第27話お祝い

 その後、少しばかり体力を回復した僕たちは洞窟の中を探索して、さらわれた人がいないことを確認した。


 それはそれでホッとしたのだけど、一番奥にあったボス部屋は整備されていて、いつでも女性を攫ってこれる準備が整っていたというか、もう少し発見が遅れていたら犠牲になる人が出ていてもおかしくない状況だった。


 ここは王都からそう離れた場所でもない。そんな場所でゴブリンの巣だけでなく、進化個体が統率していたとなるとギルドへの報告が必要になる。


 受付のカルデローネさんに今回の件を説明すると、おそらくラウラの森での冒険者活動にはしばらく制限がかかることになるだろうとのこと。


 僕たちパーティでいけるのは湖の手前ぐらいまでになるらしい。そうなると、ホーンラビットぐらいしか出現しないエリアになるので稼ぎ的にも微妙になる。


「やっぱり魔法の練習と連携の強化をした方がいいのかなー」


「そうね。ホブゴブリンを結構な金額で買い取りしてもらえた訳だしね」


 素材には使えないホブゴブリンだったけど、進化一歩手前の個体ということもあり、買取金額に色をつけてもらえたのだ。ギルドとしては有益な情報とともに、進化個体を早期に倒してくれたということでボーナス査定にしてくれたらしい。


 金貨一枚と銀貨五枚。つまり、約十五万円を頂いてしまった。ホブゴブリンはゴブリンファイターとしての価格で査定をしてくれているし、情報料としても相当な評価をしてもらっている。


 それだけ危険な状況ということだったのだろう。あの巣を見つけたのが他の人だったら、EランクやDランクの冒険者だったら……。きっと怪我どころの騒ぎでは収まらなかったはずだ。ひょっとしたら、全滅していた可能性だって考えられる強さだった。


「まあ、それよりもあれよね」


「そうだねー。ニールのランクアップをお祝いしなきゃだよね!」


 そう。ここ数日の討伐件数だったり、パーティでの討伐とはいえ、進化個体を倒したことも踏まえ、無事にEランクへランクアップが認められたのだ。


「二人ともありがとう。といってもまだ下から二番目のランクなんだよね」


「そんなの気にしない気にしない。ニールならすぐにDランクになれるよー」


「うーん、まだ先のような気もするけど頑張ります」


 タグを確認するとステータスが成長している項目もあった。短い期間ながら、しっかり成長していることを嬉しく思うし、二人と組んでなかったらもっと遠回りをしていただろうなと思うと本当に感謝しかない。


 冒険者ランクE

ニール・ゼニガタ 男 十七歳

 体力E→D、筋力E、耐久F→E、敏捷E、持久力E、魔力E、知能C

 魔法適正 火E、無属性(発火、注水)


 体力が上がったのはうれしい。少しでも早く二人に追いつけるようになりたいからね。


 耐久値は何で上がったのかな。ホブゴブリンに吹き飛ばされたからだろうか……。でも、盾持ちの僕としてはありがたい成長に思える。


「おかみさんに話ししてくるわ」


「私はエビ料理がいいなー。ニールもエビ好きでしょ?」


 異世界に来てエビ料理を食べたことは一度もない。単純にルイーズの好物なのだろう。まだ異世界のエビを食べたことが無いけども……食べられるならぜひ食べてみたい。


「ルイーズ、自分の食べたい物をリクエストしないで。ニールは赤身の牛肉が食べたいわよね。男の子はみんなガーリックソースのステーキにたっぷりのマッシュポテトが好きだもの」


 それはアルベロの偏見な気もするけど、ステーキなんて贅沢な物を食べてみたい気もしなくはない。


「ガーリックステーキは宵の月亭で人気だけど、注文しているのはおじさんが多いもん。最近の流行はエビなんだってー。ほらっ、味付けはガーリックでガーリックシュリンプにするから」


「ガーリックにすればいいって問題じゃないでしょ。それにおじさんの注文が多いのは値段が高いからよ」


 ある程度稼ぎのあるベテランじゃないと注文できない価格帯のメニューということなのかな。


「あ、あのー。ガーリックシュリンプ、食べてみたいです」


「やったー!」


「本当にいいの?」


「お肉も好きですけど、今日はエビを食べてみたい気分なので」


「エビはぷりっぷりで美味しいんだよー」


 それはまたベタな食リポですね、ルイーズ。


 しかしながら宵の月亭の料理に今まで外れはないので期待していいと思う。


 ということで少しばかり休憩して、身支度を整えてから二時間後ぐらいを目安に集合することになった。


 部屋に一人でいると、ホブゴブリンとの戦闘を思い出す。


 すごく強い魔物だった。


 もしも、もう一体いたらやられていたのは僕たちの方だっただろう。逃げ切れる自信はない。アルベロとルイーズならきっと逃げられる。


 僕がいることで二人に迷惑をかけるのは本望ではない。そう考えると俊敏Eをもっと上げたい。


 と、考えたところで俊敏を上げる方法が僕にはわからない。地道に討伐していくしかないのかな。


 このあたりも二人に相談してみようか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る