う、うーん。そろそろ到着だねー」
馬車の旅にもそろそろ飽きてきたルイーズが身体を伸ばしながら外を眺めている。
「もう少しの辛抱よ」
「あっ、ねえ、あれが海かなー?」
「ちょっと、声が大きいわよルイーズ」
乗り合い馬車なので、僕たちパーティの他にも冒険者や家族連れの人なんかもいる。でもどうやらこの馬車ではじめて見る海に騒いでいるのはルイーズだけらしい。
バブルラグーンへの旅に慣れた人ならきっとよく見る光景なのだろう。騒ぐルイーズをあたたかい目で見てくれている。
外を見ると地平線の先に一面ブルーの光景が目に飛び込んてくる。まぎれもなく僕も知っている海だ。
「あれ全部が海なの? ちょっと大きすぎない」
「もーう、ルイーズ。恥ずかしいからあんまり大きな声ださないで」
「ごめん、ごめん。アルベロ。でも、ニールは何でそんなに落ち着いてるの?」
「僕は海を見たことがあるからね」
「ええぇー、そうだったの。仲間だと思ってたのにー」
その言葉に馬車に乗っている人から笑い声が起きた。もちろん、僕もこの世界の海を見るのは、はじめてだけどね。
昼過ぎには到着できそうなので、宿を確保して冒険者ギルドにご挨拶したら、さっそく浜辺の方へ向かう予定となった。
本格的な討伐は明日からで、今日は現場のチェックとあわよくばバブルクラブ討伐。
あとはインベントリ機能のチェックといったところだ。
「やっと体を動かせるよー。馬車の旅は退屈だよねー。私は旅に向いていないかもしれない」
「慣れもあると思うわよ」
「そーかなー」
さて、ようやくバブルラグーンに到着だ。
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