第63話経過報告1
■■■冒険者ギルド長 バルトロメオ視点
「何でしっかり休暇をとってから戻ってきてんだよ。なめてんのか」
「タイミングが悪かったにゃ。シーデーモンが現れるとか、こっちもとんだ災難だったにゃ」
「そのシーデーモンを討伐したアルベロたちが先に帰ってきてるのに、調査依頼を任せてるお前が何でのんびり魚介を満喫してんだって聞いてんだよ!」
「せっかちになギルドマスターにゃ。そういえばバブルラグーンのギルドマスターと仲良くなったにゃ。そろそろ移籍を考えなくもないにゃ」
「て、てめー」
落ち着け、ただでさえ少ないAランクの冒険者が移籍するとか、とんでもない失態になる。せっかく王都のギルドマスターまで登りつめたというのに、こんなんでは左遷されちまう。
「バブルラグーンにお前を引き留める金が払えるとは思えんがな」
「五年契約で白金貨十枚。専任依頼もそこそこ。そして、ソードフィッシュとバブルクラブ食べ放題にゃ」
「な、何でバブルラグーンにそんな金が出せんだよ! その話、本当なんだろうな?」
「聞いてみればいいにゃ。バブルラグーンはSランクを確保する必要がないにゃ。一番の脅威はAランクのシーデーモン。それを討伐可能なランクAの冒険者が一人いれば十分ということにゃ」
つまり、ランクBやCの冒険者はいっぱいいるから、キャットアイ一人を確保できれば冒険者ギルドを維持できるって腹積もりか。
あそこはバブルクラブを特産物として売り出しているから、それを狩る中級冒険者が集まりやすい。
そうなると、もしもの災害に備えてAランク冒険者を一人確保しておけば冒険者ギルドとして安全マージンを十分とれるという算段か。
「二年契約で白金貨五枚だ。それで勘弁してくれ」
「検討するにゃ」
「それで、ニール・ゼニガタの情報はどうなってる。バブルラグーンに行って数日でランクが上がってるじゃねぇか」
「あれはシーデーモンの魔素を一番近くで吸収したせいにゃ。何か特別なスキルや能力があるわけではないにゃ」
「たまたまってことか?」
「駆け出し冒険者にしては肝が座ってるにゃ。ニールに何かあるのは……確かだと思うにゃ」
「その何かを探るのがお前の仕事だろーが」
「ニールのスキルはポーション精製と聞いていたにゃ」
「そうだな」
「バブルラグーンでテイマースキルを手に入れたみたいにゃ」
「スキルが増えただと!?」
後天的にスキルが発現することはあるが、それは相応の訓練を積み重ねた者や、種族的な要素が大きいと言われている。
普通の人が短期間でスキルを得るというのはごく稀なケースだ。
「テイムしたのはホワイトドラゴンにゃ」
「そうか、ホワイトドラゴン……か。はああああー!? ド、ドラゴンだと!」
「ドラゴンにゃ。まだ小さい赤ちゃんドラゴンにゃ」
「ドラゴンなんてどこでテイムしたんだよ。バブルラグーンにホワイトドラゴンがいるのか?」
「いないはずにゃ」
そりゃそうだろう。王都近郊にドラゴンが棲息なんてしてたら大問題だ。そんなことが判明しようものなら近隣のギルドマスター全員の首が飛ぶ。何でバブルラグーンの冒険者ギルドは普通にテイマー登録してんだよ。
「既にテイム状態で、害はないと判断したみたいにゃ。ダンパーにブレスを吐いて心をきれいに生まれ変わらせたという噂話があったにゃ」
「ホワイトドラゴンか。それを王に献上させることは可能か?」
「もうテイム済みにゃ。ニールにもかなり懐いてるにゃ」
「ニールを殺したら手に入るのかって聞いてるんだよ」
「それを依頼するというなら降りるにゃ」
「ランクAのキャットアイが怖気づくのかよ」
「あのパーティは想像しているより強いにゃ。攻撃力だけならアルベロはAランク以上だし、ルイーズのスピードもBランクに届いているにゃ」
「別に二人が近くにいない時を狙えばいいだろうが」
「それだけじゃないにゃ。問題はあのホワイトドラゴンにゃ。いつもぴったりニールと寝食を共にしてるにゃ。ダンパーに吐いたブレスの効果が本当なら近づくのも難しいにゃ」
「お前のスピードでも難しいのか?」
「悪意に対しての反応が異常に早いにゃ。攻撃しようとした魔物に対して呪い殺すかのような目を向けていたにゃ。シーデーモンとの戦いでニールと共闘した時も一瞬、悪寒を感じたほどにゃ」
「お前が悪寒を感じるほどかよ……」
「ダンパーのようになるのは勘弁にゃ」
「あいつ、そんなに変わっちまったのか?」
「目が天使だったにゃ」
「いいじゃねぇか、天使」
「頑張ればいいにゃ」
「やらねぇーよ。俺はもう引退してんだ。で、他には情報はねぇのか?」
「……ないにゃ」
「何だ今の間は?」
「何でもないにゃ」
「ところで、随分いいブーツ履いてるじゃねぇか。俺にはわかるぜ、そりゃ相当な代物だろう」
「ちょっとした掘り出し物にゃ」
「まあ、いい。引き続き頼んたぞ」
「わかってるにゃ」
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