第11話明日の打ち合わせ
あれから通常ガチャを五回やってみた結果、リカバリーポーション一本にヒーリング草二束、小石が二個だった。
勿論、小石には何の価値もない。
銅貨だからと、もっと回したい欲にかられはしたものの、小石を見て踏みとどまった。
このガチャに投資をしたところでリターンは少ない。百円ガチャはあくまでも百円ガチャなのだ。
「ニールさん、何か元気ない?」
食事をしながらの打ち合わせなのだけど、僕の気持ちは見るからに落ちている。ルイーズさんが心配するのも無理はない。
「私ずっと部屋にいたんだけど、すごい物音がしたんだけど。あんまりこういうのは言いたくないけど騒音と思われても仕方がないわよ」
アルベロさんからはクレームが入ってしまった……。
「あー、ベッドを出し入れした時ですね。あっ、ごめんなさい。ちょっといろいろ試していてですね。ここではちょっとあれなので、あとで説明させてください」
さすがに大勢人がいるレストランでする話ではないだろう。そうじゃなくても、美少女二人と食事をしている僕はかなり注目を浴びている。
「ベッド? まあ、わかったわ……」
何か理由があるのだろうとアルベロさんもこの場はひいてくれた。
「それで、話を戻すけど。明日はラウラの森の湖周辺でジャイアントトード狩りにするわよ」
ジャイアントトードはランクDで討伐証明の舌を持って帰れば小銀貨四枚。そして、お肉も買い取りの対象でこちらは追加報酬で状態やサイズにもよるけど同じく小銀貨四枚ほどになる。
ルイーズさんはランクDでアルベロさんはランクCなので、ある程度は余裕のある狩りといえるだろう。
「ニールさんとの連携も確認したいし、ちょうどいいと思うんだよねー」
そう。今回の狩りはあくまでも連携の確認がメイン。ジャイアントトードであればスピードもそこまで速くないらしいので、僕でも荷車を守ることぐらいできるだろうとのこと。ちなみにアルベロさんは木の上から弓を射るので安全らしい。
「頑張ってお肉運びます」
「何てったって、追加報酬ですからね! 追加報酬!」
「頼むわね、ニール」
二人は今までジャイアントトードの舌は持ち帰るけど、荷物になるお肉はそのまま置いてきていたそうだ。品質の良い肉だったら小銀貨五枚にもなるそうなので、ただ討伐するよりも倍のお金を手に入れることができる。
二人が今まで荷物運びを雇うことがなかったのは何かしら理由があるんだろうけど、せっかく決意をしてくれたのだから、力になりたいし、僕もしっかりお金を稼ぎたい。
何といっても奇跡的に手に入れたインベントリスキル。同じ品目なら畳一畳分程度なら回収可能。お肉も舌も普通に入れられるはずだ。
「ちなみになんですが、ジャイアントトードの大きさってどのぐらいなんですか?」
「うーん、このテーブルぐらいかなー」
「そうね」
結構な大きさなようだ。畳一畳分しか入らないことを考えると三体、何とか四体はいけるだろうか。まあ、入らない分はそのまま荷車に乗せればいい。
「それで何体ぐらい狩る予定なんですか?」
「うーん。運ぶのは解体して七体ぐらいが限界かなー」
「できれば十体は回収したいわ。それ以降は討伐証明だけで肉は諦める感じよ」
「あっ、そうか。解体すれば物量は減らせますね。なるほど、なるほど」
つまり、二人の目論見ではお肉込みのジャイアントトード十体で銀貨八枚ぐらい。その後、討伐証明部位だけをいくつか狩る感じ。まあ、それを十体と計算すると一人あたり銀貨十二枚。そこから更にポーション代とか荷車の預かり、武器のメンテナンス、パーティの貯金とか……。
普段二人が二十体前後を狩っていたとすると、討伐証明だけで銀貨八枚になるので、一人あたり四枚。これでは僕が入ったことで荷車の預かり費用とかも考えるとマイナスになる計算。
僕の表情で何かを察したのかルイーズさんが声をかけてくれる。
「最初から今まで通り稼げるとは思ってないよ。ニールさんが慣れてきたら運べる量も増えると思うしね」
「でも、荷車とか大盾とか先行投資をしてるし、僕が言うのも何だけど二人はそれでいいの?」
「ニールが私を守ってくれれば、もっと狩れると思うし、私の弓でルイーズの安全を確保できるようにもなるわ」
「そうそう。冒険者は怪我をしないことが大事なんだよ。ニールさんが入って安全面がアップするなら、多少稼ぎが減っても問題ないよー」
なるほど。それはその通りかもしれない。冒険者は身体が資本なので、怪我で休むとなると一人だけの問題ではなくなってしまうのも事実だろう。
よしっ、大体の内容は把握できた。これからは僕の話を聞いてもらう番だ。
「僕からも二人に話があるんだけど、ここだと話していい内容なのか判断できないから、僕の部屋に来てもらってもいいかな」
二人で顔を見合わせるルイーズさんとアルベロさん。
「あまり人には聞かれたくない話ってこと?」
「うん。そうです」
「じゃあ、移動しようか。ね、アルベロ」
「そうね。どんな話か気になるわ」
夜のレストランも宵の月亭は人気で隣のテーブルとの距離は近い。僕のスキルの話がどの程度の重要なのかはわならないけど、少なからずジャイアントトードを運べる数はかなり変わってくる。
これはここで気軽に話して、人に聞かれていいものではないはずだ。
ということで、二人を僕の部屋に招いて、新スキルであるインベントリを早速起動させた。これが一番わかりやすいからね。
「なっ、なっ、ええー!?」
「ベッドが消えた……」
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