第123話バルドル盗賊団4
洞窟を進み、ボスの部屋があるという場所まで案内をしてもらう。洞窟内はかなり入り組んでいて案内がなければかなり迷っていただろう。
しかも、盗賊が適度に遭遇するように歩いているため、天使軍団がいなければ結構面倒くさいことになっていたのは間違いない。
「食料はたんまり来たのか?」
「おう、明日からは少し贅沢ができそうだぜ」
「そうか、そうか。これでミスリル宝石も奪えてたら、しばらくはのんびりできるかもな」
「ちげぇねぇー」
そんな会話をしながら、通り過ぎる元仲間を後ろから振り返りざまに攻撃してあっさり無力化していく。
「ぬぁあー、お、お前ら、何で!」
その言葉に返答はなく、ただひたすらにボコボコにしていく天使たち。アドリーシャから罪が軽くなると聞いたことで目が血走っている。彼らは罪を償うために戦っているのだ。
こんな調子で個別に撃破していくことで、とても討伐はスムーズに進んでいる。
「聖女様、あの奥の部屋がボスの部屋です」
「わかったわ。あなた達は抜け道の前をしっかりおさえておいてください」
「おまかせください!」
さて、アドリーシャによると奥の部屋にいる人数は五人。そのうちの一人がボスであるバルドルなのだろう。
天使たちの話によると、この部屋の奥に隠し通路はないとのこと。つまり、この出口さえ抜けられなければ一網打尽にできる。
バルドルはキャットアイに任せて、残りはルイーズとアルベロが数を減らしていく。
部屋の大きさを把握した僕は大盾をしまってマジカルソードを出す。
本来なら大盾でアルベロとアドリーシャを守るのが役目なんだけど、思いの外ボス部屋が広かったので出口を塞ぐようにインベントリで拠点を造ることにしたのだ。
拠点の上に二人が乗れば僕が守る必要はない。そうなれば、マジカルソードの出番だ。あくまでもキャットアイとルイーズの補佐だけども。
「だ、誰だっ!」
その声に反応することはない。各自が決められた動きで態勢を整えていく。
キャットアイは一番奥にいるバルドルに向かい、こちらに向かってくる盗賊はルイーズが引き受けてくれる。
「な、何だよ、それ」
それというのはもちろん僕の造った拠点のことだ。アルベロもアドリーシャも慣れたもので、すぐに一番上へと登っていく。
それを見て僕は横に造った階段を消し去って、インベントリのゴミ箱へ移動して削除。
「お、お前ら、早くこの猫の獣人をなんとかしやがれ!」
しかしながら、たった五人しかいない状況で逃げ道もなく、先制攻撃を受けている中、ボスを救おうと動けるほどの猛者はいない。
あっという間に、猫さんがバルドルの武器を絡めとるようにして奪ったところ。これならもう時間の問題だろう。
ルイーズも二人の盗賊を引きつけつつ、危なげなく一人ずつ倒していってる。
残りはというと、僕に向かってくる二人だったけど、片方はアルベロの矢が突き刺さらずに頭ごと吹き飛ばしていった。南無。
その矢は、アダマンタイト製の矢じりをさっそく使う余裕ぶりをみせている。
「マポーフィック」
それはアドリーシャが僕に唱えた魔法の盾。アルベロは矢を準備することなく、こちらを見ている。
つまりは、やってみろということなのだろう。相手の攻撃を二、三回は防げそうな魔法の盾が波ぬにはかけられている。
これなら僕も余裕をもって戦うことができる。
「うらぁあああああー!」
バブルラグーンでダンパーと戦った時に感じた感覚。相手が勢い任せなほど、その行動は短絡的になる。
周りの仲間が次々と制圧されていき、残っている人数も少ない。逃げようにも入口が塞がれているし、自分たちの負けがはっきりしている状況。
そうしてやけになった行動は、力まかせで軌道はバレバレ。対処するのが難しいものではない。
多分、盾だったらそのまま吹き飛ばせそうだなと思えるぐらいにわかりやすく剣を振りかぶっている。
でも、今僕が手にしているのはマジカルソード。勢い任せに殴りつけるようにくる相手に剣をそのまま合わせる必要はない。
その攻撃が僕をとらえたと思った瞬間に半身横にずれてマジカルソードに魔力をこめて軽く斜めにしつつ合わせる。すると、剣はずらされて僕の横を通り過ぎていく。
「なっ、とっとっと……」
避けられるとも考えていなかったのだから、その勢いのまま剣は地面までぶつかり、体勢は面白いほどに崩れる。
ここで、マジカルソードを首もとに添えるだけで終わらせてもよかった。
しかしながら、倒れながらもその男は胸もとに手を入れている。
まだ戦う意志があり、油断するとこちらが怪我を負う可能性がある。
実際には魔法の盾があるから問題はないのだけど、だからといってその攻撃を受けるつもりもないし、向かってくるのならば容赦はしない。
僕は再びマジカルソードに魔力をこめて盗賊の胴体を真っ二つに斬った。
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