第144話二日目も頑張ります
翌朝に目覚めると拠点の周辺には数頭のドランクモンキーが倒れていた。周辺の群れは倒したと思ったけど、まだまだいっぱいいるということか。
ジョーカーさんが倒してくれたようだけど、近くに割れたマヌルー玉が落ちていたので、早速その効果を確かめたようだ。
「ニール。マヌルー玉すごかった」
朝一で僕を見たジョーカーさんの一声がこれだった。
「ですよね。僕もすごい以外の言葉が見つかりませんから」
基本的にトルマクル大森林から出ることがないドランクモンキーに討伐依頼がかかることは稀だとは思うけど、マヌルー玉で安全に倒せるとなれば冒険者による討伐需要はそれなりに出てくるかもしれない。
「問題は、マヌルー玉を作れるのがニールだけということだな」
「あっ、そうでしたね」
マヌルー玉はマヌルーの粉と水を混ぜ合わせるだけの簡単なものだけど、マヌルーの粉を手に入れるためには一度マヌルグの木をインベントリに入れなければならない。
マヌルグの木からマヌルー成分を効率よく抽出することが可能になればいいけど、どうすればそんなことが可能になのるかは僕にはわからない。
僕にできることとしたら、マヌルグのはいっぱいあるので、ここからリンドンシティに戻る時にマヌルーの粉を大量に持ち帰ることぐらいか。
朝食のメニューは昨日のスープの残りとガーリックトーストだ。トーストには刻んだバジルと食感を出すために細かく砕かれローストされた木の実が乗せられている。
食感だけでなく、香りもよく食が進む。
「おしゃれカフェメニューですか!」
「おしゃれカフェ?」
「あっ、いえ、何でもないです。ジョーカーさん、料理上手ですよね。どこかで習ったんですか?」
「冒険者なら野宿も多いからな。これぐらいは普通だ」
これが普通だと言うなら、普段はどんなすごい料理を食べているのだろうか。専属シェフとして我がパーティにお迎えしたいレベルだよ。さすがに支店長を引き抜くのはカルメロさんに怒られちゃうけどね。
「それで、今日の目標は?」
「そうですね。マギカ草を探しに少し奥まで行きたいと思ってます。だから、昨日の倍の四十頭にしておきますか」
「そうか。昨日の動きを忘れるなよ」
「はい」
普通に考えるとDランクが四十頭とか無理するなと怒られ、たしなめられるところだろうけど必勝アイテムのマヌルー玉があるのでそこはスルーされる。
昨晩、実際に効果を目の当たりにしたジョーカーさんも、あの効果なら問題ないなと思っているからこそ何も言わない。
今日はまた水場を求めて森を進んでいく。湧き水の出ている場所はいくつかあるようなので、その周辺にはきっとマギカ草が自生しているはず。
マギカ草は何となく水のきれいな場所にあるイメージだ。マギカ草を集めてマジックポーションにどんどん合成していく。
今後の戦い方的にもマジックポーションは必須アイテムになる。買うとそれなりに高いので、可能な限りここでストックを増やしておきたい。
ということで、二日目のスタートです。
水場を探すなら上から見た方が早い。ならば土の塊でタワーを造ろうじゃないか。縦に積み上げていき、後ろ側にちゃんと階段も造って登れるようにしていく。
マヌルグの木がそこまで高くはないので、十五メートルの高さもあれば、かなり遠くまで見通せるようになる。
「で、何をやってるんだ?」
「別の水場を探そうと思いまして」
「なるほど……」
行ってきますと言っておいて、いきなり目の前でタワーを造られたら、何をしているのこいつは? となるのも仕方がない。
でも、無駄に歩き回るよりかは断然効率がいいのは間違いない。
「あっ、発見しました。二箇所ありますね。では、本当に行ってきます」
「ああ、頑張れよ」
前に見つけた水場の先に、似たようなサイズ感の池を発見した。
まずは周辺のドランクモンキーを全て駆除してからゆっくりマジックポーション作りに取りかかろうと思う。
さて、まずは昨日の水場方向へと向かいますか。
しばらくして、昨日マジックポーションを合成した水場に来てみると、しゃぶりつくされた小枝と無数の足跡が残されていた。足跡だけなので何とも言えないけど、十頭どころではなく、二、三十頭近い感じに見えなくもない。
「なるほど、ドランクモンキーも何が起こっているのか気になっているらしい」
特に僕がマヌルー玉を作った、あの平らな石のあたりは異常なほどにチェックされている気がする。
突然現れた虐殺者に対してドランクモンキーなりに調査をしているといったところだろうか。
一日で複数の縄張りを蹂躙していった奴がいる。ここは縄張りの垣根を超えて協力して虐殺者を倒そうではないか。そんな思いが伝わってきそうな雰囲気を感じる。
「ドランクモンキー三十頭、マヌルー玉があれば何とかいけるだろうか」
どちらにせよ、今日はこの辺りを縄張りにしているドランクモンキーを倒そうと思っていたのだから、丁度いいといえばちょうどいい。
そっちがその気ならば、迎え討ってやろうではないか。
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