第24話ゴブリン狩り2
周りに人はいないので、ゴブリンはインベントリの中へ入れてしまう。軽く手で触れてインベントリをイメージしたら画面をタップするだけ。
●ゴブリン
→左耳(討伐証明)3
→死骸3
●弓矢
→矢1
死骸はゴミ箱へ移動して削除っと。んん?
「あれっ、アルベロの矢も回収してる」
どうやら矢の刺さったゴブリンごとインベントリに入れたことで矢も分別してくれたらしい。
「ゴブリンに刺さった矢ね。矢じりだけでも回収してくれたらありがたいわ」
「はい、どうぞ」
矢をタップして取り出すと、矢じりは少し潰れているものの、まだ十分に使えそうに思えた。
「矢は消耗品だから、こうして回収してくれると助かるのよ」
何気に冒険者の武器や防具はメンテナンスが必要だったり、アルベロの矢のように都度準備をしなければならないものもある。
僕の場合は、今のところ防具と大盾のメンテナンスをしなければならないけど、しばらくはドワーフのおじさんが無償で面倒みてくれる。
カエルのハンカチーフを渡せば、またしばらくは延長してもらえるのではないかと思っている。
ちなみにカエルのお人形はルイーズに強奪された。「何これー、かわいい!」とか言っていたが、あれだけジャイアントトードを討伐しておいてそのあたりはどうなのだろうか。
ルイーズのバッグには、あげたカエルのお人形がぶら下がっている。
「な、何かなー。このカエルさんはもう私のだからね」
「あっ、うん。そうだね」
「ルイーズはそういうちょっと変わったの好きよね」
ジャイアントトードをデフォルメしたお人形はキモかわいい部類に入るのだろうか。目はキラーンと輝いていて、舌がだらーんとだらしなく伸びている。小さいながらクッション性もあって触り心地は悪くない。
「ねぇー、ニール。いっぱいゴブリン倒したらゴブリンガチャとかになるのかな? ゴブリンの人形ってどんな感じかな?」
「えっ、ゴブリンの人形欲しいの?」
「えー、だってー。気になるんだもーん」
ゴブリンを初めて見たけど、全身緑色の痩せ型で、目つきは鋭くて口は広角が上がるように大きく裂けていてそこから牙も生えている。
これがデフォルメされたところで可愛くなるとは思えない。
「あんまり期待はしないでよ」
「ジャイアントトードがこんなに可愛くなるんだから、ゴブリンだってきっと可愛くなるよー」
「そうなのかな……」
「今夜のガチャは参加するから先にやらないでよ」
「ゴブリンガチャになる保証はないからね。というか、今夜もガチャ回さなきゃならないの!?」
「銀貨一枚までなら出すよ」
「よろしくお願いします」
「まったく、しょうがないわね。でも、楽しそうだから私も見学させてもらうわ」
「そうと決まればゴブリンを狩りまくろー!」
ということで、引き続きゴブリン探しは木の上を疾走するアルベロが行い、僕とルイーズは懸命に後を追う。いや、懸命なのは僕だけか。
森の中を移動しながら、時折現れるホーンラビットを二人が倒すと僕がインベントリに回収。休憩時間にインベントリの整理をして、矢をアルベロに渡す。
そんなことを繰り返していると、なんとゴブリンの巣を見つけてしまったのだ。
先を行くアルベロから止まれのハンドサインが出ると、軽い身のこなしで木から降りてきたアルベロはルイーズに説明をしている。
「あの洞窟?」
「さっきゴブリンが入っていくのを見たの。どうする?」
どうやら洞窟を根城にしているゴブリンのグループを発見したらしい。
再び洞窟を見ると、見張り役のゴブリンが現れて立っていた。
「入口が狭いからそこまで多くはない気はするんだけどねー」
二人ならゴブリン相手に遅れをとることはないだろうけど、狭い洞窟内での戦闘となると弓は使いづらい。
「洞窟に魔法を撃ち込んで一網打尽にしちゃうのはどう?」
「ゴブリンは人を攫っている場合があるの。だから強引な魔法攻撃はできないわ」
「そうなんだね」
アルベロの嫌そうな表情から、攫っているのは女性であり、子を産ませるためなのではないかと想像できてしまう。
そうなると洞窟内ではショートソードで戦うルイーズ中心の戦いになってしまう。相手の数がわからない以上それは現実的ではない。
「まずは洞窟内の戦力をあぶり出していくわ」
アルベロの立てた作戦は、出てきたゴブリンを順次仕留めていくというもの。
そのために、見張りのゴブリンには盛大な音を立てつつ倒させてもらう。ということで、アルベロのハリトを撃ち込む。
ちなみに、出てきたゴブリンの数が想定よりも多かった場合は早期撤退をして冒険者ギルドに情報を伝える。数としては同時に十体以上と対するような場合になったら逃げる。アルベロが少しの間、時間を稼ぐから二人は先に湖の方へ向かってとのことだ。
ということで、作戦スタート。
「ほらっ、こっちだよ!」
僕は大盾を地面に叩きながら、ゴブリンの意識を自分に向かせる。
すると、ゴブリンは予想通り洞窟に向かって何か叫びながらも僕の方へと近づいてくる。
「ハリト!」
僕を倒そうと荒ぶっているゴブリンに、突如視覚外から放たれた火の塊をゴブリンに躱すことはできない。
顔面あたりで爆発したハリトはそのままゴブリンの首ごと吹き飛んでいった。アルベロのハリトなら当たりどころによってはゴブリンも即死するらしい。
「ニール、急いで!」
「う、うん。わかってる」
アルベロの魔法に見惚れている場合ではない。僕とルイーズはラウラの森ではおなじみのロータスのツタを強化し、縄のようにしたものを洞窟の前に張っていく。
どのぐらい効果があるかはわからないけど、足を引っ掛けて転んでくれれば狙い撃ちできる。
すると、しばらくして洞窟を出てこようとする複数の足音が聞こえてきた。
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