第54話超格上討伐ガチャ2
それからすぐにアルベロは戻ってきた。急いできたのだろう。若干息を弾ませているが、アルベロが息を弾ませるってすごいことだからね。多分、部屋を出てから五分もかかってないんじゃないだろうか。
それにしても金貨三枚は大金だ。冒険者ギルドで何といって両替してもらったのか気になる。
「超格上討伐ガチャはまだある!?」
「うん。まだあるよ」
こんなに焦っているアルベロは初めて見る。
「お願い。壊れない矢をちょうだい!」
その言葉とともに、アルベロの手から僕の手に三枚の金貨が託される。
アルベロは目を瞑って、お願い事をするかのように手を合わせて拝んでいる。
拝んでいる方向は一応あっているけど、その相手はパオーンと鳴いている金色の象さんだ。
「じゃあ、回してみるね」
初めて登場した金貨ガチャ。金貨一枚は十万円の価値がある。それが三枚なので計三十万円相当。
普通の人はガチャに三十万円も投資しないだろう。
しかしながら、このガチャは銀貨ガチャである格上討伐ガチャの上をいく超格上討伐ガチャなのだ。借金してでも限界まで回すべきガチャである。
正直言って、短弓ハジャーダや疾風のレイピアは売るとしたら白金貨三枚はくだらないのではと三人と話していた。白金貨三枚は約三百万円。それぐらい珍しく貴重な武器と言っていい。
そう考えると、金貨三枚なんてたいしたことはない。
「大丈夫、ニール。手が震えてるよー」
「い、いや、これでハズレアイテムが出たらと思うと怖くてさ……」
信頼はしている。このような演出があった時にガチャは必ず信頼に応えてくれた。今回も間違いはないだろう。
それでも、もしもポーションでも出ようものなら大幅な赤字だ。二人のガチャに対する信頼も失墜すること間違いなし。何せ九万九千九百円のマイナスになるのだから。
頭をよぎるのは王様と神官さんのものすごくがっかりした表情だ。
「そんなこと気にしなくていいわ。もし今回のガチャが全部ハズレたとしても、前回の討伐ガチャで既に元は取れているもの」
「そ、そうだよね。よしっ、じゃあ、回すよ」
金貨を入れると象さんの鼻がぐわんと上がり、鼻から虹のシャワーが降ってくる。
何かちょっと汚い気がしないでもない。
しかしながら、虹色演出はレアアイテム確定演出。これであと二回も気楽に回せるというもの。
ガチャゴトンっと落ちてきたカプセルは眩いはかりのゴールドカラー。
「な、何が出たの!?」
「私用の武器、間違って出てない?」
間違ってルイーズの武器が出るようなことは多分ないだろう。そこまでガチャはお人好しではない。
「これは、アルベロ用の指輪かな」
「指輪?」
「幻惑の指輪。武器攻撃によるダメージアップと自身の回避率アップ」
「効果が二つも付与されているのね」
「いいなー、私のも出ないかなー」
指輪をアルベロに渡して、僕は二回目のガチャにチャレンジする。
効果が二つも付与されているのは駆け出し冒険者の僕にとってかなり大きい。
武器が欲しいところだけど、大盾が無くなってしまっただけに盾でもいいかなとか思わなくもない。盾だってシールドバッシュみたいに攻撃的な使われ方もするわけだしね。
身を守りながら、攻撃力も高いとか僕にぴったりともいえる。
「では、二回目のガチャを回します」
一回目同様に虹のシャワー演出。そして、今回特別だったのは踊り子さんたちが猫の仮面をかぶり「ニャー、ニャー」と猫ダンスを披露している点だろう。一体どうしたのよ。
ルリカラも楽しそうに踊り子さんたちに混ざって踊っている。君は猫じゃなくてドラゴンだろう。
「これは多分、キャットアイさんのアイテムっぽいな」
「やっぱり討伐していないから今回はダメなのね……。くやしい! 私、くやしいよ!」
ごめんね、ルイーズ。次回はいいものがもらえるといいね。
「それで、何が出たの?」
「プジョーブーツ。猫人族専用装備みたい。効果は二つで、敏捷アップに持久力アップ」
「何それ、欲しいよ。私用でもいいんじゃない!」
「いや、猫人族専用装備だから……」
「ううー、私が猫人族だったらよかったのにー」
僕が欲しい敏捷に持久力までアップするなんて夢のようなブーツだ。猫人族専用じゃなければ僕だって履きたい。
「キャットアイに売る? でも、あの人あまりお金持ってなさそうなのよね」
「キャットアイさん、あまり仕事入れないですもんね。だいたいギルドで寝てるし」
「とりあえず、そのブーツをどうするかはあとで考えましょう。それよりも最後の一回よ」
「そうだね。次は順番的に僕のが出るはず……」
敏捷アップの武器が希望。百歩譲って、攻撃を受けても痛くない攻撃も可能な大盾とか希望。
「どうか、お願いします!」
金色の象さんはぴくりとも動かない。いつの間にか流れていた音楽も止まり、踊り子さんたちも座ってしまっている。
こ、これは、まさかのハズレ演出なのか……。
僕がそう諦めたタイミングで座っていた踊り子さんたちを繫ぐように魔法陣が描かれていく。もちろん、その中心にいるのは金色の象さん。
息を吹返したかのように猛々しく象さんの鼻が立ち上がった!
「立った、立ったよ、象さんが!」
「一体、何が起こっているの?」
「ゾウさんって何だろうねー、アルベロ」
もったいぶるように繰り出されたガチャの復活演出に、僕の熱がまた上がってしまった気がしないでもない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます