第101話連携とは1
体の疲れはとれたものの、せっかくお風呂もついてるし食事も美味しいので、マリアンヌさんのお言葉に甘えてイルミナ大聖堂にしばらく滞在することにした。
といっても、二週間ぐらいの予定だ。その間は冒険者ギルドでクエストを受注して、しばらくはメンバー入りするアドリーシャとの連携を確認することになった。
ずっとアドリーシャさんと呼んでいたのだけど、パーティメンバーならさん付けはやめてもらいたいとのことでこうなった。
信者が多い場所でアドリーシャとか呼び捨てにしたら、どう思われるのか気になるところではある。
まあ、でも本人の希望だしね。いつまでもよそよそしいのもよくない。
そして、僕の秘密についてだけど、段階を追って話をしていくことにした。
最初からすべてを話すつもりはない。なんとなくイメージとしてはイルミナ大聖堂を出発してからインベントリについて。それからもうしばらく様子を見てガチャについてといったところだ。
パーティとして活動する以上、インベントリを隠したままでは実入りも少なくなる。旅をしながらということは、狩りをした魔物の素材やお肉をインベントリに保管して、旅の途中で寄った街や村で買い取りをしてもらうのが効率がいい。
そうなると、インベントリは話しておく必要がある。この情報がイルミナ教会に伝わるかどうかはアドリーシャの判断になるけど、なるべく話さないでもらえるように交渉はしたい。
インベントリはアローヘッド戦でも活躍したように戦闘面においても力を発揮してくれる。パーティでの連携をを高めていく上でも、また僕自身が活躍したいからこそ積極的に使っていきたい。
それから、ガチャについてだけど。
アローヘッドを無力化したことで何か新しいガチャでも出ていないかと思ったのだけど何も出なかった。通常ガチャのみである。洗礼ガチャも国またぎガチャもなかった。
アローヘッドを倒していたら格上討伐ガチャとか出た可能性は否めない。しかしながら、倒すということは殺すということで、それはまだ気がひける部分でもある。
まだこの世界で盗賊と遭遇したこともないので、対人経験というのはダンパーとアローヘッドぐらいになる。
このあたりも慣れていかなければならないけど、僕の役割的には後方支援が多いので今は近接戦闘組のキャットアイやルイーズの戦い方を参考に勉強していきたいと思う。
「ここは、私に任せてみなさんは後ろへ!」
少なくとも、このアドリーシャのように連携を無視して前に飛び出す聖女見習いという生物のようになってはいけない。まあ、僕はしないけど。
「アドリーシャ、あなたは前に出ないでって言ってるでしょ」
もう何度目になる注意だろうか。アルベロも辟易の表情を浮かべている。
戦いが始まると何故か徐々に前進していき、いつの間にやら先頭で戦い、魔物にやられていく。こんな繰り返しではポーションの数がとても足りなくなる。今のところは自分で治してるけどさ。
「た、助けてー」
「もーう、だから、何で前に出るのよー!」
ワイルドファングの群れに単身で飛び込んでいく後方支援チームの聖女見習い。もはや狂気の沙汰ではなかろうか。
ワイルドファングはDランクとはいえ、その鋭い噛みつき攻撃は注意が必要だ。特に防御装備が薄めのアドリーシャさんの神官服では防ぐことなど無理で見るも無惨な姿というか、かなりボロボロになっている。
猫さんにいたっては彼女の説得を諦めてしまったのか、アルベロの後ろで昼寝をはじめてしまう始末。
「ディオス!」
アドリーシャが唱えた魔法は回復魔法のディオス。噛みつかれた傷はこれで消えていくのだけど、ディオスの使い過ぎですでに魔力が底をつきかけている。
何で聖女見習いなのにこんなにも好戦的なのか。
アドリーシャの魔法は強力だ。魔力もそれなりにあるし、魔法の種類も多彩だ。
マダルト(凍てつく冷気)、ディオス(回復)、ラテュモフィス(毒治療)、ディアルコ(麻痺、催眠状態を治す)、マポーフィック(魔法の盾)と使用できる魔法が五つもある。
戦闘前のブリーフィングではその能力の高さに驚かされたのだけど……。気のせいだったようだ。一応ランクCらしいけど、絶対僕の方が強いと思う。
手に持っているロッドは魔法を放つためのものであって、ワイルドファングを叩くためのものではないのだ。
一生懸命なのはわかるんだけど、単独行動が過ぎる。結果的に足手まといになってしまっている。
聖女見習いって戦闘訓練とかしないんだろうな。魔法を放つ訓練とかはあるのだろうけど、魔物との戦いは絶対にしていない。アドリーシャの動きを見ているだけでそれはよくわかる。
「ディオス!」
「ディオス!」
「ディオス!」
まあ、ワイルドファングにあれだけ噛みつかれても再び前線に向っていく根性は認めるけどさ。
ワイルドファング程度なら、マダルトの魔法を使えば一発で倒せるんだよ。どうしても前に出るのなら、ルイーズを引かせて魔法を使えばいいのに。
何かいろいろと違うと思うんだよね。
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