第70話インベントリLEVEL2
レベルが上がるとしたら、それは僕のレベルではなく、きっとインベントリのレベルだろう。
ギルドのランクアップを経験しているけど…こんな音楽が鳴り響いたことは今まで一度もないのだから。
「ひょっとして、大きなミスリル鉱石とれちゃいましたか?」
僕の反応が、カルメロさんにはとんでもないミスリル鉱石をゲットしたと思われてしまったっぽいな。
「あっ、いえ。今、確認してみますね」
土砂から砂利や岩を削除して、鉱石をタップする。
鉱石
→ミスリル鉱石(特大)
さっきまで出ていた(少量)とはあきらかに違うネーミングだけにこれは期待できそうだ。
っと、そこでインベントリの項目が少し変化していることに気づいてしまった。
今まで分別項目の限界が五つまでだったのが倍の十項目に増えている。つまり、インベントリの量が増えたと考えてよさそうだ。
どうしよう。お肉が更に倍も運べるようになったのか。これは大きい。とてつもなく大きいレベルアップだ。
「すっごいの、きましたか!」
「あっ、いえ。ちょっと待ってください」
カルメロさんの期待が大きいので、とりあえずミスリル鉱石を出してみよう。
ミスリル鉱石の特大、どんなものかと出してみたら本当に特大サイズだった。大きさをイメージするならばジャイアントトード一体分といったところか。
「これは……大きい。て、ですが……私が採掘したミスリル鉱石はこの倍はありましたけどね」
この倍の大きさを手掘りで採掘したとなるととんでもない作業になることだろう。さすがは伝説の鉱夫カルメロさんだ。
「いったん、しまいますね」
「ちょっ、ちょっと待ってください。このミスリル鉱石、純度が高すぎやしませんか」
「ああ、こちらインベントリの機能でミスリル鉱石のみを抽出していますので、純度は百パーセントですよ」
「ひゃ、ひゃく!? えっ、インゴット作業が要らない!? い、いや、待って、百パーセントでこのサイズ!」
「どうやら伝説の鉱夫を超えたみたいにゃ」
カルメロさんが膝をついてわかりやすくうなだれている。きっと、ミスリル鉱石最大採掘のステータスは彼にとって、とても大事なものなのだろう。
「僕の場合は採掘というよりずるみたいな感じなので、比べるものではないですよ。それに、僕だけじゃなく、アンナさんがいなければ無理ですしね」
「そ、そうですね。比べちゃいけない、比べちゃいけないですよね」
「結果は明白にゃ」
「うわぁーん!」
「それにしても、とんでもないスキルにゃ」
「す、すごいです」
キャットアイさんもアンナさんもとても驚いてくれている。なんだかうれしい。
この感じならきっとアダマンタイトもちゃんと採掘できるのではないだろうか。
インベントリがレベルアップしたことで採掘する量も倍に増えるので進む時間もかなり短縮できる。少しでも時間を削減できれば崩落などの危険も回避できる可能性は高くなるはずだ。
と、その前に、インベントリのレベルアップは拡張だけなのだろうか。他に追加機能とか増えてないよね?
「さっきから何を考えてるにゃ?」
「あっ、その、インベントリスキルがレベルアップしまして」
「レベルアップしたにゃ?」
「容量が増えたので、今までの倍のペースで掘り進められそうです」
「い、今までの、ば、倍ですと!?」
カルメロさんが倒れてしまった。少し衝撃が強過ぎたみたいだ。
「崩落や土砂崩れが起こっても、何とかなっちゃいそうにゃ。それで、他にも何かあったにゃ?」
「あっ、はい。メンテナンスという項目が増えてまして」
「メンテナンスにゃ?」
「はい。何でしょうね」
僕が悩んでいると、倒れたカルメロさんが持っていた壁を掘る道具であるツルハシを渡された。
「カルメロのツルハシをメンテナンスしてみるにゃ」
「ツルハシをメンテナンスですか」
うまくいけば装備をメンテナンスできるということ?
「やってみるにゃ」
「はい!」
ツルハシをインベントリに入れると、こう表示される。
●ツルハシ
→メンテナンス
これはツルハシがメンテナンスできるということなのだろう。メンテナンスの文字はオレンジ色になっている。この色はメンテナンス可能だよという意味のような気がする。
メンテナンスをタップすると、次は時間が表示された。
●ツルハシ
→メンテナンス(一時間)
メンテナンスを実施しますか?
→YES
→NO
「ツルハシをメンテナンスできるようです。メンテナンス時間は一時間。あっ、これから家に戻ってしばらくしたら完了っぽいですね」
「じゃあ、メンテナンスするにゃ」
「いいんですか?」
「別にたいしたツルハシでもないにゃ。ゴーにゃ」
「了解しました」
ボタンをタップすると、時間が進んでいった。この時間がゼロになったところでメンテナンス完了ということなのだろう。
「さて、そろそろ戻るにゃ。ニールのスキルがとんでもないということがわかったにゃ」
キャットアイさんは気を失ったカルメロさんを引きずるようにしてきた道を戻っていく。
「あ、あれは大丈夫なのかな?」
「ご主人様は丈夫なので問題ございません」
そ、そうでございますか。
まあ、今はそんなことよりもメンテナンスの方が気になっている。
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