第5話冒険者タグ取得
どうやらステータスの確認は個室で行われるらしく、情報がむやみに漏れないようにしてくれているようだ。
「では、手のひらをこちらの水晶の上にかざしてもらえますか」
僕のステータスは平均以下の数値。それは知っているので、もちろん何も期待はしていない。
「はい、ありがとうございます」
気になることといえば魔力の数値と属性ぐらいのものだ。
「では、少ししたらタグが発行されますのでお待ちいただけますか」
「わかりました。ギルドの中にいればいいですか?」
「そうしていただけると助かります」
可能ならばこの場で数値と属性を聞いてみたかったのだけど、こいつ平均以下のくせにぐいぐいくると思われても悲しいのでここは待つ。全然普通に待つんだから。
さて、タグができるまで何をして時間を潰そうか。やはり、興味があるのは貼り出されているクエストの内容だろう。これからお金を稼がなくてはならないので、どんな内容の仕事があるのかは気になるところ。
ふと周りを見渡してもギルド内にいる冒険者は僅か。居るのは薬草を採取してきた子供たちと、午前中から眠そうにしている猫の獣人さんぐらいのもの。
猫の獣人さんかー。何というか家で飼っていたミャーコを思い出す。そういえばミャーコもあの人と同じような茶色の毛だったなー。
っと、あんまりじろじろ見ていたら変な人扱いされてしまうかもしれない。これから仕事をもらうギルドで揉めごとを起こすわけにはいかないからね。
「さて、さて、どんなクエストがあるのかなー」
クエストは壁に貼られているものと、常時依頼の掲示板に書かれているものに分けられると受付嬢のお姉さんことカルデローネさんから聞いた。
ちなみに今の時間帯で壁に貼られているクエストは人気のない余りものらしい。
クエスト
A街区排水路の掃除。銀貨一枚
生活魔法の清浄が使える人はプラス小銀貨五枚。
排水路掃除が人気ないのは理解できる。かなり臭うだろうし汚いのだろう。ただ清浄という生活魔法が使えるとかなりお得に稼げる。日本円にして一万五千円なら、かなりいい稼ぎといえるだろう。
「それはやめておいた方がいいにゃ。特にA街区は広いから大変にゃ。あと……鼻がおかしくなるにゃ」
いつの間に後ろにいたのだろう。眠そうにしていた猫の獣人さんが話しかけてきた。獣人さんだけに匂いには敏感なのかもしれない。
「そうなんですね。まだやるかどうかは決めてないです。どんなのがあるのかなーと見てたんです」
「清浄が使えるにゃ?」
「あっ、いえ、まだどんな魔法が使えるかもわからない状況でして……」
「なるほどにゃ。それなら最初は薬草採取か街の中の御用聞きがいいと思うにゃ。できれば臭くないので頼むにゃ」
「臭くないのですか……」
何故、僕のクエストなのに彼女が臭さを気にするのかはわからない。清浄も使えないのに排水路掃除とかして臭い状態のままギルドに来られると嫌な気分になるという理解でいいだろうか。
「頼むにゃ」
「善処します」
さっきまで寝ていたからなのか、体を伸ばしながら欠伸をしている。
「失礼ですが、お姉さんは猫の獣人さんですか?」
「獣人を見るのははじめてかにゃ?
獣人の猫人族ということか。犬人族とか兎人族とかもいるのだろうか。
「にぎるです。よろしくお願いします」
「よろしくにゃ、ニール」
やはり、ニールになるのか。種族が違えばワンチャン普通に呼んでもらえる可能性があるかもしれないと思ったのだけどやはりダメだった。そろそろ、諦めよう。僕はこの世界でニールとして生きていくしかないらしい。
ちなみに、薬草採取は常設依頼の掲示板コーナーに金額がチョークで書いてある。買取り金額は都度変動するということなのだろう。
常設討伐の箇所にはホーンラビットE、ワイルドファングD、ゴブリンD、ジャイアントトードDと書かれている。
名前の後ろはランクなのだろう。ホーンラビットの場合だと小銀貨二枚から。肉や皮の状態で追加報酬があるらしい。本体がなくてもツノがあれば討伐を認められる。
ゴブリンの場合は追加報酬なし。左耳と引き換えで小銀貨四枚。これはゴブリンが食用とみられてなかったり、素材としての価値が無いからなのだろう。
実物を見たことがないけど、狼とかゴブリンを相手にするなら兎を狩った方がいいのかもしれない。
「ニールさーん、お待たせいたしました」
おっと、もうタグが発行されたらしい。
魔法、魔法、属性はなんだろね。
「えーっと、簡単に説明しますね。タグに魔力を流すと、現在のステータス値が見えます。一応、他の方には見られないように注意してくださいね」
ステータスで強さが一目瞭然ということか。弱点とかもろわかりだもんね。
「では、魔力を流してみましょう」
「魔力……ですか」
いや、魔力、わからないですってば……。
「ふふふっ、実は冒険者タグは魔導具なので触れて念じるだけで勝手に吸い上げてくれます。ほとんど魔力消費はないので何度やっても大丈夫ですよ」
触れて、……念じると。
僕は心の中でステータスオープンと言ってみた。
するとすぐに冒険者タグに記号が現れる。
冒険者ランクF
ニール・ゼニガタ 男 十七歳
体力E、筋力E、耐久F、敏捷E、持久力E、魔力E、知能C
魔法適正 火E、無属性(発火、注水)
普通にニールで登録されている不思議。
「冒険者ランクはFからのスタートになります。今の状態でもEランク相当の力をお持ちですが、一定期間クエストの状況をみてランクアップの判断をさせていただきます」
「あっ、はい。わかりました」
「それではランクについてのご説明をさせていただきますね」
冒険者ランクはFからはじまりAまで。あと特殊ランクでSランク、SSランクがあるとのこと。ちなみにDランクあたりから一端の冒険者として認められるらしい。
魔物のランクと冒険者ランクは同じ強さとしてみており、ホーンラビットE一体を単独で倒すには冒険者ランクもEランクが必要とされるとのこと。
僕のランクはEランク相当の力を持ったFなので、ホーンラビットを単体でギリギリ倒せるかどうかというステータスらしい。
カルデローネさんが言うには、突然襲われて戦闘になった場合は仕方ありませんが、ゴブリンとか基本的に逃げてくださいとのこと。
それから、魔法について。
魔法属性は四大属性と呼ばれる火、水(氷)、風、土。それから特殊属性の光、闇。あと生活魔法と呼ばれる無属性。こちらも属性のランクに応じて扱える魔法が決まる。
無属性には基本的に発火、注水、光玉、清浄の四つがあり、人によって扱えるものとそうでないものがあるそうだ。
発火は焚火や料理に使える便利なもの。注水は手洗い、うがい、水筒替わりになる。光玉は暗い場所で浮かぶ光の玉。そして清浄は汚れている場所を綺麗な状態にしてくれる。お掃除や体をきれいにお風呂代わりにも使用されるらしい。
ちなみに僕は火属性Eに無属性(発火、注水)。残念ながら排水路掃除で役に立つ光玉や清浄は使えないことがわかった。
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