第111話報告
森にオークジェネラルとエビルプリーストがいたことについて、どう報告をしたらいいのかと悩んでいたところ、アルベロの回答はそのまま伝えるとのことだった。
「でもさー、ランクBの魔物の討伐報酬の依頼金額ってー、結構な額だと思うよー」
「お、お金をとるのでこざいますか」
そりゃ、お金はとる。僕たちは何も慈善活動で魔物の討伐をしているわけではないのだ。
今回は口頭だったとはいえ、アリュナー村の村長さんからの依頼を請け負っている。
村人もランクBの魔物がいたことを隠して依頼してきたとは思わないけど、実際に出てきて討伐もしたとなると条件が変わってしまうのはしょうがないことだろう。
「で、でも」
「でもも、何もないにゃ。オークジェネラルとエビルプリーストがいたことで、パーティは命の危機に瀕したにゃ」
「それは、そうですが……」
「もしも、村長が冒険者ギルドにオーク十体程度でクエストを発注していたら明確な違反行為になるわ」
アルベロの言うことはもっともなことだけど、実際にクエストを依頼する場合はアリュナー村だってもう少し情報を調べてから発注はすると思う。
しかしながら、実際に間違った依頼をした場合に罰則や金額の修正が入ることはままあることなのだ。
今回はたまたまAランクのキャットアイとCランクのアルベロがいたから、多少数が上振れても問題ないとこちらで判断したので、そのことで村長に文句を言うつもりはない。
ただ、イレギュラーがあったことについては、周辺の魔物の状況を把握するうえでもちゃんと報告した方がいいだろうし、討伐した魔物の内容によってその対価は変わるのもしかたない。
「アドリーシャが村の人たちを思っての発言なのは理解しているけど、こういっては何だけど、たとえば私たちが僅かばかりの食料で手をうってしまったとしたら、次回以降、冒険者ギルドに依頼する際の金額を出し渋るようになるかもしれないの」
もちろん、お金を出し渋るなら冒険者ギルドも受け付けないだろう。だからといってクエストの内容を過小に提案でもしようものならその後の罰則は避けられない。
「そうですね。私が間違っておりました」
何度でも言うが、僕たちは慈善活動をするわけではないので、たとえ口約束の討伐依頼でも適正な費用は請求する。
それはアドリーシャの求める救済活動とは異なるのかもしれないけど、パーティとして活動する以上は僕たちの意見に従ってもらわなければ困る。
というわけで、アリュナー村に戻った僕たちは、馬車に乗せていたオークジェネラルとエビルプリーストを村長に見せた。
「こ、これは……。も、申し訳ございません」
村長も口約束とはいえ、想像以上に強い魔物がいたことがクエストに及ぼす影響を理解しているのだろう。
「無事に倒せたので大丈夫ですよ」
「しかし、この近くにランクBの魔物が二体もいたとは……。こんなことは今までになかったことです」
「冒険者ギルドに報告をしておいたほうがいいでしょう。場合によっては周辺の調査をしてくれるかもしれませんからね」
「ええ。そういたしましょう。命あってのことですからね」
「オークが約三十体にオークジェネラルとエビルプリーストが各一体にゃ」
「食料を集めておいたのですが、それだけでは到底足りませんね。いかがいたしましょうか?」
困った時はカルメロ商会だよね。聖イルミナ共和国では名誉男爵でもあり、支店の数はかなり多い。イルミナ大聖堂のある街にも支店はあったのでうまく対処してくれるだろう。
「差額分はカルメロ商会に頼むにゃ」
「あのカルメロ商会ですか」
「そうにゃ。ニールからと言えば伝わるはずにゃ」
「では、そのように」
聖イルミナ共和国において、カルメロ商会といえばミスリル宝石の商売で有名なのだとか。
イルミナ教会では水と光の属性付与が出来ることから、その媒体となるミスリル宝石の流通には力を入れている。
ちなみに、風や火属性などの付与ついても行われている場所はある。アルベロもルイーズもキャットアイも風属性付与を考えていることから、アリュナー村を出たら『風の谷の集落』という場所へと向かうつもりでいる。
「今夜はお礼を兼ねて肉料理とお酒を用意させていただきました。ぜひ、ゆっくりしていってください」
「ありがとうございます」
アリュナー村から風の谷の集落までは補給場所となる村がないため、ここで多めに食料を手に入れる必要があった。
オークのせいで食料を買えない可能性があったのはちょっと危なかった。あと一週間ぐらいイルミナ大聖堂でのんびりしていたら風の谷に立ち寄れなかったかもしれない。
そういう意味ではオークが本格的に攻めてくる前に討伐できたことは結果オーライともいえる。もちろんアリュナー村にとってもだ。
そういえば、またしても格上の魔物を目の前で倒したことになる。シーデーモンの時は丸一日熱が出て寝込んだんだっけね。
まさか、今回は平気だよねと思っていたのだけど、夕食後またしても頭がふらふらとして倒れてしまったのはなんとも情けないことだ。
しかしながら、これでまた少し強くなれたのだと思うと、この熱もいいもののように思えてくる。
明日は馬車の中でゆっくり眠らせてもらおうと思う。
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